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優しく笑えるんだ。

俺は、流星の手を握った。


「酷い言い方するね。」


そう言うと流星は、

「いつだって正しいんだよ」って言った。


「宇宙兄さんは、俺が月を育てるのも反対した。婆ちゃんや爺ちゃんに預けるか、施設に行かすべきだと言った。でも、俺はひかなかった。俺の手を握ってくる小さな手を離したくなかったから」


そう言って、また、泣いてる。


「あの日、宇宙兄さんが俺に手伝ってやれって言っただろ?」


「ああ、うん。」 


「あの人は、何でも知ってるんだよ。ちゃんと」


そう言って目を伏せた。


「宇宙兄さんは、頭がすごくいい。俺と違って愛をどれくらい自分がもっていて与えられるかまで計算してる。」


そう言うと流星は、俺の手を離した。


「宇宙兄さんは、俺に言った普通の人が80%愛をもってるとしたら俺達がもってるのは30%以下だって。その配分を間違えると結婚生活はうまくいかないし、これから流星は苦しむだけだからって。」


意味がわからなくはないのは、俺ももってる愛の量が少ないからだろうか?


「俺は、宇宙兄さんに教えられたようにやったよ。自分に10%、妻に8%、子供に10%、そう言われたから、頑張ってやってみた。でも、俺はどうやっても自分への愛情がないんだ。元々20%しかなかったのかもしれない。」


流星の目に涙が溜まっていく。


「どんどんと俺の体の愛は干上がっていった。常に喉が渇いて渇いてたまらなかった。妻の愛も彼女の愛も娘の愛も、何一つ俺を潤してはくれなかった。」


コーヒーを飲むカップに涙が落ちる。


「俺は、月にすがった。月は、覚えてないだろうが…。月の店に通いつめたよ。金で月を毎日買った。月の時間をもらった。」


俺は、驚いて流星を見る。


「月に会えば会うほど、俺自身が潤ってくるのを感じた。ああ、探してたのはこの愛なんだって思った。だけど、兄弟なわけで。月は、俺を受け入れてくれないのなんてわかりきっていた。だから、月を傷つける事ばかりした。」


流星の涙は、止まらない。


「月に会うと娘や妻に優しく笑えるんだ。人から見たら、幸せそうな夫婦だと家族だと思われるぐらい穏やかな笑顔を向けれるんだ。」


流星は、手をギュッと握った。


「5年前、真子さんに会って月が救われたのを知った。店も辞めて栞ちゃんの所で働き出したのも知った。月の為なら死ねる。兄ちゃんが顔を出して、月に会うのをやめた。」


流星の手が震えてる。


「どういう事だろうか?会うのをやめた途端にどんどん愛情が欠落して、砂漠のように干からびていく。飲み干しても、飲み干しても満たされない。ああ、化け物になったんだ。そう思った時、泰佑の妊娠を聞いた。」


流星は、(あふ)れる涙を止められず前だけをみていた。


「産まれてすぐに泰佑の名前を呼んだ。リュリュ、たいすきって頭の中を響く月の声が俺の砂漠に少し(あい)を与えてくれた。この子にあげる分を生み出してあげられる。そう感じた。」


俺は、流星の目から流れて手に落ちる涙を見ていた。


「大丈夫、まだやれる。そうやって言い聞かせていたのに。あの日、月が俺に会いに来た。」


頑張って自分で乗り越えようとしてたのに、邪魔をしたのは俺だったんだ。


「だから、あの日衝動を押さえられなかった。押さえる方法がわからなかった。ただ、月に愛されたかった。家に帰ると里美は何かに気づいた。俺を抱き締めて、全てを捧げた。受け入れるしか出来なくて、逃げることが許されないのは2つの重い鎖に繋がれてしまっているから」


「それって、子供なのか?」


流星は、ゆっくり頷いた。


流星、なんでそんな悲しい事を言うんだ。そう思ったけど…。


自分への愛がない流星には、重い鎖でしかないのだ。


それほど、流星は追い詰められているのだ。


俺は、気づくと流星を抱き締めていた。


「月、愛してる」


「流星、愛してる」


そう言うと流星は、俺の首筋にキスをした。



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