月の為なら、命なんていらないよ。
星影公園で、ずっと立っていた。
何時かもわからなかった。
気付けば、雨がふりだしていた。
冷たいな。
ブーブー スマホが鳴ってる。
「はい。」
「流星だ。」
「なに?」
「今どこ?」
「星影公園」
「出口で待っとけ」
「なんで?」
「迎えに行く」
そう言って、電話が切れた。
ずぶ濡れの身体とキャリーケースを引きずって、出口についた。
五分もしないうちに流星がきた。
「びしょ濡れじゃないか」
そう言って俺に傘をさす。
「流星」なんでか、流星の胸に頭を置いてた。
「車に乗れ、風呂に入らなきゃ」
流星は、軽く俺を抱き締めてから車に乗せた。
キャリーケースをトランクに乗せてる。
誰かを感じてないとおかしくなりそうだった。
流星は、マンションで車を止めた。
「降りろ」そう言って俺に車から降りるように言った。
フラフラしながら、降りた。
「しっかりしろよ。」流星は、俺を支えながら歩いてくれた。
病院の匂いがする。
シャツの胸元が、少しはだけてる。
流星の鎖骨に、傷があるのを知った。
「ついた。風呂いれてくるから」
そう言って流星は、俺を玄関に置いた。
風呂のスイッチを押してきたようで、俺にバスタオルを渡す。
「風邪ひくから、すぐ脱ぐ。」
びしょびしょの服を流星が脱がしていく。
「本当に月は、犬みたいだな」身体を優しく拭いてくれる。
懐かしいなぁー。この感じ。
「もう、そのまま風呂に行く」裸の俺を風呂に連れてきた。
懐かしい、暖かい。
暖かい湯船につかる。
流星は、俺を風呂にいれたらどこかに行った。
暖まって、風呂からでたら流星がいた。
「ごめん。」
「月のせいで、シャツ濡れたから着替えてる。」
そう言ってシャツを脱いだ流星の背中は、傷だらけだった。
「流星、これ」俺は、その傷を指でなぞる。
「背中は、人に見せなかったな」そう言いながら、シャツを着た。
「誰にも?」
「見せなくたって、生きてけるだろ」そう言って流星は、笑う。
「誰にされてた?」
流星は、無視してリビングに歩いてく。
「水飲め。」そう言って水を渡してきた。
俺は、水を飲んだ。
「誰にされてた?」
流星は、冷蔵庫からスティック状のサラダチキンを取り出して俺に渡す。
「飲もうか?たまには」
俺は、それを食う。
「誰にされてた?」俺は、何度も聞いた。
「はい、ビール。」
「流星、無視すんなよ。」
俺は、いい加減イライラして流星に言った。
「聞いたら、自分を責めんだろ?」流星は、ビールを飲んだ。
「俺のせいなのか?」
「もう、いいだろ。俺は、楽しく飲みたい」
俺は、流星の頬に手を当ててこっちを見せた。
「ちゃんと話せよ。もう、ガキじゃない」
そう言った俺の目をジッーと見つめてきた。
ドキンドキンって心臓が、高鳴る。
流星のこの目が、堪らなく愛しい。
「キスしたくなった。」くしゃって笑った。
「ならねーよ。」俺は、流星から手を離した。
「アハハ、月は、おもしろいね。」
そう言ってビールを飲む。
「鎖骨の傷は、なに?」
「ああ、これ。これは、里美。妻につけられた傷だ。」
「なんで、そんなのつけられるんだよ。」
「メスでつけられたんだよ。」
聞いてる事に答えないつもりのようだ。
「話したくないんだな。俺には」
「俺の心が、自分にないからだよ。この下に心臓があるからだってさ。ハハハ。女は怖いね」そう言って新しいビールを取りに行く。
心がない?
「流星は、俺が好きなの?」
ビールを渡してくれた。
「好きだよ。月の為なら死んだって構わないぐらい愛してるよ。」
(兄ちゃんが、守ってやる。)なんだこれ?
(どけ、流星。殺されたいか?)
流星の目に見つめられたら何かが頭を流れる。
「月の為なら、命なんていらないよ。」流星が頭を撫でる。
(やめろ、やめろ。月を離せ。俺を殺せー。殺せー。)
何この声、涙が溢れてくる。
溢れて、溢れて止められない。




