夢物語
それはとても寒く、道には2、3人ほどしか歩いていないような日のことで、僕はその道を一人歩いていた。後ろから誰かが叫んでいたようだがそんなことを気にする間もなく、ただ歩いていた。
目が覚めたときには僕は自分の部屋で寝ていた。部屋ではアラームの音が鳴り響き、下から母が僕の名前を呼んでいる声が聞こえる。しかし、僕はこの時間が終わるのを待っているかのようにぼーっとしていた。ただぼーっとしていたというよりはからだを動かす気がない感じだといった方がいいかもしれない。しばらくすると、母が部屋に入ってきて「遅刻するよ!」と怒鳴られ、そこから僕は動き始めた。時計をみてみると、午前7時を過ぎており、学校が始まるのは午前9時で僕の家から片道1時間30分かかるので、ぎりぎりの時間だ。とりあえずパジャマから制服に着替え、朝食、歯磨きを15分で済ませ、いつものバス停へ向かった。バス停に着くとそこには背の高い女子高生が一人不機嫌そうな顔で座っていた。僕は彼女のところまで走って行き、
「ごめん、待った?」
と聞いた。すると彼女は
「遅いよ!心配したじゃん!」
と答えた。
「ほら、早くバスに乗るよ。」
僕はそのまま彼女に引っ張られながらバスに乗った。
彼女は小学校からの幼なじみで、高校もたまたま一緒の場所だったので学校まで一緒に通っている。僕は昔から人見知りで周りから嫌がられていたが、その時に始めて話してくれたのが彼女だった。その時から僕は彼女の事が好きだったと思う。そして今日、僕は彼女に告白しようと思っている。
彼女と話をしていると学校のすぐ近くのバス停に着いた。そこから歩いて教室まで行き、授業の荷物を準備した後、僕はいつ告白しようか考えていた。考えた末、結局放課後に言おうと言う結論に至った。
昼放課に彼女の所へ行き、「放課後話があるから教室で待ってて。」と言った後、次の授業の準備をして席に着いた。放課後になり、帰りの準備を終わらせ、彼女に声をかけようとしたとき、急にしらない男が教室に入ってきた。男は彼女に用事があるらしく、無理に彼女を連れていこうとしたので僕が止めようとすると彼女が僕に振り向き、
「10分ぐらいしたら戻ってくるから。」
と言って教室を出ていった。
10分たっても戻ってこないので探しにいくと、体育倉庫から声がしたので行ってみることにした。近づいていくとだんだん声が鮮明になりその声が悲鳴だと言うことに気がついた。僕は走って扉まで行き、ドアを蹴破って入ってみるとそこには、服を無理矢理脱がされた彼女と下半身丸出しの男がいた。僕はその光景を見た瞬間、怒りのあまり男を殴り飛ばし、彼女の服と彼女を抱え教室まで走り出した。教室に着いた後彼女に服を渡し、「着替えたら教えて。」と伝え後ろを向きながら待った。
少しすると彼女から「もういいよ。」といわれ、僕は振り向いた。教室の時計はもう17時を過ぎており、話はまた今度にしようと言って今日は二人で帰った。
二人で道を歩いていると突然彼女が、
「今日はありがとう。」
と言って来たので、僕は恥ずかしくなって顔が赤くなってしまった。そして咄嗟に
「好きです!付き合ってください!」
と叫んでしまった。彼女は最初、とても驚いていたが後に、
「はい。私でいいのなら。」
ととても明るい声で返事をくれた。僕は一瞬頭の中が真っ白になった。そして何かの間違えだと思い彼女に、
「本当に僕なんかでいいの?」
と聞くと彼女は変わらず、
「はい。」
と言ってくれた。僕は嬉しくて一人はしゃいでいた。その後、僕たちは学校で付き合っていることが知られ、一躍話題になった。
僕たちが付き合い始めて1ヶ月がたったとき、彼女が突然学校に来なくなった。僕は心配に思い彼女の家にいくことにした。彼女の家につくととてもいつもの雰囲気ではないと察した。インターフォンを押すと彼女の父が出てきてくれた。僕は彼女の父に
「彼女、どうかしたんですか?」
と聞いてみたが、ただ黙ったままだった。僕はなにも言ってくれないことに腹が立ち、
「彼女に何かあったのなら教えてください!黙ったままではわかりません!」
と少し怒りぎみでいってしまった。すると彼女の父は、
「あまり言いたくなかったんだが.... 」
といい、彼女のことを話し出した。僕はその話を聞いてとても驚いた。彼女は現在、ここの一番大きい病院で入院中らしくもって後三日だと医者に言われたらしい。僕は一瞬嘘だと思ったが、彼女の父の涙を見てそれが真実だと言うことを思い知らされた。しばらくして僕は彼女の父に、
「明日、彼女に会わせてもらえませんか?」
と訪ねた。すると、彼女の父は少し考えた後
「わかった。明日うちに来なさい、病院まで送ろう。」
と言ってくれた。
翌日、僕は朝6時に起き支度を済ませ彼女の家に向かった。そこでは彼女の父が、もう出発出来るように車を用意していた。僕は一言
「今日はよろしくお願いします。」
といい、車に乗った。
病院に着き、彼女のいる部屋へ向かってまっすく向かった。彼女はまだ眠っていた。僕は彼女の変わりように驚きを隠せなかった。体は骨の形が見えるぐらい痩せ細り、たくさんの管におおわれていた。しばらくして彼女が起きた。彼女は
「来てくれたんだ。」
と話し出した。僕は
「うん。おはよう。」
と答えた。すると彼女は
「こんな見た目じゃ気持ち悪いよね?」
と言って来た。
「そんなことないさ!君はどうなろうと僕の好きな君さ!」
僕は咄嗟にそう答えた。
「ふふ、ありがとう。」
と彼女は言った。
「少し眠たいから私、寝るね。」
と彼女に言われたので僕は「おやすみ」と返し帰ろうとしたとき彼女が、
「君に伝えたいことがあるんだ。」
と言われた。僕が
「なんだい?」
と聞くと彼女は
「大好き」
といった。そして
「僕もだよ。愛してる。」
と答えた。すると彼女は静かに眠りに着いた。そしてもう起きることはなかった。
僕は人気のない道をただ歩いていた。彼女がなくなって1年が過ぎ、みんなの記憶から彼女がなくなっていても、僕はまだ心に穴の空いたままだった。昔二人で歩いた道を通る度にあれは夢だったかのような感覚になる。だけど、だからこそ僕のこの記憶は残しておこうと思う。彼女のことを忘れないように。
初めまして、仁といいます。
この小説を読んでいただき、ありがとうございます。
今回初めて小説と言うものを書いて、とても難しいと感じました。なのでちょっとおかしいところがあるかもしれないですが頑張っていこうと思っています。