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スクールサバイバー  作者: 潮波 凪爽
第0章 プロローグ
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第五話 力の正体

「それは………どうしてですか?誰がどんな能力を持っているか共有したほうが、良い気がするんですけど。」

「私も、最初はそんな風に考えていたわ。でもね、天職と能力は自分の生殺与奪の権を握っていると言っても過言じゃないのよ」

「そんな大げさなぁ。だって………………いや、まさか…………そんな。いや、でも………」

「どうやら君も、やっとここがどんな場所なのかわかってきたようだね。」


 俺はどうやら先ほどの状況に遭遇してなお、まだ楽観的に物事を考えていたらしい。

 あんな化け物がいつ襲ってくるかわからないこのセカイで、"天職"と"能力"は、とても重要な手札となる。それゆえ、仲間に自分はどんなことができるのか共有するのはとても大事だ。

 しかし同時に、リスクも大きい。俺の予想が正しければ、その力を使わずにこのセカイを生き抜くのは難しい。また、……これはあまり考えたくのないことだが、その仲間が本当に背を預けられる人なのか、慎重にならなければならない。

 なぜなら、ここに「法律」はないのだから。


「さて、この注意の意味も察してくれたことだし、おまちかねの天職発表といきましょうか」

「待ってました!で、どうすれば分かるんですか!!!!????」

「ちょっ、分かったから落ち着いて!ちょっとテンションおかしいよ君。今日は早く休んでもらったほうがいいね…………。でね、天職と能力を知る方法なんだけど……」

「こうして左手の人差し指で空中に反時計回りに円を描いて、その真ん中を人差し指でたたく!!」

「……人差し指でたたく……………ってうぉわ!!なにこれ!?」


 こうして謎の動作をして現れたのは、一枚の薄い半透明のホログラムウィンドウだった。

 それはまさに”()()”。これまでに出会ってきたものの中で最もゲームチックで、興奮させるものに間違いなかった。やばい。


「そしたらそこのど真ん中に書いてあるのが、君の天職。」


 言われるがまま、俺はホログラムウィンドウをのぞき込む。そこに書いてあったのは…………


『名前:桐風楸哉

 天職:放浪者(ノマド)

 能力:どんな事象にも縛られない力


「われは真の自由を持つ者」』


「…………………はい?」

「ふふふ。どうやらその様子だと、珍しいものを引いたようね?」

「珍しいとうか……なんというか………かっこいいんですけど…………………」


 一体全体どういうことだ?

 名前はまぁいいとして、天職は……なんだこれ?放浪者?

 なんとなく各地をさまよう旅人みたいなイメージはあるけど、どんなことができるのかさっぱりわかんない。

 そして能力が曖昧すぎる。何、縛られないって?どう使えばいいんだ?

 しまいには、最後にわけのわからない文章が書いてある。いや、中二病ぽっくて俺はめちゃめちゃ好きだけどね?流石にいきなり出てきてもわからんよ?

 何か説明が欲しいと黒井先輩を見ると、先輩は横を向いて、右手を口にあて、顔を隠していた。

 が、明らかに肩が震えているのを隠せておらず、ときどき口から笑いを隠せない様子で、声が漏れていた。


「ちょ、先輩!何笑ってるんですか!教えてくださいよ!!!」

「ふふっ…………いや、ごめん。ちょっと…ふふっ、あまりにも…っはは!……君の表情が面白かったから………ふふっ。」

「…………………………はめましたね」

「まぁまぁまぁ、さっきずっこけさせられたお返しだと思って、ね?」


 そうして、黒井先輩が満足するまで隠し笑いをした後(かなりずっと笑ってた。先輩めぇ…)、補足説明をしてくれた。


 どうやら、この”天職(ジョブ)”とやらは人によってかなり変わるらしく、人の役割や職業といったものを形容する言葉になっているものから、おとぎ話に出てくるようなものまで多種多様らしい。

 それゆえ、前者であれば天職名から何ができるのかある程度推測はできるらしい。

 具体例は本人の秘密にかかわるので、あげることはできないのだが、先輩の説明を聞く感じではだいたいそういう特徴らしい。

 そして能力だが、ぱっと見で想像つくものから、初見じゃ全く予想できないものまで様々なのだそうだ。俺は後者のほうだろう。

 そして後者は能力の特性上、自分が実際どんなことできるのか実験してみないとわからないそうだ。能力の使い方に関する説明が何かあるわけでもないらしい。ひどいと、未だにどんな能力を使えるのかわからないまま、実験を続けている人も居るのだとか。だから、ここはおいおい判明するだろうという感じだ。

 最後に謎の文章だが、これについては本当にさっぱりなんだと。能力の文章と合わせて、何かしら意味や意図があるのではと考察している人も居るそうだが、進捗は芳しくないらしい。理由は、まぁ協力してくれる人が少ないからだろうと想像がつく。あとは、能力の実験に忙しくて気にしている余裕がないのだろう。

 と、これが今ホログラムウィンドウに書いてあることで、判明していることだそうだ。


「で、能力(アビリティ)が『縛られない力』か~…何だろう拘束系が効かない感じ?それだったら結構使いようがあるんじゃない?」

「どうでしょうね……………俺としては戦闘向けの能力が欲しかったですよ」

「さっき大はしゃぎしてたもんね~」

「言わないでくださいよ!……恥ずかしいじゃないですか」

「あははっ!まぁまぁそう落ち込まないでさ、戦闘系の能力じゃなくても戦うことはできるから。実際、私そういう能力じゃないし。」

「え?そうなんですか?」


 予想外の一言に、俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

 てっきり俺は黒井先輩は何か弓系の戦闘能力だと推測していたのだ。というのも、彼女が俺を助けてくれた時に見た光は矢っぽい形をしていたのだ。

 あ、でも待てよ。もしかしたらあの時助けてくれたのは別の人で、黒井先輩はたまたま通りかかっただけで………………ん?でもじゃあなんで急に走り出して………んん????


「あれ、なんか混乱させちゃった?」

「んー……………………黒井先輩」

「え?あ、はいなんでしょう?」

「先ほど注意を受けたばかりなんですがすみません。黒井先輩の天職と能力を教えてくだ…

 ……」

「いいよ」

「さぁいぃぃ…ぇええええ!?!?!?!?いいんですか!?!?!?!?」

「ははっ、君、最高」


 いやいやいやいやだってねぇ!

 あんな真剣に警告してた人がまさかそんなあっさり自分の手の内をばらすとは思わないじゃん!!

 おかげさまで何をあんなに考え込んでたのか忘れちゃったよ。えぇぇ……?


「いやぁ~面白い子が来てくれてお姉さん嬉しいな」

「俺をおもちゃみたいに言うのやめてください!」

「ごめんごめん。で、種明かしか」

「私の天職は『天使(ルシファー)』能力は『天からの威光を操る力』」

「………………これはまたユニークなのを引きましたね」

「でしょ?”天使”なんてご立派な名前をしてるけど実際はただ光を操れるだけ。光を生み出せるわけじゃないから暗闇だとなんにもできないし、羽が生えてるわけでもないから飛べないし」

「第一、天使なんて本物を見たことあるわけないんだから何ができるかなんてもうさっぱりよ」

「は、はぁ……なるほど………」

「というわけで、最初私は全く戦闘向けではなかったの」

「そ、それじゃあどうして戦えるように?」

「それはまた説明すると長くなっちゃうんだよねぇ…………とりあえず、本題に戻ろっか。だいぶ脱線しちゃったし」

「その前に一つ!確認してもいいですか?」

「どうした?」

「結局、俺を助けてくれたあの光の矢みたいなのは黒井先輩の能力ってことですか?」

「能力だけど、厳密には能力そのものではない。ただ、あれをやったのは私で間違いないよ」

「やっぱりそうだったんですね……助けていただきありがとうごさいます。その、遅くなりましたが」

「気にしないで。私はもう、誰かが死ぬところを見たくないんだ」


 そう、寂しげな言葉を返した黒井先輩は改めて本題へと話を戻すのだった。



 ◇◆◇◆◇



 さて、いったいどこまで話しただろうか。

 あぁそうだ、確か黒井先輩とその親友の方が、血痕だけを残して消えた二人のクラスメイトが残した手がかりから天職と能力という重要な力を知った。というところまでだっただろうか。


「それで私たちはすぐに自分たちの天職を確認した。まぁすぐに役に立ったわけじゃないけどね」

「そんなこんなで私たちのサバイバル生活が始まったの」


  どうやら最初はかなり苦労したらしい。まず衣食住を確保しなければならない。しかし、食も住も見当がつかず最初の広場は安全かどうか不明。高校生がゆえ大したサバイバル技術も持っておらず、右往左往しかできない。不安でたまらなかったことだろう。

 しかし、転機は訪れる。

 それは、遭難してから三日ほどたったころだろうか。二人で解決策を模索して森を探索していた時、ついに野生動物の群れを発見したそうだ。

 それは豚によく似たサイの角を生やした見たこともない生き物だった。また、その生物は果実を主食としているように見え、周囲一帯はその果実を実らせた林だったのだと。

  やっとのことで見つけた食料源に喜びながら広場に戻ってくるとなんと、そこには同じ東海学院の制服を着た生徒が六人も居たのだ。

  お互い事情を話し合った結果、どうやら彼らもこのセカイに迷い込んだらしく、俺たちがここに来る時に開けた教室のドアからこの広場へと来たらしい。

  先輩たちはすぐに彼らに天職と能力というものがあることを教えた。

 彼らは最初疑わしそうにしていたが、実際に自分のものを目にしてしまえば説得する必要もないだろう。

 そして更に幸運なことが起こる。

 なんとその六人の中に料理関連の天職持ちがいたのだ。能力もそういった力であるといったニュアンスだったので、黒井先輩たちはもう大感激極まれりといった感じだったそうだ。(それはそれは小躍りなんてレベルじゃなかったらしい。気持ちはよくわかる)

 こうして黒井先輩を含め総勢八名による拠点制作が始まった。


「今でもあの時彼らと鉢合わせてなかったらって思うと、ゾッとするよ」

「ほんとに……すごいと思います。黒井先輩を含めた八名の人たちを俺は素直に尊敬します……………

俺はそんなたいそうなことできません」

「いや、そうするしかなかったんだよ。絶望したって状況は何にも変わらないからね」

「黒井さんの言うとりだよ。そうするしか僕たちが生き残る術はなかった」


 とてもさわやかな声だった。

 夏疾風のような、芯がありながらも軽やかさを持ち合わせた、思慮に満ちた声

 俺はこの声の持ち主を知っている。

 この不気味で先の見えないセカイで真っ先に探していた人。

 そう彼は俺の高校での親友


「無事でなによりだよ。楸哉」

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