流星の本心
俺が戻るのを見て、晴海君はキッチンに戻っていた。
「流星、ごめんね」
「全然、大丈夫」
そう言って笑ってる。
「何頼んでくれた?」
「ランチメニューじゃなくて、夜メニューから出してもらった。手がこれで、ガッツリお肉がよくて」
そう言いながら、自分のカッターシャツのボタンをはずすのはなぜ?
「暑かった?」
「ううん、全然。」
流星の胸元に、俺にくれたネックレスの片割れが光ってるのが見えた。
「ワインです。どうぞ」
そう言って華君が現れたら、流星はトイレに行ってしまった。
「やきもちやいてるのかな?」
「えっ?そうかな?」
「お酒飲まれると大変だね。」
「そうですよね。」
「きっと今から彼は、月君に聞きたかった事を聞いてくる。ちゃんと口に出して答えてあげて。」
「はい。」
「本心を伝えるんだよ。どうしたかったかを…」
「でも、体は捧げたら」
「駄目だよ。でも、そうなってもよかった事だけは伝えてあげなよ。じゃあ、行くね」
そう言って、華君が下がるのと同時に流星が戻ってきた。
「月、昼間からお酒を気にせず飲めるのはいいね」
流星は、ワインを飲み始めた。
「今まで、飲めなかったよな。」
「いつ、呼び出しがあるかわからないからね。昼間からなんか、罪悪感だよ。」
流星が、グラスの縁を撫でる指を見るだけでドキドキする。
「月は、俺と再会出来て嬉しい?」
「嬉しいに決まってるよ。」
「それは、兄弟として、それとも愛してるから?」
流星は、またカッターシャツのボタンを少し開ける。
そんなに開けたら、変態にならないか?
「どっちもだよ。」
俺は、流星を見ながら答えた。
「ステーキになります。どうぞ」
晴海君が、ステーキを持ってきてくれた。
「いただきます。」
「月は、お米いらなかった?」
「うん、大丈夫」
正直、お腹はそこまで空いてなかった。
流星が見せる全てにドキドキして、今すぐどうにかなってしまいそうな程だった。
流星が、肉を食べる口元、ナイフやフォークを使う指先。
もうその全ては、妻にしか向けられていないのだとわかってるから、涙が溢れ(こぼれ)そうになるのを必死で堪えた。
「ステーキうまいわ」
意識をしないように、肉に集中する。
「月、足」
えっ?足?
流星は、テーブルの下で俺の足を触ってくる。
「いや、やめてよ。ご飯食ってるから」
すぐにやめてくれた。
悲しい顔をしてる。
ワインのせいだ、流星は化け物をコントロール出来ないんだ。
「もう、俺とそうなりたくないの?」
お肉を食べた口の端の汁を指で拭いながら言う。
「俺は、流星とそうなってもよかった。でも…」
そう言った俺に流星が、急に兄貴の顔になる。
「ごめんね。へんな事を聞いて…。今まで、月に散々甘えたよね。」
兄貴として接したいのに、うまくいかないのだろうか?
「いや、俺が流星を欲しかっただけだから」
そう言った俺の言葉に止まった。
解答を間違ったんだ。きっと…。
「どんな風に欲しかったの?クリスマスの時は?正月に会った時は?」
「それは、兄弟じゃなかったら、よかったって。流星が、幸せな姿を見るのが怖かった。正月も、会えて嬉しかったよ。」
俺は、笑って肉を食べた。
「わざとだった。」
「えっ?」
「正月は、月に会いたい気持ちが強くなりすぎて、あの日見つけた。わざと後をつけた。星君といるのを見て。本気で諦めようと決めた。お兄ちゃんになるって決めたのに、出来なかった。月の愛が欲しかった。」
「流星、俺。流星と」
そこまで言った瞬間、ギターの音が流れる。
振り返ると、華君が弾き始めてた。
俺、流星と前のようになりたいって話す所だった。
化け物に喰われようとした。
流星を見たら、涙が流れてきた。
何かが響いたのがわかった。
俺と流星は、ご飯を食べ終わった。
華君の演奏も終わった。
流星が、お会計は俺がするとレジに行った時に華君がやってきた。
「今日から、三日間は傍にいてあげてね」と言われた。
どうして?と聞こうとしたけど華君はいなくなっていた。
俺は、流星の元に向かった。
一緒に並んで店をでた。




