兄さんは、俺を…
兄さんは、満足そうな顔をしながら服を整えている。
何してるんだろう、俺。
俺も服を整えた。
「ちゃんと覚えてたんだな。月」
「えっ、あぁ、そうだね。」
思考が乗っ取られたみたいにボッーとする。
兄さんは、水を俺に渡した。
「これからもよろしく、月」
背筋がゾクッとする。
今まで見たことないような柔らかい笑顔を向けられた。
俺は、頷けなかった。
「あのさ、さっきの患者意識もどるのか?」
こんなんでも、名医らしい。
「ああ、拝藤時雨さんの方は二、三日で意識がもどるんじゃないかな?」
「もう一人は?」
「難しいんじゃないか?風間氷河さんは、かなりの数刺されていたからね。生きてるのが不思議なぐらいだよ。」
そう言って兄さんは、水を飲んだ。
俺も水を飲んだ。
「治せないの、流星でも」
「治してもらいたいの?さっきの男と一緒になるために。」
「違うよ。」
兄さんは、俺の隣に座る。
「月が望むならやれるだけの事は、やってあげるよ。」
「医者として当然だろ」
「医者でも、一人の人間だ。感情に左右される事はあるよ。望むのか?」
「当たり前だろ」
そう言った俺にキスをしてきた。
「意味わかんねーよ。」
「月からしてこなきゃいけなかったんだよ?お願いしたんだから」
そう言って頭を優しく撫でる。
「なんで、俺なの?」
「なにが?」
「奥さんいるわけだし、男がいいなら別のやつだって」
「ハハハ、俺が飢えてる獣にでも見えてるの?」
そう言って笑ってる。
「そりゃそうだろ。俺にこんな事して」
「俺は、飢えてないから妻も彼女もいる。だけど、ずっと足りなかった。喉が渇いて渇いて堪らない感覚、あれに似てる。」
俺の顎を掴む。
「この可愛い唇、俺を嫌う目、綺麗な顔。月と会うと身体の奥から波のように何かが押し寄せてくる。そして、全身が一気に潤う。」
そう言って笑う。
「意味がわからないよ。」
「俺だって初めてだったんだよ。月が10歳の時。自分だけだと思ってた?だから、忘れられないのかな?」
「しらねーよ。」
俺は、立ち上がる。フラッとした。
「まだ、座ってなきゃ」ソファーに座らされた。
「月、なんで俺を嫌うの?」
兄さんは、俺のおでこを撫でる。
「兄弟なんだよ。」
「兄弟じゃなかったら愛した?」
「しらねーよ。出会った頃から兄弟なんだから」
「確かに、そうだね。」
そう言って兄さんは、笑う。
「これからは、兄弟はなしだよ。」
「どういう意味だよ。」
「そういう意味だよ。はい、これ。」
「何?これ」
兄さんは、鍵を渡してきた。
「俺が、彼女と会うために借りてる部屋だ。場所は」
そう言って紙に書いて渡してきた。
「俺が来いと言ったらすぐ来るんだよ。」
「仕事あるから」
「夜はないだろ?もう辞めただろ?」
「なんでしってるの?」
俺は、兄さんを見る。
「忘れたのか?酔いすぎてたもんな。毎日」
そう言って耳元で俺に「……て」って言った。
その瞬間、俺の頭の中を一瞬何かが浮かんだ。
何だこれ?
覚えてない。
「驚いた?あの頃荒れまくってたよな。母さんが月にかけた呪いのせいで。あの子に出会うまで荒れてた。」
そう言って笑った。
「毎日荒れた月を慰めてくれたのは、誰だと思ってるの?日替わりで遊んでた女の子達だと思ってるの?」
(流星……て。)
はっ?何だこれ?
(流星、愛してるよ。)
何だこれ?
「まぁ、ゆっくり思い出しなよ。時間はあるんだから」そう言って兄さんは、俺の唇に唇を重ねた。
プルルって兄さんの電話が鳴って出ていってしまった。
俺は、家族の愛を欲しがった。
けど、歪んでても兄さんは俺を愛してくれてた。
母さんは、流星の愛が欲しくて俺をいじめていたのか?
わからないけど、身体がダルくて堪らないだけだ。
俺は、トボトボ歩いて部屋を出た。
俺は、星と幸せになりたいだけなのに…。




