死ぬ?
俺はGPSを確認しながら歩いていた。するとGPSの発信元が止まる。止まった場所はスラム街の近くだった。俺たちの国にはスラム街が何か所存在しており、周りには誰も近づかない。入れば最後、生きて帰ってくることが奇跡と言われるレベルで治安が悪いからだ。警察も諦めていて政府もスラム街への対策は取っていない。俺はタクシーを止めて近くまで送ってもらった。その間に晴斗にメールで集合場所を送る。そして俺がその場所に着いて数分後…
「お待たせました。美鈴さんを連れてきましたよ。」
「雪さん、私が必要って本当ですか?」
この女性は紅美鈴。中国武術の使い手でかなり強い。妖夢様と妖忌様の間ぐらいだ。そのため門番としてスカーレット家に雇われている。門番は日ごとに交代するので今日は美鈴は休みだ。
「ああ、今回の事件、犯人グループの人数が多そうでな。しかもほぼ確実に裏に何かが関与している。」
「わかりました。ついて行きます。」
「ありがとう。晴斗は近くで待っていてくれ。終わったら連絡する。それまでは絶対に連絡してくるな。」
「わかりました。ご武運を」
そして俺たちは晴斗に見送られて犯人グループの拠点と思われる廃墟に入っていく。
『いくつもの足音がする…女性はここにいるのか?…声が聞こえない…他の行方不明の子たちはいないのか?…』
「どうしますか?」
「全員一瞬でぶちのめす。今回のお嬢様からの命令は犯人を警察に突き出すことだ。犯人は全員殺さず捕らえる。」
「わかりました。じゃあ行きますか。」
「ああ、ただ美鈴は人質になっていると思われる女性を先に助けろ。」
「はい。」
「じゃあ行くぞ…」
そして俺と美鈴はほぼ同時に中に入っていく。
「誰だ!てめぇ!」
敵が俺たちを視認する。その瞬間俺がみぞおちに拳をめり込ませる。敵はその場に気絶する。だがその敵の声により他の場所にいた奴らも集まってくる。
「美鈴!ここからは別行動だ!被害者を見つけ次第保護してくれ!」
「わかりました!久々に暴れてやりますよ!」
そして俺たちは次々と敵を倒していく。見える敵を全員ねじ伏せた時、違和感を覚えた。
『俺が見つけた奴らがいなかった…美鈴の方にいたのか?…そもそも被害者が一人もいないのが謎だ…俺が見た男たちの手口は鮮やかだった。確実に何回もしている奴らの動きだった。なのに被害者がいないなんてありえるのか?…」
俺がそんなことを考えていると、美鈴の声が聞こえてくる。
「雪さん!」
「どうした。」
「地下につながる階段を見つけました。」
「わかった。」
俺たちは地下につながる階段を下っていく。自分たちの足音が響き、道は先の見えない闇に覆われていた。すると奥から声が聞こえてくる。
「兄貴。いつも思うんですけど女子たちをあんなに集めてどうするんですか?しかも手を出しちゃダメなんて。」
「偉い奴らに売るんだよ。後数日後に裏社会で奴隷売買が行われる。その売り物を俺たちが集めてるんだよ。」
「あんな胡散臭い奴らのためにですか?」
「胡散臭いのは認めるがもらった睡眠薬は使って分かっただろ?かなり強力だ。ああいうのは敵に回さないに限る。」
「そうっすね。」
そんな会話が聞こえる。
『奴隷売買…つまり被害者はまだ生きている…声からして俺が見つけた奴の内の2人だ…なら被害者はこの奥か…』
「美鈴、音を立てずにやるぞ。右は俺がやる。」
「わかりました。」
俺たちは小声でそういう。そして男の声が少し近づいてきた瞬間、同時に忍び寄り一瞬で首を絞め気絶させる。男たちは声も上げずに眠った。
「被害者はこの奥の可能性が高い。だが守りも堅いはずだ。気を張っていくぞ。」
「了解です。」
俺たちはゆっくりと進んでいく。すると明るい部屋の前にたどり着いた。ドアに耳を当てる。
『足音がする…寝てる音もするな…しかもかなり人数がいる…ここに被害者の方々が集められていると考えてよさそうだな…』
俺は美鈴に合図を送る。そして同時にドアを蹴り飛ばす。
「なんだ!」
犯人グループのメンバーが状況をまだ把握できてない間に一瞬で懐に潜り込み殴り飛ばしていく。美鈴も次々と倒していっている。そして見当たる限りの敵を倒した後、
「犯人グループは全員倒しました!脱出しましょう!」
俺がそう言うと女性たちは声を上げる。美鈴と俺は被害者たちの縄を切っていく。そして全員の縄をほどき、気絶した犯人たちに縄を結んでいく。そして一番後ろに俺、一番前に美鈴の形で出ていく。俺が扉を閉めようとしたその時、銃声が鳴る。そして俺はすぐに後ろを向く。そこにはどこに隠れていたのか、犯人の1人が銃を構えて立っていた。俺は瞬時に部屋に戻り扉を閉め男を一瞬で蹴り飛ばす。だが油断しすぎていた。俺は蹴る時にもう一発胴体を撃ち抜かれてしまった。身体から血がだらだらと出ていた。俺はその場に倒れる。すぐには死なないがほぼ確実に死ぬ。ここはスラムの近く。病院はかなり遠い。頑張っても俺はつく時には出血死している可能性が高い。
「ここまでか…あっけない最期だったな。」
そして俺は目を瞑る。