友達になろう
俺は、矢吹さんに触れたい気持ちを抑えるのに必死だ。
世の中に、こんな綺麗な男がいるって知ってたか?
出会わせてくれた、神様に感謝だよ。
「あのさ、隣人じゃなくて俺の友達になってくれない?」
矢吹さんは、驚いて俺を見た。
「あ、嫌ならいいんだよ。無理にとは言わない」
「いいよ。僕も橘さんと仲良くなりたかったから」
「橘さんは、やめない?月でいいから」
「僕も星でいいから」
「よろしく。」
「よろしく。」握手をした。
心臓が、早い。
やべー。好きが漏れそうだわ。
えっ?俺、好きなのか?
星の事…。
横顔も綺麗。
食べてしまいたいな。
いや、キモいから俺。
手握ったままだった、離した。
手まで女の子みたいだ。
「今度、教えてよ。作り方」煮物さしていう。
「あぁ、いいよ。暇な時いつ?」
「僕は、家で仕事してるから…」
「リモートってやつ?」
「いや、向こうが来る感じのやつ」
「なんか、作家とかそんなの?」
聞きすぎたかな、星の目から涙が流れた。
「ごめん。」
無意識に頬に手を当てて、涙をぬぐった。
やばっ、綺麗すぎて触れてしまった。
「あっ、ティッシュ」
俺は、ティシュを渡した。
チュッ…へっ?渡した手にキスをされた。
「えっと、何かの挨拶?」
「あっ、ごめん。何かその。たまたま、手があったから」
「あっ、えー。星は、たまたまあったらする感じなんだ。」
「えっと、」
「気にしないで、最初に触ったの俺だから…アハハ」
何か、今ヤキモチやいたわ。
俺だったからって言われたら、嬉しかったのに…。
たまたまって言われたら、誰でもいいのかって思ってしまった。
って、何考えてんだよ。
俺は、男なんか好きじゃないんだよ。
だけど、俺。
女の人を幸せにできるのかな?
出来ないよね。
欲しがってるもの、与えられないよね?
あの日、母さんと一緒に…。
自らの意思で望んだんだ。
「クズ」「生きてるだけでゴミ」
「何で、あんただけできないのよ。」
毎日、毎日、兄貴と両親に言われてたな。
思い出してどうすんだよ。
せっかく婆ちゃんが助けてくれたんだ。
「名前、かわってるね?」
「ああ、親父が天体観測が趣味で、兄貴は宇宙って書いてそら、その下の兄貴は、流星って母親がつけた。俺の名前は、婆ちゃんがつけた。産まれた時から見た目が気に入らないから名前もつけたくなかったってさ。だから、爺ちゃんと婆ちゃんが月の漢字つけた。皆と仲良く居て欲しいからって。読み方をるいにしたのは、父さんの亡くなった姉ちゃんがるかだったから守ってもらって欲しいって意味だってさ」
思い出して泣いてるわ。
星が、涙をぬぐってくれた。
俺は、その手を掴んでた。
「あっ、ごめん。なんか、掴んでた。」
そう言って、手を離した。
「こっちこそ、ごめん。」
星は、ティッシュを俺に渡してくれた。
「ありがとう。」
「じゃあ、僕と月は仲良くなれるね」
「なんで?」
「だって、星は、月の周りに沢山散らばっているじゃない」
そう言って笑った。
「漢字、星って書くの?」
「あっ、うん。」
「なんか、すごい嬉しい」
俺は、また星の手を握ってた。
「あっ、ごめん。ゆで卵食べるわ」
誤魔化した。
ヤバい、触れたい。
もっと、触りたい。
抱き締めてやりたい。
一緒に寝たい。
やらしい事なんてしなくていい。
ただ、ただ、触れたい。
ただ、ただ、傍にいたい