笑えてますか?
時雨と氷河に会ったけれど、二人とも意識は、戻っていなかった。
看護婦さんは、時雨はそろそろ意識が戻ってもおかしくはないと言っていた。
何があったのだろうか?
あの日、二人に何が…。
氷雨は、もう手をずっと握りしめていた。
「一緒にいた女の人は、どうなったの?」
「あの人は、わからない。僕や氷河さんの所とは、関わりたくないって警察に話していたようで。兄さんが、目覚めないと何もわからない」
「そうなんだね。」氷河の母親が、30ヵ所刺されたって言ってた。
何が、あったのだろうか?
明日香に会いに行くべきなのだろうか?
「このまま、星の家に行く?」
「あっ、布団買いたい。」
「いいよ。」
そう言って氷雨は、笑った。
駅前のお店に入った。
「これかな?こっちが寝やすいかな?持って帰るからシングルかな?」
楽しそうにしてる氷雨を見てる。
「星が、欲しい」
ドクン胸の奥から何かが溢れてきた。
愛っていくつあるの?
わからなくなった。
「星、聞いてる」
「あっ、うん。」
氷雨の声が、遠く感じた。
「これがいいね。」
その声に我に返った。
ボッーとしてた。
「うん、よさそう。これにしよう」
「僕が持つから」そう言って氷雨はお会計をしにいく。
「毎日、一緒に寝たら、寝不足。」
「医者って、めんどくさいね」
その声に胸が鷲掴みにされた。
やっぱり、月だ。
お兄さんに腕を組まれて歩いてる。
何で、いるの?
病院から、近いからいるんだ。
聞きたくなくても、会話を聞いてしまう。
「どれでも好きなの選びな。俺は、あっちで本見てくるから」
「流星、優しくないな。ちょっとだけ、見てよ」
「仕方ないな」
会っちゃった……。
後退りしたくなる。
「あっ、時雨さんともう一人の人、大丈夫?」
月のお兄さんが、月から腕を離した。
「まだ、目が覚めてないよ。」
「そっか。なんか、力になれなくてごめんな。」
「買ったよ。かえ」氷雨が、月を見て止まった。
「月、俺。本見てくるから」
「待って、流星。俺も行く。じゃあ」
「じゃあ」笑えてますか?氷雨
「そんな顔しないで。」
氷雨は、僕を抱き締めた。
「ごめんね。帰ろ」
僕は、氷雨から離れた。
隣にいたかった。
腕を絡ませたかった。
「星、あの人が…」
氷雨は、言いづらそうに僕に聞いた。
「お隣さん、行こう。」
そう言って氷雨の手を握った。
氷雨は、楽しい話をたくさんしてくれた。
タクシーに乗って、僕の家に向かった。
どの愛も欲しがるから、こんな事になるんだ。
タクシーを降りて、僕の家にいれた。
「わぁ、すごいね。」キラキラと輝く氷雨の顔が愛しかった。
「おかえり。氷雨」
玄関で氷雨を抱き締めた。
「ただいま。」
氷雨と一緒に家に入る。
「明日、お揃いのお茶碗買いに行こう。」
「いる?」
「いるよ。」
「わかった。」
氷雨の明るさに救われる。
「今まで色々大変な人生だった?」
「それなりに大変だったんじゃないかな」
「聞かせてよ、星の話。」
「長すぎるよ!」
「大丈夫、時間はたくさんあるから」
そう言って氷雨は、笑う。
「コーヒーとお酒どっちにする?」
「お酒がいいかな。」
「ワインあるよ。飲む」
立ち上がろうとした僕の腕を掴んだ。
「るいって言ってた。さっきの人」
「あっ、うん。」
「星の好きな人だよね?」
「えっと…違うよ、お隣の人」
「お隣の人なのに、泣くの?」
「えっ…」
確信をつかれて涙が、溢れてきた。
「愛してる」
「なんで、付き合わないの?」
「付き合えない、今は彼への愛が遠すぎて見えない。ごめんね。最低だよね。愛って何個あるのかな?氷雨も愛してる。時雨も愛してる。彼も愛してる。もう、頭が心がグチャグチャでわからない。」
氷雨は、僕を抱き締めてきた。
「何個でもあっていいんじゃない?僕だって、婚約者がいるのにこんな事してる。星が、最低だって思うなら僕だって最低だよ。」
「氷雨」
「今日は、飲もう付き合ってあげるから」
氷雨にそう言われて、ワインと冷蔵庫にある食べ物をもってきた。
氷雨とお酒を飲む。
すぐに酔いがまわる。
優しい笑顔が、月に重なる。
チュッ…頬にキスをしてた。




