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何で、いるの?

やべ、寝すぎたわ。


って、家間違ったのか?


いや、間違わねーよな。


「もしもし、矢吹さん。何でいますか?」


目を開けた。やっぱり、女みたい


トクン…。胸が鳴る



「ごめんなさい。鍵、開いてたので」


「開いてたら、入っちゃう感じ?」


「それは…あの」


「いいよ、いいよ。鍵閉めなかった俺が悪いから」


「ごめんなさい。」


「すぐ、謝んないでよ。ゆで卵うまかったよ。あっ、お返しいるよな」


「えっと」


そう言って俺は、冷蔵庫から煮物出してきた。


婆ちゃんっ子だった俺の得意料理。


「はい、どうぞ」


「いただきます。」


矢吹さんは、食ってくれた。


唇の端が切れてる。


殴られたのか、頬っぺたも腫れてる。


さっきあったっけ?


俺は、冷凍庫からアイスノン持ってきた。


矢吹さんの頬っぺたに当てた。


「ヒヤッてします。」


驚いて顔を上げた。


「痛いでしょ?それ」


「僕が悪いので」


「それと、唇の端きれてる」ティッシュで少し固まってる血を拭いてあげる。


うまくとれないから、水をつけてとってあげた。


「あの、何で?」


わかんねーけど、触れたい。


でも、そんな気持ち悪い事言えない。


「痛そうだったから」


「ありがとう。」


「ビール飲む?」


「はい。」矢吹さんは、キラキラした笑顔を向ける。


俺は、ビールを取り出して矢吹さんに渡した。


「何歳?」


「30歳です。」


「へー。同い年だ。てっきり年下だと思ってたわ。」


「よく、言われます。」


「乾杯、じゃあ敬語じゃなくていいよ。」


「はい。」


ゴクッ。ビールを飲みながら矢吹さんを見た。


めっちゃ綺麗だわ。


触りたい。


いやいや、キモいだろう。


なんだ、この感情(きもち)


「煮物、上手だね。」


「あぁ、婆ちゃんっ子だったから」


「ご両親は?」


「10歳で二人共に捨てられた。ハハハ。殴られてたから、よかったんだけどね。離れられて」そう言って笑った。


「ごめん。初対面で、矢吹さんは?」


「母親と二人暮らしだった。高校の時に、母親が再婚して僕を置いて出てってからは、ずっと一人暮らし」


「ごめん。辛い事聞いて」


「辛い?大丈夫だよ。僕は、母に抱き締めてもらった事は一度もなかったから」


寂しそうに笑った。


そんな顔させたくないな。


気づいたら、頭撫でてた。


俺、キモいわ。


「ごめん。何か撫でてた。」


「全然、大丈夫だから」


「その顔、彼女にやられたの?」


「あっ、うん。」


「別れた感じ?」


「うん。もう、付き合えないから」


「結婚、迫られるだろ?この歳だと」


「うん、そうだね。」


「俺さ、子供作ってやれないんだよ。女の子に」


「えっ…。」


「親と別れたって言っただろ?二十歳の時に突然現れてさ。何かと思ったら、そういう手術あんだろ?受けろって」


「何で?そんな」 


「俺、兄貴が二人居てさ。めちゃくちゃ優秀なわけよ。俺みたいなクズは増やしちゃいけないって」


「それで、受けたの?」


「うん。だって、親の言うことは絶対だったから。あんなんでもさ。」

何で、矢吹さんに話してんだろう?


「そんな事しなくても、よかったんじゃ?」


「まあな。でも、どれも絶対じゃないだろ?だから、何個もした方がいいだろって考えたわけよ。」


「いつ、そんなことしたの?」


「えっと、23の時。」


「橘さんは、何も悪くないよね」


「なんで、矢吹さんが泣くの?俺の子供欲しかった?なんてね。アハハ」


「産めるなら、欲しいよ。」


「えっ?マジでいってる?」


矢吹さんは、我に返った。


「冗談です」って笑った。


ちょっと、ビックリした。


矢吹さんも俺と同じ気持ち感じてるのかと思った。





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