氷雨の本心
僕がもどると、晴海君はキッチンにもどっていった。
「大丈夫だった?」
「うん、何頼んだの?」
「オススメは、Aランチって言うからそれにしたよ。」
ニコニコ笑ってる。
「ありがとう」
そう言った僕に、氷雨が
「星、僕を愛してる?」
って聞いてきた。
(月君が来ると氷雨の中の化け物がかわるって言っていた。)
もしかして、かわったのかな?
「星、聞いてる?」
「聞いてるよ」
氷雨は、トイレに行ってくると行ってしまった。
華君が、ランチを持ってきてくれた。
「星君、彼の化け物がかわったよ。」
「えっ?」
「今の彼は、月君に絶望をうえつけられたのかな?月君が、現れてから星君の愛を欲しがるようになった。」
「どうしたら、いいの?」
「答えてあげて、彼の欲しい言葉をきちんと口に出すんだよ」
そう言って、華君が笑って去っていった。
僕は、それを聞いて月に話しかける事はやめようと思った。
華君が去ってすぐに、氷雨が、もどってきた。
「美味しそうだね。」
「うん。」
「いただきます。」
「いただきます。」
氷雨と一緒に食べ始めた。
「氷雨、さっきの話だけど」
「星が、僕を愛してるかって話?」
「うん、僕は氷雨を愛してるよ。」
そう言って、笑うと氷雨は満足そうにしてる。
Aランチは、ハンバーグだった。
すごく、美味しい。
僕は、氷雨の笑顔を見てるとこのままずっと一緒に居てあげたくなった。
「星は、どんな日々を過ごしていた?」
「氷雨に会わない間って事?」
「うん」
「最初は、辛かったよ。でも、だんだん前を向いて歩いて行ったから…。」
そう言った僕に、氷雨が
「クリスマスに会った日は、覚えてる?」
「覚えてるよ。」
「あの日、星に会えて嬉しかったんだよ。」
そう言われて、驚いた。
「ごめんね。こんな話して」
「ううん、大丈夫だよ。」
氷雨の気持ちは、痛い程わかる。
あの日、栞さんに見せられた絵の氷雨はまだ頭を化け物に食べられていなかった。
じゃあ、お正月に会った氷雨はどうだったのだろうか…。
そんな疑問を氷雨が、解決してくれた。
「りんご飴、好きなんだね」
「あっ、うん。パリパリとシャキシャキが楽しくて」
そう言って笑った僕に氷雨が、
「あの日、星を離したくなかった。」と言った。
「どうやって、僕を見つけたの?」
「入り口で、芸能人じゃないかって人が騒いでいた。その中に星を見つけた。母さんと妻と来ていた。だから、人混みに紛れてはぐれたんだ。星達の後をつけた。」
「それで、りんご飴のとこにいたんだ。」
「うん、離したくなかった。でも、傷つけたくもなかった。葛藤の末、手を離した。消えてく姿を見ながら、胸が押し潰された。」
そう言って、氷雨は寂しそうに笑った。
ランチを食べ終わり、お皿が下げられていく。
チョコレートケーキとコーヒーが運ばれてきた。
ご飯を食べていると、このまま僕も氷雨の一部になってしまってもいいのにって思ってしまった。
でも、それは考えてはいけないのだと何度も氷雨から顔を背けた。
それでもやっぱり、氷雨に触れたいと望んでいる僕を消してしまいたい。
今の僕が、氷雨にできる事は、化け物から救うことであってけして自分が化け物に喰われる事ではないのだ。
わかっていても、思考を化け物が乗っ取ってこようとする。
それを、振り払う度に氷雨への愛が小さくなる気がして怖い。
僕と氷雨は、無言でチョコレートケーキを食べた。
食べ終わって、コーヒーを飲み始めた時
ステージに華君がやってきた。
華君のギターの音色を聞きながら氷雨を見ていた。
氷雨の目から幾重も涙が重なりあって落ちていく。
氷雨が、何かを感じていた気がした。
演奏が終わり、コーヒーを飲み干し、お会計をしてもらった。
僕と氷雨が、店を出る時に華君がやってきた。
華君は、僕の耳元で、
「今日から、三日間は傍にいてあげて」と言った。
どうして?と聞こうと思ったけど華君は、別のお客さんの元に行ってしまった。
僕と氷雨は、お店をでて氷雨の家に帰った。




