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ありがとう

俺は、(ひかる)の涙を拭った。


嘘だろ?その気持ち。


でも、それ以上突っ込む事は出来なかった。


最後なら、(えが)きたかった。


(わず)かでも、楽しかったから…。


明日からは、ただの隣人なんだ。


気持ちを伝えたら、あっけなく終わりをむかえた。


言わなかったら、よかった。


恋とか言わなかったらよかった。


俺は、いつも女の子を助けてた。


学校でも、外でも…。


あの日、月の(つきのほし)公園で女の子が蹴られているのを見た。


月の星公園は、月の山町と星の森町の真ん中にある公園だ。


栞が、あの公園の景色が大好きだった。


あの公園で描く、親子連れやカップルやサラリーマンが大好きだった。


だから、俺は栞に連れられてよく行ってたんだ。


俺は、必死で嘘をついて女の子を助けた。


警察ってだして殴られたら、栞に本当に警察を呼んでもらう約束だったから…。


男は去ってくれて、女の子を助けられた。


顔を見た時にトクンと胸が鳴った。


手を掴んでくれた時に、またトクンって鳴った。


最後にティシュを渡したら、心臓が爆発しそうなぐらいドキドキを刻んでいた。


俺は、栞に呼ばれて行った。


もっと、早くに会ってたら何か変わっていたかな?


名前聞かなかった俺が悪いよな。


「宝物にするから」


俺は、笑って星の頭を撫でた。


もう、これだけで充分だよ。


「もっとしてもいいよ。最後になるなら」


何、言ってるの?


「いいよ。」


「もう、終わりならもっとしたいって思わないの?」


だから、何言ってるの?


「いいよ。」


「大丈夫だよ。もう大人だから、そんな事気にしないよ。」


「いいって言ってるだろ」


大きい声が、でてしまった。


星は、ビクッてした。


「ごめん。もう隣からも居なくなるみたいな言い方されてつい。」


「それは、引っ越すでしょ。」


「何で、そんな必要あるの?」


「だって、それは」


「大丈夫だよ。俺が、明日からしばらく栞の家に行くから」


「どうして?」


「ちょうど、休み明けから一週間は来てくれって言われてるから。1日早く行くだけだから…気にしないで」


そう言って、俺は笑った。


「わかった。」


悲しい顔するなよ。


期待するだろ。


「だから、気にしないでよ。彼女や彼氏と、そういう事するのもさ」


「……わかった。」


何で、目を伏せるんだろう?


俺の事、好きなの?


期待しちゃうよ。


「嫌いでいいから、せっかく会えたんだから…しばらくは、隣人でいてよ。」


俺の言葉に星が、俺を見た。


「ごめん。会釈するだけで充分だから…」


「考えてみる。」


「うん、いない間に考えてみて。どうしても無理なら止めないから」


「わかった。」


何かちょっとホッとした。


俺は、やっぱり星が好きなんだ。


初めて会った時に、ドキドキしたのは星のこの()を覚えてたからなんだ。


もっと早く、見つけてあげたかった。


でも、時間は巻きもどらないから


進むしかないから…。


先の未来で、笑ってたらよかったけど…。


それも、無理かもしれないな。


引っ越ししちゃうよな。


注がれたワインを星は、飲み干した。


「ごちそうさま」


立ち上がろうとした腕を掴んでしまった。


「なに?」


「まだ、ワイン残ってるから」グラスに注いでしまった。


「わかった。」


そう言って一気に飲もうとする手を止めた。


「味わって、最後の一杯だから」


星の目が、俺を無言で見る。


「ごめん。でも、これ飲んだら全くの他人になるわけだから…。最後ぐらいゆっくり味わってよ。ねっ!」そう言って星の、唇についたワインを指で拭った。


その指で、自分の唇をなぞる。


キスをしたら、終わる。


星に少しでも俺をつけたら、終わる。


ハッキリとそれがわかる。


だから、何もしたくない。


星は、ずっと俺の指を見てた。


それでも、何も言わなかった。


ゆっくり時間をかけて、ワインを飲んでくれてる。


星の口に生ハムチーズをいれた。食べてくれた。


いれた時に少し唇に指が触れた。


また、唇に触れてしまった。


ドキドキ…ドキドキ…


こんなに思ってるのにもどかしい。


「ありがとう。」俺は、笑ってそういうのが精一杯だった。


星は、ワインを飲み干して部屋を出て行った。


サヨナラは、いいたくなかった。


俺は、布団に寝転がって泣いた。



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