表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/251

幸せなら嬉しいよ

栞の一日が、終わった。


麻ちゃんは、二階の部屋に閉じこもってしまった。


「麻美にまで、ご飯ありがとね」


「ううん。今までで一番口聞いてくれなかった。」


「座りな」栞は瓶ビールを俺のグラスに注ぐ。俺も栞に注いだ。


「お見合いって言われたからだよな?」


「多分ね。いただきます。」栞は俺が作った煮物を食べる。


「前に付き合ってた人、DVだったよね?」


「うん。だから、助けてあげた。ちょうどその頃、僕も結婚話でてたけど子宮全摘だったでしょ?だから、結婚やめたくて…。ずっと居た麻美にちょっかいかけたってやつよ。」


ビールを飲み干した、俺は、すかさずつぐ。


「栞みたいに前向きになれるのってすげーな。」


「だって、子供の夢キラキラ語ってる婚約者に私、子宮なくなりますなんて言えないから…ハハハ」


「相手は、何も知らなかったんだよな。栞の事」


「治療も全部知ってたのは、麻美だけだったから…。月には、会って話したでしょ?」


「俺は、栞が生きてるのがすごい嬉しいよ。俺にとって栞は、大切な人だから」


「この話したら、すぐ月が泣くから嫌なんだって…。やめやめ。」


そう言って栞は、ビールをついでくれた。


「麻ちゃんと栞が、うまくいけばいいって俺はずっと思ってるよ。」


俺も煮物を食べた。


「月は、いつ彼女に話すつもり?」


「ここから、帰る日にいうつもり」


「殴られてもいいの?言う必要ないよね?あんな話。」


「馬鹿げてるからか?」


「うん。」


「栞に話した時言ってたな。冗談でしょ?馬鹿げてるって…。俺も、夢ならいいのにってずっと思ってたよ。」


「そんなの親のエゴだよ。」


「俺、おかしいんだけど…。あの日、本当は、あの人達に親孝行できて嬉しかったんだ。」


「そんなの、親孝行じゃないよ」


栞が、泣いてる。


「わかってるよ。違うのなんて。やるって決めたのは、俺だから」


「彼女にその話しなくていいよ。(ののし)られたらどうすんの?気持ち悪いって言われたらどうすんの?」


「受け入れるよ。俺が、彼女の五年を奪ったのは事実だから…」


「なに、それ」そう言って栞が泣いている。


「もう、この話は終わり。栞がいつも泣くから」俺は、栞の頭を撫でた。


「やめろ、ガキじゃない。」


そう言って手を振りはらわれた。


「ビール持ってくる」俺は、ビールを取りに行く。


鞄のスケッチブックをとって持って行く。


「はい、ビール。それとこれ、最後のページ見て」


栞は、ビールを取ってスケッチブックも取ってくれた。


「懐かしい、月の山の子だな。月の本気の恋。」


そう言ってスケッチブックをめくる。


最後のページを見て栞が手を止めた。


「再会したのか?」


「うん。」


「いつ」


「休み取った初日」


栞の顔が、明るくなる。


「すごいな。12年ぶりだろ?結婚は?綺麗になってたか?どんな女の子だった?」


沢山質問をしてきた。


「結婚はしてない。マンションの隣の部屋に越してきた。綺麗だったよ。それと、男だった。」


栞が、目をパチクリパチクリさせてる。


「男だったの?」


「あぁ、うん。」


栞は、笑い出した。


「そりゃあ、月の山に通ったって会えないよな。ハハハ」


「初めて見た時に、心臓がドキドキしてビックリした。男が好きな自分を受け入れられなかった。」


栞は、不思議そうな顔をしながら


「好きなら、何でもいいよ。男や女なんて器の話だから」


「器って、絵描()く人は違うな」


「僕には、見た目なんてほとんど見えてないけどね。麻美は、頬から首にかけての火傷の痕を気にしてるけどね。僕には、気にならないから…」


「昔からだよな。栞は、心の中が見えてるんだよな。」


「月の親の絵描()いたら、ヤバイ化け物産まれたよな。ハハハ」


「そうそう。家族ってくれた絵。すごい不気味だったわ。俺以外化け物で。」


「ハハハ、今度僕にも会わせてよ。この人」


「うん。」


「月が、幸せなら。僕は、すごく嬉しいよ。」


「うん、幸せだよ。」


「よかった。」


そう言って栞は俺の頭をワシャワシャ撫でる。


栞が、(えが)く絵が好きだ。


栞が居てくれたから生きてこれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ