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通じた想い

読んでいただきありがとうございます。ハッピーエンドまであと少しです。

 アメリーのリハビリは順調だった。ギルバートが都合の悪いときは女性騎士が付き添うことになっていたが、公爵夫人の用事で都合がつかなかった。アメリーは今日は遠慮すると言ったのだがビルが自分が手伝うと申し出た。


もう抱き上げなくても良くなっていたがいつ倒れても支えることが出来ないといけないのだ。手を取りながらゆっくり歩かなくてはいけない。広い場所がいいのでダンスフロアのある部屋で訓練が行われていた。


ビルはアメリーのいる部屋からエスコートをしてゆっくり歩いた。

「お医者様にお聞きしました。傷は残らなかったそうで良かったです」

「先生は腕が良いのできれいに治してくださいました。これでギルバート様に罪悪感が無くなるかと思うと嬉しいです」

「アメリー様は人の事を思いやれる優しい方ですね」

「自分の為に変なお願いをした私に罰が当たったのかなと思っているんです。優しくなんてありません」

「ほんのささやかなお願いだったのではないでしょうか。相手がギルバート様でなかったらここまでされることはなかった。そう考えたほうが楽になりますよ」

「ありがとうございます、少し気が楽になりました」



手を添えて貰ったり離したりして貰いながら百メートル歩けるようになった。自信が出てきたアメリーは一人で歩きたいとビルに言ってみた。

「やってみてください、見てますから」

アメリーはビルの手を離してソロリソロリと歩いて行った。ビルが百メートル先に先回りして待っていてくれるので安心感が違う。



「歩けました。これから少しずつ自分で歩けるようになりたいです」





アメリーは少しずつ距離を伸ばし廊下で練習するようにした。片手を壁に付けていれば躓いたり転ぶこともない。体力も大分元に戻って来たと思う。


これなら出て行ける日も近いのではないだろうか。やはり隣国へ行こう、ギルバートが何処かの令嬢と幸せそうに笑い合っている姿を平気な顔で見ていられる自信がアメリーにはなくなっていた。



メグに頼んで隣国の官吏試験の要項を取り寄せて貰うことにした。隣国は暖かな気候で実力のある人材を広く受け付けているらしい。


語学に堪能なアメリーには受かる自信があった。受かって笑顔でお礼を言ってここから去っていかなくてはならないと固く決心していた。




アメリーのリハビリが順調だと聞いたギルバートは良かったと思う反面、治らずにここにいて欲しいと思う気持ちが湧き上がっている事に戸惑っていた。

自分の側にいればまた危ない目に合うかも知れない。自分はアメリーを愛しているのだろうか。結論が出せないまま時が過ぎて行った。




自分が都合の悪い時にビルがリハビリに付き合っているらしい。女性の護衛は母上の用事でその時は付いていられない為と聞いた。

早めに帰って様子を見ることにした。


急いで帰ってみれば随分楽しそうに訓練をしていた。焼け付くような胸の痛みは嫉妬なのかも知れない。ようやく自分の気持ちに気付いたギルバートだった。




あれからアメリーは廊下の壁を使ってリハビリを頑張っていた。大分歩けるようになり笑顔が増えた。

ゆっくりとしたマッサージも合わせて行っているので治りが良いようだ。



庭の散歩はギルバートのエスコートで歩けるようになっていた。




「この分だとポーションを作れるようになるかもしれません」

「それはいい事だけど無理は駄目だ」

「お礼を込めてたくさん作りたいのですが、駄目でしょうか」

「こうしてやっと外で散歩が出来るようになったんだよ。駄目に決まっている。お礼と言うなら私と散歩してくれるだけでいい」

「お礼になりません」

「外国語の勉強を再開していると聞いたがどうして?」

「隣国は暖かい気候で外国人の官吏登用も試験に受かればあるそうなのです。元気になれば行くのもいいかなと思っております」



「一緒にいると攻撃を受けるから僕が嫌?」

泣きそうな声でギルバートが言った。

「嫌ではないから離れようとしているのです。優しくて真面目で誠実な人柄だから、私は貴方を裏切りたくないのです。おかしな(仮の)婚約話を持ちかけてしまい、申し訳ありませんでした。色々ありましたがギルバート様との思い出は楽しいことばかりで一生の宝物と言っていいくらいです」

「アメリー君を愛しているんだ」

「約束を守らなくて良いのですか?」

「(仮の)婚約者は終わりにしよう。本物の婚約者になって欲しい」

「はい」

アメリーは自分の頬が濡れていることをギルバートの指が触れていることで気が付いた。



ギルバートはアメリーをそっと抱きしめた。

「ずっと愛していたのに気付くのが遅くなって君を逃がしてしまう所だった」

「私も愛していました。けれど約束を破ってはいけないと、この想いに蓋をしてきました。私で良いのですか?ギルバート様ならいくらでも綺麗な方が選び放題なのに」

「アメリーが良いんだ。君は綺麗だよ、自信を持って。僕が選んだ人なのだから」

「ギルバート様の隣に立てるよう自分を磨きます」

「公爵家の権力を使って社交をしなくてもいいようにしても良いんだけど」


怖い言葉が聞こえたような気がしたアメリーだったがあえて聞くのは辞めておいた。







誤字報告ありがとうございます。感謝しています。

やっと想いが通じました。やれやれなギルバートですね。

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