もう、会うなって事?
2日後ー
僕は、月を起こした。
月を出発させた後、シャワーにはいって用意をした。
時雨が、氷雨の結婚式に目覚めるとか言う映画みたいなハッピーエンドを期待していた。
タクシーに乗り込んで、病院にきた。
時雨と氷河に会いに行く。
相変わらず二人とも寝ている。
いつ目が、覚めるかわからない二人を見ているのは辛くてたまらなかった。
それでも、毎日二人の体を擦った。
まるで反応のない肉体。
時雨が、僕の涙を拭ってくれたのはいつだった?
氷河が、僕にキスをしたのはいつだった?
キスで起きてくれるなら、いくらでもキスをするし、涙で目が覚めるならいくらでも泣く。
でも、現実なんてこんなものでおとぎ話のようにはいかない。
「時雨、ごめん。僕は、時雨だけじゃなく氷雨にも酷いことをしてしまったよ。氷雨の事を引き入れてしまった。こんな世界を知るべきじゃないのに…。氷雨の優しさに甘えてしまった。ごめんね、時雨。大切な弟に酷いことをして」
泣きながら僕は、時雨に話した。
「時雨の目が覚めないのは、僕のせい?」
そう言って泣いた。
僕は、立ち上がった。
氷河も、時雨もただ寝ていた。
必ず、目が覚める。
絶対に…。
そう言い聞かせて、病室をでた。
氷河のご両親にも氷雨君にも会う事はなかった。
トボトボと涙を拭って、病院のロビーにやってきた。
しばらく待っていたけど、月に電話しようかな?って外に出た。
扉を出て、電話をしようとしたら少し離れたところに月が見えた。
お兄さんが、腕を引っ張って月を引き寄せるけど月は、何度もそれを振りほどいて歩く。
それでも、お兄さんは月を自分のもとに引っ張るのをやめなくて月の顔が怒っているのがわかった。
月が、なにかを言った瞬間お兄さんは悲しそうに腕を離した。
入り口近くの僕を見つけた。
「星」そう言って走ってくる。
お兄さんが、項垂れてトボトボと歩く姿が見える。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫」
月は、お兄さんが来るのをわかっているのか僕の腕を掴んで反対側に歩き出した。
「いいの?」聞いた僕の言葉に頷く。
お兄さんは、病院に入っていった。最後まで、ジッーと見てしまった。
「駅まで歩こうか」
そう言って月は、手を繋いでくれる。
「うん。」
二人で並んで歩く。
「二人は、まだ目が覚めてない?」
「うん。おとぎ話みたいには、いかないよね。現実なんてこんなもの」
「そうだな。そんな簡単に意識が戻る事なんてないよな。」
少しだけ赤くなってる頬に気づいた。
「殴られたの?」
「ああ、兄さんの嫁に」
「なんで?」
「俺も、バレてたわ。」
そう言って月は、頬を撫でる。
「何か言われたの?」
「最初あの人が、言ってる意味がわからなくて。叩かれた痛みで頭にやっと入ってきたって感じだった。」
「何て言われたの?」
「ずっと、女がいると思ってた。5年前にその匂いががなくなったのに、また最近その匂いがした。女ならよかったのに、汚らわしい人。私は、これから先も、あなたを許さないし主人を渡すつもりもない。これから先、愛されるのは私であって、あなたは主人からの愛をもらえはしない。だってさ。」
「そんな…。もう、会うなって事?兄弟としても」
僕は、月の手を握りしめながら言った。
「直接は、そうは言わなかったよ。でも、愛をもらえないって事はそうだと思う。ご飯を食べてる間も拷問受けて、その言葉言われた後は、もっと拷問受けた。子供に優しい笑顔を向ける兄さん、奥さんに優しい笑顔を向ける兄さん。心臓をピンポイントで突き刺してきてた。ああ、俺は兄さんをこんな風に笑わせられないって思ったよ。」
そう言って月が泣いた。
「大丈夫だよ。」
僕は、月の手を擦った。
「いつだって、僕がいるから」
月は、頷く。
「僕だけは、月の味方だから」
月は、また頷いた。
僕に月の痛みがうつったみたいに心がジンジン痛かった。




