会いたくなかった人と時雨
目覚めたら、幸福感に包まれていた。
隣に眠る月の腕時計を撫でる。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
ニコニコしながら、月の髪や頬を撫でてしまっていた。
「幸せ」そう言って、手を掴まれた。
「起きたの?」
「起きたよ。」
月に抱き締められてると鼓動は穏やかな音をたててる。
幸せな音だ。
「最初に、氷雨君にも感じなかった?幸せだなって」
「感じたよ。月も?」
「うん、流星に俺も感じたよ。」
「でも、愛って不思議だよね。こんなに穏やかなのとあんなに激しいのがあるんだよね。」
「そうだな。」
僕は、月の指を一本ずつ触れる。
「何してんの?」
「嬉しくて、何したいかわからない。」
「何それ、ハハハ」
月は、僕の指を掴んだ。
「何してんの?」
「幸せすぎて、わからない」
「同じだね」って笑い合った。
「今、何時?」
「7時」
「起きなきゃな」
起きようとする月の手を掴んだ。
「あのね」そう言った僕の言葉に
「休みとれるか聞いてみるよ。」
そう言って起き上がって、電話をかけにいった。
嫌な予感しかしなくて、でも行くって約束したから行かないわけにはいかなくて…。
「とれたよ、休み」そう言って月が戻ってきた。
「月、大好き」僕は、月に抱きついていた。
「早めに行こうか?帰りに、不動産屋も行きたいし」
「うん。朝ご飯食べよう」
僕は、トーストを焼いてコーヒーをいれた。
月と朝御飯を食べる。
食べ終わって用意をして、月がタクシーを呼んでくれた。
「これ、着ようよ」
セーターを持ってきた。
お互いにあげたクリスマスプレゼント。
月が薄い黄色で、僕が淡い白色。
「あっ、これ。着てなかったよな」
そう言って月は、着てくれた。
僕も着た。首もとに光る別々のネックレス。Vネックだからはずすべきだろうか?月は、気にしていないようだった。
「行こうか?」
「うん。」
僕と月は、家を出た。
タクシーで、病院にやってきた。
僕は、時雨の病室に連れていく。
中から声がしていて、入りにくい。
「どうしよう?」
「一緒なら、大丈夫だから」月が笑って手を繋いでくれた。
コンコンってノックすると、時雨がどうぞって言った。
開けて入ると、氷雨君と奥さんがいた。
「後で来る方が、いいですか?」月の言葉に時雨は、「大丈夫ですよ。二人もうすぐ帰るのでどうぞ」って言った。
月が、僕の手を引いてくれる。
時雨は、僕達を見てニコニコしている。
氷雨君は、誰かを亡くした顔を浮かべてる。
「月さん、お久しぶりです。」
「目が覚めて、嬉しいです。」
「二人は、そうなったのですね。」
そう言って、月が黙ってしまうと時雨は
「良かったです。そうなって欲しいと願っていたので」と笑った。
月は、「ありがとうございます」と笑った。
「それ、お揃いですか?」僕と月の服をきっかけに、時雨の中にいる化け物に時雨が身を委ね始める。
「これは、クリスマスプレゼントにお互いに贈ったもので」
月がそう言うと
「その時計もお揃いだ」と言ってきた。
月は、何も言わずに頷くと…
時雨は、僕と月のネックレスを見た。
「それも、お揃いなんですね。ネックレス」
氷雨君の顔が、明らかに曇るのがわかった。
「これは、」違うと言おうとした月を時雨が止めるように言った。
「愛を誓い合ったのなら良かった。俺は、二人の為にあの日氷河と明日香を」
そう言ってカタカタと震え始めた時雨を月が抱き締めた。
やっぱり、月はすごい人だと思う。
「時雨さん、ありがとう。お陰で俺は、生きているよ。」
その言葉に時雨の目から涙がたくさん流れてきた。
「そして、今、星といれる幸せを感じる事が出来るのも時雨さんのお陰です。時雨さんは、何も悪くない。大丈夫。だから、生きていていいんだよ。」
月の言葉に時雨は、子供みたいに泣き出した。
氷雨君は、それを見て出て行った。
絶望に近い表情をしていたのがわかった。
でも、僕は追いかけなかった。
大きなお腹を抱えた奥さんが、氷雨君を追いかけていった。




