やっぱり無理だった
しばらくして時雨が、帰ってきた。
「ごめん。」
そう言って座った。
「さっきの話だけど…。」そう言って時雨は、煙草に火をつける。
「少なくともあんたは、星を幸せにしてるよ。俺には、わかる。だから、誰も幸せに出来ないってのは嘘だよ。」
そう言って煙草を消した。
「だといいんだけどね。俺は、部屋に戻るから二人で話して」そう言って月は、出て行ってしまった。
「橘さん、壮絶だな。」
「僕もそう思ったよ。」
「だよな。俺は、まだ幸せな方かもな。」
時雨は、少し笑ってる。
「うん、そうだね。」
「あのさ、さっきはごめんな。あんな事して」
「ううん。」
時雨は、また煙草に火をつけた。
「星、ごめん。明日香に言ったけど、このまま辞めさすのは無理だったわ。」
「どうなるの?」
「最初の頃、覚えてる?」
「うん。300万以上稼いでた時のでしょ?」
「ああ、アレと同じ事やれって」
「えっ?」僕は、固まった。
「一週間でやめたいんだよな?」
「うん。」
「条件は、星が300万稼いだら辞めさせてくれるって」
「それって、僕に払うお金が300万って事?」
「そう、だからこっちは結構稼げるってわけ。」
「後、6日でいけるの?そんなに」
「今日みたいなヤバイ奴相手にしたらいける。」
「今日みたいなの…。マジで言ってるの。」
時雨は、僕の手を握った。
「ごめん。俺、星を守ってやれなかった。あいつと逃げろ」
僕は、首を横にふる。
「あいつなら、星を幸せにしてくれるから。逃げろ」
「いいよ。ちゃんとするよ。最後まで」
僕が、逃げたら時雨に迷惑がかかる。
「明日香が、一番ヤバイんだよ。だから、俺も氷河も星を守ってやれない。ごめん。」時雨は、僕に土下座してきた。
「いいよ。ちゃんと最後まで働くから」
僕は、時雨の顔をあげさせた。
「ごめん。俺、裏切ったら明日香に殺されるから」時雨が、カタカタ震えてる。
こんな時雨、初めて見た。
「ごめん。だから、助けられない。守ってあげれない」そう言って時雨が泣いてる。
わずかに残っていた良心を月が思い出させてくれた事と、僕への気持ちが、時雨に本当の気持ちを言わせてるのがわかる。
「ごめんな、星。」
「僕も、助けてあげれなくてごめん。時雨も氷河も助けてあげれなくてごめんね。」
「いや、いいよ。俺は、自分の事は自分で何とかするから」
「僕がいなくなったら、時雨がやらされるんじゃないの?」
「かもな」
「そんな」
僕の目に涙が溜まってく。
時雨は、僕の頬に手を当てる。
「あいつに話してからでいいからさ、最後に俺の我儘聞いてくれる?」
「なに?」
「最後に星と昔みたいにそうなりたい。最後は、星に優しくしてあげたい。ダメかな?」
「今は、まだわからないよ。」
「だよな。ごめん。我儘言って」
時雨は、悲しそうに目を伏せた。
「時雨は、何で、明日香と付き合ったの?」
時雨は、言いづらそうにする。
「星が、あいつに会った帰り道俺は、苛立ちが押さえられずにいた。気づくと月の山高校まで戻ってた。教室に行って、机に頭を乗せながらどうしようか考えてたら泣きながら明日香がやってきた。あんまり気にしないようにしてたら、教室の窓開けて飛ぼうとしたんだ。」
そう言って時雨は、煙草に火をつけた。
「ダメだよって明日香を助けたら、じゃあ拝藤君が付き合ってってじゃなきゃ死ぬって言われた。俺は、反射的に頷いた。それからは、別れ話が出る度に死ぬって言われた。10年前やっと別れてくれて星に告白した。」
煙草を消しては、また火をつけた。
「星が受け入れてくれたのが、バレた。死ぬって言われたのと、星を殺すって脅された。冗談だって笑ったら、氷河が足を刺された。」
僕は、驚いた顔をした。
「それからは、明日香の言いなりだ。星が、辞めたいって話した時に刺してごめん。辞められると俺か氷河が殺されるから…だから、辞めさせられなかった。」
そう言った時雨の目から涙が溢れ落ちる。
「優しくできなくて、ごめん。とりあえず今日は、帰るわ。」
「待って」
僕は、お風呂場のスマホを渡した。
「明日、また話そう。おやすみ」
そう言って時雨は帰っていった。




