氷雨を全力で
氷雨に愛してると何度も言われた。
僕と氷雨は、今ベッドに寝転がっている。
「しばらく、一緒に住まない?」僕の言葉に氷雨は驚いた顔をしてる。
「嘘、嘘」月が、兄と住むと言ったからやきもちをやいて、この純粋な氷雨を利用しようとする自分に反吐がでる。
氷雨は、僕に抱きつく。
「いいの?ちゃんと母さんに了承をえるよ。」
キラキラの笑顔をむける。自分がどれだけ汚れた存在か思い知る。
「時雨が、目を覚ますまでだから」
「わかってるよ。」嬉しそうにベッドから起き上がる。
今にもスキップしそうだ。
「フフフン、ラララ」よくわからない歌を口ずさんでいる。
「はい、お水」
チュッ頬にキスをされた。
「ありがとう」
僕は、氷雨にもらった水を飲んだ。
氷雨は、煙草に火をつけてる。
「今日は、ちゃんと帰るから」そう言って笑った。
「うん」僕も氷雨の隣に座った。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。」
「氷雨が大切だから、反対されない?殴られない?」
「殴られた事はないし、僕の我儘は聞いてくれるよ。」そう言って氷雨は、煙草を消した。
「そろそろ帰ろうか?」
「うん。」
氷雨と一緒に帰る、さりげなく手を繋がれた。
ドキン心臓が、波打つ。
このままずっと、氷雨のものになりたいと望んでしまう。
それ程、氷雨の僕への愛は優しかった。
傷つけられたいと氷雨にだけは思わなかった。
時雨の病院の方に出た。
「駅でタクシー乗るでしょ?」
「うん。」
そう言って氷雨は、僕を駅まで連れてきた。
名残惜しいのか、氷雨は指を絡めて離さない。
ドキン、ドキンと氷雨の指の感触に胸がときめく。
「帰ろう」
氷雨に言っても聞いてくれない。
どれだけしてたかわからないけど、やっと手を離してくれた。
「じゃあね、星」
「あっ、連絡先」
そう言って僕は、氷雨に番号を伝えた。
「また、電話するね」
「うん、バイバイ」
そう言ってタクシーに乗り込んだ。
氷雨と離れたくなかったのは、僕も同じだった。
タクシーが、家についた。
僕は、タクシーを降りた。
トボトボと部屋にあがる。
どれだけ、愛してると言われたら月に辿り着けるのだろうか?
どれだけ、愛されたら月と繋がれるのだろうか?
あっ、間違った。
月の事を考えてたから、月の部屋を開けていた。
フワッて、月の匂いが漂ってきた。
玄関に座り込んで泣いてしまった。
痛いぐらいに月が好きなのに、繋がれないからと氷雨を利用する醜い自分。
かけたくても、かけられない。
ここに来たら、一番欲しいものが、月なのだとわかる。
ブーブー
スマホを見た。氷雨だった。
「もしもし」
「いいって」
「お母さん?」
「うん。」
「本当に?」
「うん。」
「よかった。」
僕の目から、涙が溢れてくる。
「星の所に行く用意するね。」
「うん。」
「明日、兄さんの病院に行ってから星の家に行くから」
「わかった。」
そう言って、電話を切った。
月の家で何話してんだろう。
いつか月は、戻ってくるのかな?
誰かに愛してるってたくさん言って、言われて、何回目の愛してるを僕にくれるのかな?
何回目でもいい。
僕だって、別の人にひかれてるんだ。
月の部屋をでた。
僕は、自分の家にはいる。
氷雨と暮らすのなら片付けよう。
窓を開ける。
布団は、新しいのを買うべきかな?
月の毛布を洗濯機に突っ込んだ。
今は、氷雨を全力で愛したい。
月の香水を箱にしまった。
このティッシュあの日のだ。
パパがくれたオルゴールの箱に、僕は宝物をいれてる。
月があの日くれたティシュがはいってた。
そこに、月の香水と家の鍵をいれた。
これなんだろう?小さなメモに(るい)って書いていた。
名前がわからなかったんだ。
るいってしか…。
本当によく出会えたよね。
運命って言葉以外で、僕と月を繋げる言葉はなかった。
最初から出会うようになっていたみたいに、どの選択をしても月に辿り着いていたと思う。




