僕の名前を呼んで
氷雨に腕をどんどん引っ張っられた。
「ここって」
氷雨は、気にしないでどんどん僕を連れていく。
ラブホテルの部屋に入った。
「氷雨、どうしたの?」
「どうしたじゃないよ。」
扉を閉めたのと同時に、僕の体を閉めた扉に押し当てた。
「怒ってるの?」
「当たり前だよ。」
そう言って僕の顔に近づいてくる。
「泣き顔で、外に行ったらダメだよ。」
氷雨は、僕をジッーと見る。
「なんで?」
「なんでって、当たり前だろ」
時雨と重なる。
「その泣き顔は、すぐに誰かを引き寄せる。」
やっぱり、氷雨は、時雨と似てるよ。兄弟なんだ。
僕の目から涙が、溢れてきた。
「星、その顔だよ。」
そう言って氷雨が僕の涙を優しく拭ってくれる。
「兄さんを思い出したの?」
氷雨は、悲しそうな顔で僕を見つめる。
「ごめんね。」僕は、頬にある氷雨の手を握った。
「今日だけで、いいから僕の名前を呼んでよ。」
「呼んでるよ。氷雨」
「そうじゃない」氷雨は、僕にキスをしてきた。
「とりあえず、あがりたいかな?」
「ごめん。」氷雨は、僕の腕を引っ張っていく。
ベッドに座らせた。
「氷雨」
「今だけでいいから、るいや兄さんを忘れて僕だけを見て」
「なんで、月を知ってるの?」
僕の唇を指でなぞる。
「あの日、その名を呼んだから」
氷雨が、悲しそうに目を伏せた。
ドキンと心臓が、波打った。
「氷雨、どうしたいの?」
「………名前を呼んで。」
「わかった。」そう言って氷雨の唇に唇を重ねた。
.
.
幸せそうに氷雨は、眠っていた。
嬉しかったのに、僕の中に激しい後悔が、襲ってきた。
氷雨は、来月結婚するんだよ。
覚えていない状態ならよかったのに…。
何してんの、僕。
時雨と氷河があんな状態になって、月に触れられなくて、僕はおかしくなってしまったのだ。
だから、受け入れてしまったのだ。
氷雨の事は、愛らしい猫だと思っていた。でも、今日の氷雨を見ると実はライオンだったのがわかった。
細くて頼りないと思っていた体は、しっかりと筋肉がついていた。
唇切れてたね。今頃思い出した。
僕は、ティッシュに水を含ませて、氷雨の口元の血をとってあげた。
「イッ」染みたのか氷雨は、痛そうな声をだした。
「ごめんね。」
氷雨の目が開いた。
「染みたよね。ごめんね。寝てたのに…」
氷雨は、柔らかく笑った。
「毎日こうなら、幸せなのに」
そう言って、僕の手を握る。
氷雨の手や声に、身体が喜ぶのを感じる。
「言わないでおこうと思っていたんだけど」
そう言って僕の唇を指でなぞる。
「星が、兄さんに殴られて泣いてる姿に恋をしたんだ。」
そう言って笑った。
「アレから、ずっと探していたよ。」
ドキンって胸が鳴った。
「僕は、星の玩具にでもなるから…。」
そう言ってさらに強く手を握る。
「また、こうして」
氷雨の頬に手を当てる。
氷雨は、嬉しそうに笑ってる。
「氷雨。」僕は、氷雨の名前を呼んだ。
ドキドキと胸の音が鳴る。
「もっと呼んで」そう言って僕の手にキスをする。
「氷雨。」
氷雨の名前を呼ぶだけで、体の中に暖かいものが広がっていく。
「星、愛してるよ」
その言葉に驚いて氷雨を見ていた。
僕の目を見つめながら氷雨は、もう一度言った。
「星、愛してるよ」
ダメなのに、その言葉に胸がトクンって高鳴った。
そんな可愛いい顔して言わないで欲しい。
僕は、氷雨の唇を指でなぞっていた。
氷雨は、その指を口に含んだ。
「ダメだよ。」
可愛いくて、堪らない。
心臓が、ドキドキする。
やっぱり、僕はダメな人間だ。
氷雨は、僕の腕を掴んで引き寄せた。
「危ない…」
そう言った唇を塞がれた。
優しいキス。
ダメなのに、氷雨といたい。
氷雨の純粋な思いに僕の心がかき乱されている。
「星、愛してる。」
また、氷雨は言った。
僕は、氷雨の声に頷いてしまった。




