二種類の愛
頭と心と口が、連動しない化け物に自分がなっているのを感じる。
このままだと、星を殺ってしまう気がする。
それでも星は、壊れたラジオみたいに愛してるって繰り返す。
歪んだ愛と真っ直ぐな愛が、押し寄せてきて苦しくて堪らない。
どうにも出来ない自分に苛立ちを覚える。
かろうじて言えたのは、星を愛したい事だった。
奥底に眠ってる愛が、邪魔をされて動けないのを感じる。
弾け飛べば楽になれるのに、きっちりと蓋をされていて開け方がわからない。
俺の愛を注がれない肉体はいらないと言う。
なんで、そんな風に言いきれるのだろうか?
そんなに力強い目に見つめられたら愛してしまいたくなる。
優しくしたい、大切にしたい。
傷つけたくはないんだよ。
だから、どうにかしなくちゃいけないのに難しく感じた。
星が、頬にキスをしてくれたトクって音がして何かが動いた気がした。
星が泣いてる。
幸せで泣いていると言う。
この気持ちを感じて欲しいという。
感じたい…。
手の震えは、少しだけ止まっていた。
涙を拭ってあげる。
ドクン、やっぱり奥底で何かが湧き出るのを待っている。
もっと、触れたら溢れてくるのか?
でも、怖くて先に進めない。
星が、俺の手を握る。
ドクン、ドクン…重い蓋が少しだけ開いた気がした。
「ゆっくりでいいから、一緒になろう」泣き顔で精一杯笑ってる。
「うん。」
俺は、受け止めるよ。
星の愛を受け止めるよ。
「3日後、僕は辛い気持ちで帰ってくると思うんだ。月、抱き締めてくれる?」
やっとまともに会話が、出来る気がしたのか星が話し出した。
「さっきの人にまた会うの?」
そう言ったら、星は頷いた。
「ビール飲む?」
「うん。」
俺は、ビールを取って星に渡す。
なんか、落ち着いた。
まともに会話できる。
「月星花式場って知ってる?」
流星の家に飾ってあった写真に載ってた所だ。
「結婚式場か」
「うん。」
「出席するのか?」
「時雨のかわりにでる約束をしたよ。」
「辛いな。」
「うん。」
そう言って俺は、ビールを飲む。
「俺も、5日後。流星兄さんの家族に会うんだ。」
「なんで?」
「ボッーとしてたから、帰りの車で返事してた。」
「弟として?」
「うん。」
「辛いね。」
そう言って星もビールを飲む。
「これから先、誰と一緒になっても忘れられないと思う。」
「アハハ、またハモったな」
「うん。」
「息ピッタリだな、俺達」
「うん。」
星の髪は、少しだけ伸びたな?
もうすぐ肩につきそう。
「さっきの、持ってくの?」
「うん。余計な小細工するのはやめて渡すよ。手術受けた時の紙も」
「いつ渡すの?」
「一週間後かな。」
「二回も辛い事があるの?」
「そうだな。また、さっきみたいになるよな」
そう言ってビールを飲んだ。
「だったら、僕が傍にいるから」
ドキン、ドキン、ああ俺は、ちゃんと星を愛してるんだ。
「俺もいるから」
まだ、ちゃんと辿り着けないけど
しっかりと手繰り寄せたい。
そうじゃないと、もう二度と俺は、戻れないのを感じてる。
「近くで、待ってようか?」
「いいの?」
「うん。朝からなら昼過ぎには終わるだろう?」
「そうだね。待っててくれたら嬉しい」
「星が望むならそうするよ。」
俺は、笑った。
「二人の目が覚めないの。」
「流星兄さんから聞いてる。時雨さんは、目覚めてもおかしくないみたいだけど…」
「氷河は、10ヵ所以上刺されてるから生きてるのも奇跡だって」
「目が覚めたらいいのにな。」
「うん。二人には、ちゃんと謝りたい。幸せになって欲しいと思ってる。」
「大丈夫、その願いは絶対叶うから」
そう言って、俺は星の頭を撫でた。
ドキドキする。
みんなに幸せになって欲しい。
そう思った日を思い出せた。
大丈夫だ、ちゃんと心に全部あるから
見つけられないだけだから…




