歪んだ愛の行き先
人の温もりを感じて、起きた。
星が、手を抜いたのに気づいた。
僕だって、男だよって言われちゃった。
「大切に…したい」って言ったのに聞いてなかったな。
俺は、キッチンに行く。
生ハムとチーズもらったのあった。使おう。
さっき、俺が押さえつけた時星はもっとして欲しいと望んだのがわかった。
俺は、星が欲しがるものはやらないよ。
婆ちゃんが、母さんが俺に何をしたかを知ったのは爺ちゃんの退院祝いだった。
母さんが話したのか、父さんが話したのか…。
爺ちゃんと帰宅した俺の前で、婆ちゃんは、父さんの胸ぐらを掴んでこう言った。
「この鬼畜、母さんはあんたをそんな化け物に育てた覚えはないよ。」
爺ちゃんが、それを止めた。
「あっそ。一人ぐらいたいした事じゃないよ」スーツを直しながら父さんは言った。
婆ちゃんは、あの1ヶ月後精神を病んだ。
今もまだ入退院を繰り返している。
婆ちゃんは、あの日気づいたんだと思う。
どんなに一生懸命愛情を注いでも、受け取る方が歪んでいたらその愛情はきちんと届かない事を。
父さんは、2つ上の兄に対する劣等感と嫉妬が凄かった。
兄よりも優秀な遺伝子を残す事だけにこだわって生きていた。
三人目の俺が産まれた時、父さんは敗北感に包まれたという。
自分に似ていない顔に吐き気すら感じたと話した。
俺は、まともな会話すら出来なくて、小学校の勉強もついてさえいけなかった。
10歳の時、両親はそんな俺を捨てた。
いらないと、初めから捨てたらよかったと…。
父さんのお兄さんは、けして悪い人ではなかったよ。
一つ下のるかさんを亡くしてから婆ちゃんと爺ちゃんに迷惑をかけないように生きていただけ。
それで、凄く頭がよくなっていっただけの事。
何でも出来ただけの事。
だけど、父さんは死ねと書いた紙を毎日お兄さんに送りつけたという。
歪んだ愛は、連鎖していくだけ。
俺もまた、罵られ叩かれる事が幸せだと感じていた。
もっとして欲しかったのを覚えている。
彼女にも、求めた事もあった。
さっきの星みたいに…。
でも、俺は星にそんな愛情をあげないよ。
婆ちゃんがくれた愛情をちゃんと信じてるから
俺は、婆ちゃんと爺ちゃんがくれた。
暖かくて、優しくて、刺激的じゃない愛情しか星にあげないよ。
そうしないと、星の歪みはどんどん酷くなる。
俺が、治してあげるから…。
また、話してて泣いた。
離すといなくなるって、誰の事言ってるの?
その誰かは、星を傷つけなかったんだな。
離されて、ティシュを取る。
「食べなよ。生ハムとチーズ」
星の口にいれた。
「僕を捨てない?」
酔っぱらってるのかな?
「捨てるもなにも、俺達は友達だろ?」
「僕の事、覚えてないの?」
僕の事って、何の話?
俺は、星に会った事あったっけ?
「思い出せないよね。」
「ごめん。思い出せなくて」
ごめん。
「12年前なんだけどね。」
12年前?
もしかして、ドクン…。
「よかった、じゃあこれな」
目に涙をいっぱい溜めてる、綺麗な女の子…
…
…
…
!!!
「あの時の、女の子?」
「やっと、思い出した?」
「なんとなくだけど。」
「あの時の僕は、恋愛対象だった?」
ドキドキ…ドキドキ…
あの時。
12年前ー
「月、また女の子助けたの?」
「今回は、結構綺麗な子だったよ。」
「それ、私の前で言う」
「ごめん。栞の事は」
「幼馴染みでしょ?」
「さっきの男の子の制服」
「殴ってた方?」
「そうそう。月の山高校じゃない?」
「あっちか!星の森とは逆だよね。」
「だねー。」
次の日、栞が見に行こうって待ち伏せした。
ドクン、ドクンって波打つ。
結局、いなかった。
それでも、栞と何度も見に行った。
「月の山高校じゃなかった?」
「そうだよ。」
「俺は、星の森だった。」
「そんなに近かったんだ。」
あんなに探した子が、男の子。
卒業するまで、栞と何度も探した子が、男の子。
頭が追い付かない。




