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あの日の時雨と帰宅

僕は、時雨の話しに胸が押し潰されそうだった。


時雨は、(あふ)れる涙を拭わずに話す。


氷河(ひゅうが)が、話さなくなった。俺は、その瞬間、明日香を殴った。すると、明日香は、笑いながら俺を刺したんだ。耳元でこう言った。次は、星だからって…。時雨の愛を手に入れられなかったのは星のせいだから、星を()るからって。星の事を考えると俺も氷河も明日香に手を出せなかった。出しておけば、こんな事にならなかったのかもしれない。」


そう言って、泣いている。


「俺は、意識が薄れていくのを感じた。明日香が、どうなったかまではわからなかった。ただ、星を守らなければと思ってた。氷河の手を探して手を握った。気づいたら、病院のベッドで氷河は隣で寝てた。」


そう言って、泣いている。


「辛いのに話してくれて、ありがとう。僕が、話せばよかったのに、ごめんね。」


そう言った僕に時雨は笑ってくれた。


「約束したから、危ない事はせず星に必ず会いに行くって…。だから、遅れるって送ったんだ。明日香との話が、こじれそうだったから。必ず行くつもりだった。会って、星に幸せになれよって言うつもりだった。」


時雨の目から涙が幾重にも重なりあって落ちていく。


「氷河に抱き締められた時、俺の胸の中に暖かい何かが(あふ)れてくるのを感じたんだ。俺は、氷河と生きていきたいと感じた。目を覚ました俺の前には、絶望しかなかった。生きているのが許せなかった。」


そう言うと、時雨は深呼吸をする。


「早く気づけばよかった。俺のこの10年を支えたのが氷河だって事。俺は、今、生きる事が苦しくて辛くて堪らないんだよ。でも、俺が生きていなくちゃ。目覚めた氷河が絶望しちゃうだろ?」


そう言って時雨が、泣いてる。


「そうだよ。時雨は生きていなくちゃ」僕は、時雨の手を掴んだ。


「わかってるよ。でも、辛くて苦しくて悲しくて。逃げたくなる。目覚めた絶望と罪悪感で押し潰されそうになる。でも、俺、氷河を待つよ。何十年でも目覚めるまで待つ」


そう言って時雨は、涙を拭って笑った。


「後、氷雨との事何だけど、まだ受け入れられない。ごめん、星」


「ううん。」


「月さんと幸せになれよ。」


「ありがとう」


「じゃあ、少し眠るから」


そう言って時雨は、横になった。


僕と月は、病室をでた。


僕は、出てすぐに昨日の月のお兄さんの話をした。


「仕方ないよ。今は、会えないから」月は、そう言って笑った。


手を繋いで歩いていく。


目が覚めた時、月が氷河のようになっていたら絶望しかない。


何の未来も見れない。


それが、わかる。


僕は、月の手をギュッと力をいれて握りしめた。


「痛いよ」そう言って月が笑った。


「ごめんね。」


僕は、手を緩めた。


「大丈夫だよ。生きてるから俺」


そう言ってくれて、頷いた。


「引っ越し先、決めないといけないよね。」


「春までには、引っ越したいな。」


「うん。」


僕と月は、病院前に止まっていたタクシーに乗った。


太陽町に連れてきてもらっていた。


不動産屋さんに入り、部屋を探してる事を伝える。


「最近でてきた物件なんだけど、見に行かないかな?」と聞かれて頷いた。


不動産屋さんは、僕達を連れてきた。


10階建ての10階の角部屋に連れてこられる。


「ここは、太陽町が一望できるんですよ。」


ベランダから外を眺めた。綺麗。


「なかなか、このマンションはでてこないのでオススメですよ」と言われた。


「月、ここにしない?」


「俺は、星がいいならいいよ。」


4LDKのマンション、家賃は今のマンションの倍にはなるけれど…


二人でずっと暮らしていくのにピッタリな場所だと思った。


「1ヶ月以内には、引っ越せると思うのですが…」


と月が話すと不動産屋さんは、契約だけしておきましょうと話した。


僕と月は、戻って契約をした。


あのマンションからやっと離れられるんだ。


少しホッとした気持ちで家に帰った。


新しい未来に向かって歩いているのを感じていた。



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