わかるよ、それ
月が、自分の方が汚いと話して泣いた。
「わかるよ。」
僕は、月の涙を拭ってあげた。
「だって、僕も最初の彼氏の時そうだったから殴られて蹴られて、それを欲しがった。」
月の目から涙が幾重にも重なりあってる。
「それが、僕にとっての愛だから…。今だって、月に傷つけられたいって思ってるんだよ。」
月も、僕の頬を撫でる。
「歪んでるな、俺達」
「そうだね。」
今思えば、歪んだ愛情の先に居たのが、時雨だった。
「刺激的じゃなかったら、つまらないんだろ?」
月が、僕の頬を撫でながら言う。
「うん。」
「優しくされたって、足りないんだろ?」
「うん。」
「でも、今は殴られたくないんだな。」
月の言葉に、ドクンって胸が波打った。
「星、愛って退屈なんだよ。」
「えっ?」
「俺が、婆ちゃんと爺ちゃんからもらった愛は退屈だったよ。」
「そうなの?」
「ああ、刺激なんてないんだよ。」
月の目から涙が流れてくる。
月に出会ってから、殴られるのが嫌になったのは、月の中にある愛に触れたから……。
「殴られたり、蹴られたり、罵倒されたり、傷つけられたり、そんなのは愛じゃないんだよ。星」
涙がとまらない。
「抱き締めてもらったり、涙を優しく拭ってもらったり、傷つけないように大切にしてくれたり、優しくて暖かくて包み込まれてるのが俺が教えてもらった愛だよ。」
「そんなの、もらった事ない。」
「忘れてるだけじゃないか?離したらいなくなった人が、くれたんじゃないか?」
離したらいなくなった人……。
パパだ。
「星は、パパの宝物だよ。」ギュッーてしてくれた。
「パパはね、星がいたらなにもいらないよ。」
頭を撫でてくれた。
「パパが、星を守るからね。」抱き締めて背中を擦ってくれた。
あれが、本当の愛?
「愛が、何か思い出せた?」
「少しだけ…。でも、難しい」
そう言って、月の手を握る。
「少しずつ、受け入れてみてよ。俺を…。」
そう言って月が、笑う。
「僕も、ちゃんとした愛を知れるかな?」
「大丈夫、俺も知れたから。」
そう言って月が、頭を撫でてくれた。
6歳になる時、パパは帰ってこなかった。
僕は、ママの元へ帰された。
パパは、元気にしているのだろうか?
ママが再婚した時も、パパを探す事が出来なかった。
パパに会いたいけど、見つけ方がわからない。
「星、俺と向き合って欲しい。」
「そうしたい。」
「一週間後、返事を聞かせて」
「わかった。」
僕の唇を月が、撫でる。
「付き合ってみたい。」
月は、そう言って僕の目を見つめた。
僕は、ゆっくり頷いた。
「俺も、ちゃんとけじめつけてくるから…。」
「うん。」
「一週間後、もう一度気持ちを伝えるから…。仕事とか汚れてるとかじゃなくて、ちゃんと星の返事が欲しい。」
「わかった。ちゃんと考える」
「約束」
「約束」
僕と月は、指切りをした。
朝から、飲みすぎて体がフワフワしてきた。
「飲みすぎだな。」
「横になる?」
「うん。ちょっとフワフワしてるわ」
そう言った月を、布団に連れてく。
「おいで」月が、僕を呼んだ。
「いいの?」
「匂いが、どうのって話してただろ?」
そう言って、隣に寝なと布団をめくった。
僕は、月の隣に寝転んだ。
「香水って、ずっと変わってない?」
「ああ、高校生の時からかえてないよ。」
「やっぱり、そうなんだね。」
「うん。普通かえるもの?」
「わからない。僕も高校から同じの使ってるから。」
「だよな。」
そう言って腕枕しながら、頭を撫でてくれる。
「最後が、ちょっと甘いのが気に入ってこれ選んだんだ。婆ちゃんが、花が大好きで。その甘い匂いがフワッて家にはいるとして。婆ちゃんに愛されてるのを感じたから…。つける香りも、そういうのを見つけたかった。」
「じゃあ、これは月が感じてた愛の匂い?」
「うん、そう」
何か、嬉しい。
月は、そう言うとすぐに眠ってしまった。
僕も、月の匂いを感じながら眠った。




