酔ってるのかな?
星に触れたい。
触れたくて、触れたくて堪らない。
それなりに女を作ったし
たくさんの女を抱いた。
俺の手じゃ、汚いよな。
でも、触れたい。
抱き締めていいか聞いたけど、冗談って誤魔化した。
なんか、こんな気持ち初めてで…
どうしたらいいかわからない。
女とか、男とかじゃない。
誰にも感じた事のない気持ち。
触れてたい。
抱き締めたい。
触りたい。
キスなんて誰でも出来て、させるのかよ。
なんだよ。
じゃあ、俺にだって出来るだろ
何思ってんだ、俺。
イライラしてる。
「ゆで卵だけ、誉めてくれた」
「えっ?」
「母親が、ゆで卵だけは誉めてくれた」
「うまいよ、これ」
そう言って、俺は笑った。
「僕も殴られてたよ。」
「そうなのか」
「うん。それが愛情だと信じてたから」
「だから、こんな事するやつ好きになるのか?」
俺は、星の頬っぺたに手を当てて優しく撫でる。
涙が、流れてきた。
「あっ、ごめん。気持ち悪いよな。」
手を離そうとしたけど、掴まれてる。
「嫌じゃないのか?」
うんって、潤んだ瞳で頷く。
綺麗で、綺麗で、綺麗で
もっと、触れたくて
もっと、触れたくて
吸い込まれる。
俺は、顔を近づけてく…
ダメだ。
ダメだ。
嫌、近づきたい。
「つめたっ。ごめん。」
俺は、布巾で拭いた。
神様が、ダメだって言ってる。
ビールが、服にもこぼれた。
一生懸命、拭いた。
星も、拭くのを手伝ってくれた。
「焼酎飲む?」
「うん。」
「じゃあ、用意するわ。ありがとう」
俺は、流しに布巾を置いた。
マジ、いってたわ。
気づいたら、あの瞳に吸い込まれてた。
ドキドキ…ドキドキ…。
胸の音が凄くて、バレないか心配だ。
ヤバいな。
俺、やっぱり男が好きなのかな?
グラスに氷を入れた。
焼酎をストレートでいれる。
「はい。」
「ありがとう」
「ミネラルウォーターな。」
そう言うと受け取ってくれた。
指先が、触れた。
ドキンって胸が波打つ。
苦しくて、ヤバいな。
「隣に座る?」誘ってんのか?
「いや、また触れたらダメだから」
「いいよ。隣に座って」
そう言って潤んだ瞳を向けてくる。
ヤバい、隣に座ってしまった。
「ゆで卵、うまいな。」
俺は、ゆで卵を剥いて口にいれる。
「ありがとう」笑ってくれた。
「見せて、腫れひいてるか」
「あっ、うん。」
「明日も、腫れてるな。」
「うん。」
そう言って目を伏せる。
「よくあるのか、こういうの」
「うん。」
「これは、愛されてるわけじゃないよ。わかってる?」
「うん。」
「こんな人、見つけるのやめなよ。」
「うん」
また、泣かせてしまった。
「ごめん。」
「ううん。」
俺は、また星に触れてしまう。
「泣いてるのに綺麗なんて、思ったらいけないよな。」
口に出してしまった。
「皆、泣いてる顔が好きだって」
そう言って口を押さえた。
皆って誰?
「そんなやつは、星を愛してないよ。泣かせて楽しんでるんだろ?」
星は、ビックリして顔をあげる。
「ごめん。大きい声出して」
首を横に振る。
「こっちこそ、変な事言ってごめん。」
「ううん。」
「でも、泣いてる顔が綺麗なのはよく言われたから」
そう言って潤んだ瞳で、俺を見る。
俺は、頭をくしゃくしゃって撫でた。
ダメだ。
この瞳を見てたら、我慢できなくなる。
いろんな事が、我慢できなくなる。
それぐらい、星の涙を溜めてる顔は綺麗だ。