見られたくなかった。
リリリーンってスマホの音で、目が覚めた。
朝かと思った。
「はい。」手探りで電話に出た。
「時雨」体が震える。
「なに?」
「時間できたから、明日の話と金持ってきた。」
「えっと」
「さっさと開けろよ」
僕は、玄関に行って扉を開けた。
「誰かいんの?」キャリーケースと靴を見て言った。
「うん。友達」
「へー。俺等以外に友達なんかいんの?」
そう言って、玄関の扉を無理やり開けられた。
力は、時雨には敵わない。
「彼氏だろ?」
氷河に髪を掴まれた。
「やめて」
「座れ」
そう言って玄関に座らされた。
「お前さ、誰かにちゃんと愛されると思ってんの?」
氷河に、髪を離された。
今までより辛いのは、月の愛に触れたから…。
「普通の幸せ手に入ると思ってんなら間違いだから」
時雨に両頬を押さえられた。
「お前は、汚れてるのが似合ってるの」
氷河に頬を舐められた。
気持ち悪くて、吐き気がする。
「なんで、嫌がってんの?昔は、俺等が大好きだったじゃん」
時雨が肩に噛みついた。
「好きだろこういうの?」
「泣いてんの?あいつとは、もうそうなっちゃった?」
「星は、すぐそうなりたがるからな。」
「大丈夫だよ。俺達が、愛してあげるから」
また、時雨が肩に噛みついて鎖骨を舐められた。
「ここ好きだよな。本当鎖骨、綺麗。」何度もされた。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
「俺は、これが好き。」
そう言って首筋を舐められる。
「この指も…」指を噛まれる。
吐き気しかしない。
その後も何度か続いて、窒息しそうなキスもされて…。
「やめて」って言うのに聞いてくれなくて、やめてくれなくて…
床に、押し倒された。
腕は、押さえられてズボンを脱がされて月が守ってくれた。
見られたくなかった。
僕は、洗面所に行く。
頬が痛い。舐められて気持ち悪い。
洗おうと思った瞬間、月が来た。
汚いよ。
あいつが、あいつが…。
月は、やめなかった。
ジンジンと熱をおびた頬に、冷たい月の舌で、頭の中に不思議な感覚が広がっていく。
僕のカッターシャツのボタンを外す。
「これ……」僕の肩や鎖骨についている噛まれた後を指で触る。
「腫れるね。」
溶けかけた氷を乗せる。
「だめ…だよ。何…してるの?」
月は、その後を舌でなぞっていく。
ジンジンとした肩の痛みと、月の冷たい舌で頭や心の奥にジーンと暖かいものが広がってくる。
首筋にも、舌を這わせる。
ゆっくりと僕の顎を掴んだ。
「綺麗になった?」
その眼差しに、胸が踊り出した。
「まだ、ここがなってなかった?」そう言って唇をなぞってゆっくり優しく唇を重ねた。
初めてされたこんなキス。
唇を離した。
まだ、していたかった。
「綺麗になったよ。」ニコって月が笑った。
ドキンって胸が締め付けられた。
「嫌……だった?」
僕は、首を横にふった。
「よかった。」
月は、笑って僕の頭を撫でた。
「さっきの人、誰か聞かないの?」
「言いたくないなら、いいよ。」
「初めて付き合った人」
「えっと…二人?」
「違う。最後に出ていった人」
「ああ、そっちか」
「月が、助けてくれた。」
「あっ!それで見た事あったんだ。」
そう言って、月は笑ってる。
「あいつの愛情の方が、嬉しかった?」
僕は、月の唇を指でなぞる。
「こっちの愛情が、嬉しい」
「指も噛まれたか?」そう言って月は僕の指を口に含んだ。
何、これ…
体の全身を広がっていく、優しくて穏やかなぬくもり。
「ほら、聴いて」そう言ってその手を月の胸においた。
ドキドキ…ドキドキ…
「すごく、はやい」
「星に、触れてるからだよ。」月は、優しく頭を撫でる。
嬉しくて、抱きついてしまった。
月も抱き締めてくれた。
「ちゃんとするから、俺」
「僕もちゃんとする。」
「もうちょっとだけ飲もうか?」
「うん。」
月が、僕を立たせてくれた。
二人で、少しお酒を飲んだ。
幸せで、幸せで、こんな気持ちは初めてだった。




