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帰宅と2日間(星と氷雨)

氷雨の家に帰ってすぐに、(るい)にメールをした。


(三日間帰れません。)と送った。


まだ、何の仕事にもついていない僕には氷雨に尽くす事が出来る最高の日々だと思った。


「ワイン飲む?」


「時間、早いよ」


「たまには、いいじゃん」


「わかった。」


お酒は、より化け物を解き放つのではないかと言う疑問を抱くけれど久しぶりに一緒にいるには飲まずにはいれないと思った。


氷雨が、ワインを注いでくれた。


「乾杯」


チーズもだしてくれた。


「これだけは、ずっとある。」


そう言って笑う。


もう寿命が、2、3年しかないのならこの想いに身を焦がしてしまいたいと思う。


ただ、僕も氷雨もそんな訳はないのだ。


だとしたら、こんな想いを一生味わってなど生きていけないのだ。


ワインを飲む氷雨の唇を見つめる。


化け物に身体を預けてしまって構わないと思うほどに愛しくて泣きそうになる。


短い間でも、傍にいるとハッキリとわかる。月といるあの穏やかな日々とは違い、氷雨との日々は激しいのだ。


気力も体力も消耗する愛。


こんな愛を抱えて、お爺さんまでいるなんて不可能だ。


「どうしたの、星?」


「ううん、何にもないよ」


僕が笑ったら、向かい合わせに座っていた氷雨が隣にやってきた。


「星、ずっと一緒にいれないのはわかってるよ。」


そう言って、僕を見てる。


「でも、短い時間でも星と過ごしたい。」


「うん」


「それが終わったら友達として、僕を愛してくれない?」


「うん」


僕の唇を氷雨が撫でてきた。


キスより先は、駄目だ。


それでも、氷雨に触れられるといっそ化け物に自分(ぼく)を全て捧げてしまいたい衝動にかられる。


氷雨がいるだけで、我慢ができなくなるのだ。


「キスだけだから、してもいい?」


「うん」


氷雨は、華君の演奏を聞いたお陰なのか店に行く前の強引さがない。


軽く唇を重ねてきた。


僕は、氷雨を受け入れた。


もっとして欲しくても、氷雨はやめる。


それからも、唇を重ねては離すのを繰り返すだけだった。


つまらない。でも、あの日僕が月に求めたキスによく似てる。


「星、愛してるよ。この先もずっと…。でも、傍にいれないでしょ?星も僕も」


「わかってる」


氷雨は、僕の胸にしがみついてきた。


「なんでかな?こんなに愛してるのに。」


そう言って氷雨は、また軽いキスをした。


「星と一生一緒にいれるなら、何もいらないのに」


「撲もだよ」


「でも、今もずっと胸が締め付けられて苦しい」


「同じだよ」


「こんな事、繰り返してたらいつか死んでしまうよ」


氷雨の目から涙が(こぼ)れてきた。


「だから、いれないんだよね。」


「そうだね」


また、氷雨は軽いキスをしてくる。


「だって、撲。星が、僕の見えない場所にいるだけでおかしくなりそうだよ。」


「わかるよ」


「星を閉じ込めて囲って、僕の身体の一部にしてしまいたい。その衝動が抑えられない。一緒にいると…。」


「わかるよ」


僕は、氷雨の頬に手を当てて涙を拭ってあげる。



破滅にしか向かう事がなくても欲しくて堪らないのだ。


氷雨は、僕にまた軽いキスをする


どれだけ、そんなやり取りをしてたかな?


気づけば、氷雨は眠っていた。


それからの二日間は、同じことを繰り返していただけだった。


明日で氷雨と過ごすのも最後だ。


あの頃よりうまく別れられる気がしていた。


あの頃と違って、友達としてこの先もいれる気がしていた。


どんな形でも、僕は氷雨の傍にいたいのだ。


明日は、一日氷雨は家にいると言っていた。


明日の、夜には、ちゃんと家に帰ってもらうつもりだ。


でも、明日の夜までは、僕はずっと氷雨に触れていたいと思う。


もう二度とこんな風になど出来ない。


友達ってそういうものだから…。


だとしたら、友達として出来ない一日を過ごしたい。


華君がくれた大切な時間。


化け物にかわらずにいる事が、出来た大切な時間だから…。


ちゃんと使おう。



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