新学期の朝(1)
夢を見ていた。
そこは、雨の降り止んだ世界。
遮られるもののない太陽の光は、地上の全てを照らしている。
まるで、雨を知らない世界のように。
視界はいつも以上に開けているのに、いつも以上に、息が苦しい。
自動車も電車も、全てが止まっている。
鉛のように重い足で、真っすぐと続く道を、ただ無心で進んでいく。
すすり泣く声がする。
あちらこちらで聞こえているのに、その姿を誰一人として見ることが出来ない。
雨は全てを攫っていってしまったのだろうか。
これは、遠い、遠い、昔の記憶か、はたまた幻覚か。
見慣れているはずの町の風景でさえ、あまりにもぼんやりしている。
どこからかまた、声が聞こえる。
「雨を蘇らせなければ――……」
「また多くの人が、命を落とすことになる――……」
雨を蘇らせる……? 命を落とす……?
ぼんやりとした感覚の中、手のひらに確かな温もりを感じる。
このまま、雨の降る世界を生きていく。雨とともに、生きていく。
そう信じて疑わなかった。
手のひらの温もりが、次第に熱を帯びていく。
手のひらと熱が、次第に一つになっていく。
心が、繋がっていく――
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