やめてくれない?
兄さんは、話があると俺を連れていく。
「どこまで行くの?」
「いいから」
そう言ってどんどん歩くと院長室に来た。
「コーヒーでも飲むか?」
「いらないよ。」
「久しぶりだな、月」
「ああ」
兄さんは、俺をソファーに座らせた。
隣に座り、俺の頬のガーゼを外した。
「傷痕が残りそうだよ。」
そう言って、救急セットを持ってくる。
「いつもあるの?」
「ああ、用意してる。手や指を切る時があるから」
兄さんの手は、とても綺麗だ。
「もう血は止まってるけど、刃物でやられたな」
そう言って、手当てをしてくれた。
何か裏がある気がして怖い。
「ありがとう、これだけなら行くよ」
手当てしてくれたから、立ち上がろうとした俺をソファーに倒した。
「なに?」
「お礼は?教えてあげたお礼だよ」
「何の話?ありがとうって言ったよね」
「今まで、ありがとうですんでたか?」ニコニコ笑ってる。
「兄貴は、結婚して子供もいるだろ?幸せだろ?」
「兄貴はやめろ。流星だ。」
「りゅ、りゅ、流星は、幸せだろ?」
そう言う俺のシャツのボタンをはずしていく。
「女と遊びまくってただろう?月」
「なんで、俺に興味あるの?」
「なんでって変な質問だな。月の目が好きだからだよ。」
昔から、この人は怖い。
会わずに住むのなら会いたくなかった。
「5歳の月が俺に言った言葉覚えてる?」
俺は、首を横にふる。
「両親や宇宙兄さんに暴力を振るわれていて、こうやってした俺に流星兄ちゃんは優しいねって大好きだよって言ったんだよ。」
そう言って笑う。
「俺は、それから月を可愛がってあげたよね。皆の前では、罵ったけど二人になれば愛してあげた。」
そう言って唇を重ねてくる。
「10歳の時、好きな人が出来た月は、これは兄弟のする事じゃないと突然俺を突き放した。」
何度も唇を重ねる。
「だから、幼馴染みのあの子の前で月の全部をもらったんだよ。好きだっただろ?あの子」
兄貴は、笑ってる。
歪んだ愛を生み出したのは、俺だったのか?
「やめてくれない?もう、そんなのは兄弟でする事じゃないってわかってるから」
俺は、兄貴を無理やり起こした。
立ち上がって、歩き出す。
よかった、追いかけてこない。
……。
後ろから、抱き締められた。
「やめろよ。」
兄貴は、俺を壁に押し付けた。
「ひとが…」唇を強く押し付けた。
「兄貴」
「流星だ。」
「流星、やめろよ。」
「無理だ。俺は、最後にした日からお前が忘れられない。あの日も幸せだっただろう?再会したあの日だって、幸せだっただろう?」
ドクンって心臓が波打つ。
俺は、兄貴に床に押し倒された。
忘れてた。
「飲みすぎて、よく寝てたよな?」
最悪だ。
記憶の片隅にいたものが少しだけ甦る。
「まだ、残ってるね。両親や宇宙兄さんのつけた痕が、身体中に…そう言って指で痕をなぞる。
俺がつけたのは、これだな。」
「やめてくれよ。」
「やめない。どんな風にした?今までのやつに」
目に一杯涙が溜まってる。
俺は、首を横にふる。
「こんな風にされたか?」傷痕を舌で舐めた。
「やめて、間違ってるよ。」
「間違ってるなんて、最初からだろ?あの家族ごと、間違ってるんだから」
兄貴は、ニヤリと笑った。
そうだ。最初から間違ってるんだ。
頭の中に映像が流れた。これが、俺。
「思い出したか?あの日の事」
兄貴は、俺の唇に唇を重ねた。
嘘だ、嘘だ、嘘だ
「さっきの男、そっちだろ?」
「えっ!!」
「月は、男もいけるようになったんだな?俺のおかげかな?」
「あの日だけだろ、会ったの」
涙が溢れてきた。
「いや」
「嘘だよな?」
「いつも、ベロベロだったからな。誰としたかも覚えてないんじゃないか?」
そう言われて兄貴にされるがまま身を任せた。
頭は、拒絶してるのに
身体は、なぜか兄貴を受け入れる
「やっぱり、思い出した?」
幸せになるのなんて、許されないんだ。
「五年ぶりの再会だな。月」
そう言って傷痕に舌を這わせる。
5年ぶり…。
俺は、この人に7年は会ってないと思ってたし、10歳の時が最後だと思ってたよ。
「俺が、通ってやるよ。」何だこの記憶。
意味がわからない。




