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竜のお世話係3

「すいません。ここ一番うしろですか?」


声をかけられて振り返ると、リズと同じ年ぐらいの女の子だった。

茶色い髪の毛のリズと違い赤茶色の目の大きな可愛い女の子だ。


「はいそうです」

「よかったわ。私、参加するの初めてで・・緊張してて。あなたも?」

「私も、竜が好きだから絶対にお世話係になりたいの」


リズが言うと、女の子が笑った。


「わかるわ竜、可愛いものね。私、マーシャル。13歳」

「私はリズよ。同じ年ね」


同じ年の女子だとわかるとマーシャルとリズはすぐに仲良くなった。

長い待ち時間も苦にならず竜の魅力について語り合っていると気づけば順番は次になっていた。

城の門の外から並んで3時間。やっと竜の飼育場まできたようだ。

大きな建物が並んでおり、時折竜の鳴き声が建物の中から聞こえてくる。


「緊張するわね」


ドキドキする胸を押さえて息を大きく吸い込むリズにマーシャルも興奮しながら胸に手を当てた。

採用の可否は竜が決めるということで、城の騎士に案内されて建物の中へと入る。

中には黒い隊服を着た竜騎士が数人おり、書類を見ているがあまりにも受験者が多いため少しうんざりしているようだ。


「えっと、君がリズさんですね13歳」

「はいそうです」


建物の中には竜が一頭藁が敷き詰められている中で座っていた。


「2頭いるうちの一頭目です。中に入って竜に近づいて顔見るだけで結構ですよ」

「見るだけですか?」

「そうです、竜との面接みたいなものなんで」


あこがれの竜に会えるとドキドキしながら竜に近づく。

よく見ると父親の竜よりも幾分若いようだ。

じっと目を見つめ合ってフンと鼻を鳴らして竜はそっぽを向いた。

リズには興味がないようだ。

書類を持っていた騎士が書類にチェックを入れて一言。


「はい結構です。お疲れさまでした」

「そ・・・そんな・・・」


竜に気に入られなかったんだ。

ショックを受けるリズに書類を持っていた騎士が苦笑しながら出口を指さした。


「まぁ、もう一頭いるんで。次頑張ってください」

「はい、ありがとうございました」


落ち込みながら頭を下げて、退出する。

外に出ると隣の建物に案内された。

隣の建物も同じような作りになっており、中には先ほどの団長もいた。


「お、きたなリズちゃん。これが次の新人竜だ」

「はい、よろしくおねがいします」


頭を下げて、中で座っている竜のそばに行く。

先ほどの竜より少しまた小さく幼いようだ。

顔を見ると、竜が近づいてきてフンフンとリズの頭の匂いをかいでいる。

じっと耐えていると、べろりと長い舌で顔を舐められた。

ベドベドする唾液に顔をしかめてポケットからハンカチを出して顔を拭いた。

竜は顔を拭いているリズを見て歯を出して馬鹿にしたような顔をし、リズからハンカチを取り上げるとポイっと後ろに投げた。

明らかに竜に馬鹿にされていると思ったリズは落ち込みながら団長を見上げる。


「あの、これ馬鹿にされているの?」

「そんなことはないよ、気に入られてんだよ」


そう言ってがははっと豪快に笑った。 

私を落ち込ませないように言ってくれているんだとリズはますます落ち込んで頭を下げた。


「ありがとうございました」

「はい、では結果は後程お知らせしますので。お疲れさまでした」


団長の隣にいた騎士が丁寧に書類を書いてリズに挨拶をする。


「だめだ、絶対落ちた・・・」


よろよろしながら外に出て大きなため息をつく。

後ろから背中を叩かれて見るとマーシャルがニコニコと立っていた。


「お疲れ様。どうだった?」

「ダメみたい。最後の竜には馬鹿にされて終わったわ」

「そうなの?私は一匹目の竜はすごい仲良くなれそうだったけど2匹目はぜんぜん無視されたわ」

「きっとマーシャルは受かったわよ・・・よかったわね」


落ち込みながらかすれた声でいうリズにマーシャルは背中を叩いた。


「大丈夫よ。2匹目はたぶんリズのことを気に入っていると思うわよ」

「ありがとう」


慰めようとしてくれるマーシャルには悪いがとても気分が上がらない。

一つため息をついて、マーシャルに手を振った。


「もう帰るわね。またよかったら遊んでね」

「えぇ、もちろんよ」


憧れていた竜のお世話係。

もしかしたらなれないのかもしれない。

リズは落ち込みのあまり重い体を引きずりならがら家に帰ったのであった。


リズが竜のお世話係の面談から3日。

合格の通知が来た。

飛び上がって喜ぶリズに父のカジミールは渋い顔をしている。


「竜の世話なんて大変なんだよ。朝早いし、夜もご飯あげないといけなんだよ。それにまだ13歳なんて子供じゃないか」

「大丈夫よ。私ちゃんとできるわ」


自信満々に言うリズにカジミールはまたため息をついた。


「だってあいつの竜の世話なんだもんなぁ」


ぽつりといった父の言葉に母が目ざとく食いつく。


「あいつって、あの美形だって子?」

「そうだよ」

ぶっきらぼうに言うカジミールに母ハンナは黄色い声を上げた。


「いやだぁ、美形の息子ができるとかすごい楽しみねぇ」

「息子になるわけあるか!あいつすげー性格わるいからなぁ。リズ~いじめられたらお父さんに言うんだぞ。ボッコボコにしてやるからな」

「大丈夫だって。明日から頑張って働くわ」


リズは信じられない気持ちで合格通知を胸に抱きしめた。

明日から竜のお世話ができるなんてなんて幸せなのかしら。

今夜はとても眠れそうにないと思いながらあの竜のことを思い出す。

きっと仲良くなれるはず。

「お父さん。私頑張るわ」

「お、おう・・・」

カジミールは自分の娘が大人になったなとしみじみ思い一人涙した。



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