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公爵家の処罰 

読んでいただきありがとうございます。お楽しみいただければ幸いです。

 ビクトリアとその取り巻きはその日のうちに姿を目にすることが無くなった。ギルバートに現場を見られて恥ずかしくなったのだろうとアメリーは思っていたが、取り巻き令嬢三人は二度と出る事の出来ない修道院へ、ビクトリアは隣国に嫁がされた。嫁ぎ先は好色で有名な王弟の二十番目の愛妾だった。


それぞれが秘密裏に処理されたのでだれも真実を知ることがなかった。

令嬢は縁談があれば学院の途中でも辞めることはよくあるので不思議に思う者はいなかった。



夏の長期休暇がやって来た。アナトリアには手紙でギルバートと婚約をすることになったと知らせてあったが、直接会って話をすることはなくなっていた。

手紙を出し一度お茶会に来てほしいとお願いをした。卒業後でなくては本当のことを打ち明けるのは難しいが、それとなく心配しないように伝えたいと思っていた。


学院で姿は見ていたが親しく話すのは久しぶりになる。アメリーは嬉しくてソワソワしていた。

アナトリアがやってきてくれた。

「久しぶりね会いたかったわ、ゆっくりお話がしたかったの」

「急に婚約をすると聞いて驚いたわ、しかも相手はあのノートン公爵令息よ。やっぱり足の怪我の時に親しくなったの?」

「そうなの、お話してみたら私みたいな者にも凄く気を使ってくださって休んでいる間のノートまで持ってきてくださったの」

「予想通り針の筵だったわね、それで婚約者になってくださったの?」

「そんなところよ、申し訳ないから解消していただこうと思っているけど」

「すごい空気になっているものね。嫌がらせも凄いわね」

「だからアナトリアには近づかないでおこうかなと思っていたの。ごめんなさい、傷つけたのではなくて?」

「わざと近づかないようにしてくれているんだろうとは思っていたわ、いつもギルバート様たちがおられるし、親戚のメグ様もいらっしゃるし私の出番はないとは思っていたけど、これからも友達でいてくれると嬉しいわ」

「ありがとう、私こそ友達のままでいてもらえると嬉しいわ。気がついたら一人ぼっちということもあるかもしれないし」

「ギルバート・ノートン様に限ってそんなことはないと思うわ。貴公子中の貴公子ですもの」



自分の言いだした事といえ、友人をここまで騙すつもりのなかったアメリーは深い罪悪感にかられた。



休み中に公爵家の別荘に招待された。山の中の別荘は小さなお城のようでびっくりしてしまった。お祖父様が愛するお祖母様のために建てられたのだとか。高位貴族って怖いと思ったアメリーである。どれだけお金があるのだろう。



参加するのはギルバートとビルとアメリーとメグの四人である。護衛と使用人はもちろんいるが気楽に過ごせるようにギルバートが企画してくれた。馬車で一日ほどのところなのだが空気が綺麗でひんやりしていた。

気を張った学院生活から離れられてアメリーはのんびり出来ていた。一週間滞在させて貰う予定だ。



案内された部屋は日当たりの良い客間だった。陽射しが強く当たらないように薄いクリーム色のカーテンが吊るされていた。木漏れ日がチラチラと差し込んでとても落ち着く部屋だった。メグが持ってきた衣装をクローゼットに吊るしてくれた。

動きやすいワンピースが殆どだ。下着は自分で入れた。


ここにいる間にどうやって婚約解消に持っていくか作戦を考えなくてはと思っていた。ギルバートの名誉が傷つかずに済む方法って何があるのだろう。こんなに良くしてもらっている彼にお返しできることなら何でもしなくてはと考えを巡らせ始めていた。



あんなに素敵な人だ、恋人がいないなんて不思議だった。その人と結ばれてくだされば解消ができる。思うようにならないお相手なのだろうか。自分はお飾りの妻の役をこのまましてもいい。そう考えた途端胸がチクッとした。

約束通り解消が一番だ、いい加減な事はできない。嘘を付くことになるのは何より嫌だった。



部屋の中でうじうじ考えているより散歩でもしてみよう。邸の庭だけでも歩くところはたくさんあると思う。クローゼットの中から帽子と日傘を取り出すと、沢山花の咲いている庭をゆっくり歩き始めた。



後ろから声がかかった。ギルバートだった。

「散歩かい?ここの庭は歩きがいがあるよ。花もいろいろな種類が植えてあるしね」

「ギルバート様、こんな素敵な別荘にご招待していただきありがとうございます。息がゆっくり出来る気がします」

「学院では話せないこともあるから。ここの警備は万全なんだけど、メグはどうしたの?いつも付いているように言ったのに」

「たまには一人になりたくて、自分のことをして貰うようにお願いしましたの。私の我儘なので叱らないでください」

「そうだよね、窮屈な感じがするかもしれないね」

「いえ、屋敷でも誰かが付いているのは当たり前なので構わないのですが、卒業してからの事を考えると一人に慣れておくのも大切かなと思ったりしましたの」

「貴族令嬢が一人で暮らしていけるものなの?」

「王宮官吏になれば寮が付いておりますし、最初のうちは自宅からという方もいらっしゃるようです。ところで解消の仕方ですが何かいい方法は思いつかれましたか?」

「このまま婚約を続けて白い結婚というのはどうかなと思っているんだけど」

言われた途端アメリーはずんと心が重くなったような気がした。

「どなたか身分的に結婚できない方と想い合っていらっしゃるとかでしょうか?それで私と白い結婚を?」

「そんな人はいないよ、円満に解消する方法が見つからないだけだから」

「でしたら、勤めるのはこの国の王宮でなくてもいいのです。隣国に行ってもいいですし。なるべくギルバート様に傷がつかない方法があればそれが一番ですから」

「どうして結婚が嫌なのかな?何か嫌な思い出でもあるの?」

「ただこんな平凡な私なんかにお相手が見つからなかっただけです。今は恋愛結婚が主流になっておりますから、どうしても残ってしまったというか」

「アメリーは平凡なんかじゃないと思うけど、そうだ僕に任せてよ、悪いようにはしないよ」


ギルバートには不思議と自信があるようだった。

誤字報告ありがとうございます。感謝しています。

良い解消法を思いついたらしいギルバート、どんな方法なのでしょうか。次回をお楽しみにしてください。

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