もう、あんたには俺はいらない
酷いことを言ったのは、自覚していたが、謝る事は出来なかった。
「里美に何か言われたのか?」病院の近くになって突然腕を引き寄せようとする。
「離せよ。あんたは院長だろ?こんなとこでやめろよ。」
「やめない。俺は、院長だけど。月の事を愛してる。言い訳なんてしたくなどない。」
「頭おかしいだろ?兄弟なんだから言い訳なんてしなくてもいいから…」
何度も、何度も俺を引き寄せようとする。
「月、何を言われたか言って欲しい。月、俺を嫌いにならないで欲しい。」
「だから、離せよ。嫌いも何も兄弟なんだから、そんな感情で繋がってないだろ」
俺は、流星兄さんの腕を振り払う。
なのに、また腕を掴まれる。
いい加減うんざりした。
苛々する。
「月、ちゃんと話してくれ」
「もう、彼氏待ってるから」
「それは、彼だろ?そんなんで私を突き放せはしないよ。」
そう言ってまた腕を引っ張る。
「月、兄弟であっても月に愛されてると思っているだけで、俺は家族に笑えるんだよ。」
その言葉に俺は、「汚らわしいんだよ。あんたに俺は、必要ないし、俺は、あんたに愛などあげるつもりもない」そう言った瞬間。流星兄さんが手を離した。
胸をえぐるような痛みが、体を走った。
流星の心を俺の言葉が貫いたのが、わかった。
俺は、星の元へ駆け出した。
振り返るつもりも、見るつもりもなかった。
だって、今、流星がどんなに悲しくて辛いかなんてわかるから…。
俺は、駅に向かいながら星に全てを打ち明けた。
星の手の温もりが、全身に広がっていくのを感じた。
「帰って、ワイン飲もうか?」
駅前のスーパーに寄って帰ろうと話した。
「うんうん。久々に星町のワイン買おうかな」
スーパーに入ると星はそう言ってワインを物色している。
「これ知ってる?僕と月が産まれた時に出来たワイン。」
「知らない。飲んでみたいな」
「じゃあ、これ飲もう」
そのラベルに引き寄せられた。
買い物を済ませタクシーに乗る。
「お総菜も買ったし、飲むぞ」
星は、楽しそうに笑った。
家について、タクシーから降りた。
「今日は、月の家ね」
そう言って星は、俺の家に入る。
お総菜を並べてる。
「ワインの話、聞きたい?」
「うん。教えてくれるの?」
「うん、ちょっと座って」
そう言われて、座った。
「月の周りを星が寄り添ってるようにちりばめられてるデザインは、月町と星町の月の星公園を表してるんだって。30年前に、月の星公園が誕生した時に記念で作られたのがこのワイン」
俺は、その言葉にラベルを触っていた。
まるで、流星と星と俺みたいな関係のラベルだ。
「名前はね、月守星だってさ。月を守ってる星、星を守ってる月。そう言う意味を込めたワイン。」
「へー。素敵なワインだな。」
「味もめちゃくちゃ美味しい。」
そう言って星は、ワインを開けている。
「僕は、よくこのワイン飲んでた。月を思い出しながら…。」
そう言ってグラスに注いでくれた。
「月のお兄さんも飲んでたんじゃないのかな?」
俺は、その言葉に顔をあげる。
「だって、月を守るのが星の役目でしょ?」
カチン、星が笑ってグラスを合わせた。
「チーズ食べてからだよ」
「うん。」チーズを食べてから、ワインを飲んだ。
「花みたいな香りがするでしょ?」
「確かに」
そう言いながら、星はチーズを食べる。
「月の香水の香りを嗅いだ時にどこかで感じた事あると思ったらこのワインだった。月の香水も本物の花の匂いがはいってるんじゃない?」
「わからないけど。このワインは、何で花の香りがするの?」
「それはね、ワインで月星花式場を表現してるらしいよ。」
「だから、花の香りがするのか」
「そうそう。おしゃれだよね」
「うん。そうだな」
「僕は、この町大好きだよ。月は?」
「俺も大好きだよ。」
そう言いながら二人で、ワインを飲んだ。
星といる事は、楽しい。




