33話 かくて彼らの名前は覚えられない
延期大変申し訳ありませんでした
翌日。
ミーシャが参加を表明した後もなんやかんやと騒がしく、収拾もつかなかったため、一旦解散して集まることにし、とりあえず皆落ち着いたようだ。
「えっと……なんだか顔ぶれが一気に増えたから、自己紹介頼むわ。名前と趣味を言ってくれ」
流石のロビンも一気に増えた人数に困惑しているようで、自己紹介を求める。
「俺はジャン・クラークです。ミーシャさんとは同い年で、一番仲がいいんです」
「あーうん、ジャンね。それで趣味を……」
「俺は、ウルド・シャーマンだ。ミーシャは俺の後輩で、俺のことを慕ってるんだ」
「ウルドね。それで趣味……」
「僕はアイク・トライブです! ミーシャさんの後輩で、一番大事にして貰ってます!」
「うん、アイクね。それで趣……」
「ボクはヲータク・カーターだお! ミーシャたんはボクの嫁なんだお!」
「なるほどね、それで……」
「ボクチン、シンジャー・カーターでござる。ミーシャちゃんは『みんなのもの』でござる」
「うん。それ……」
「今日ご紹介するのは、この私、タカータ・エルロンドです」
「すごーい、でもこの私、バイヤー・エルロンドをお付けしたらお高いんでしょう?」
「いえ、そんなことはありません! なんとこのエルロンド兄弟、二人合わせてイチキュッパ!」
「やすーい!」
「………」
誰がミーシャと自分の関係について語れと。
ロビンの頭にはそんな言葉が浮かんでは消え浮かんでは消え、しかしついには閉口してしまった。
「あ、あと私ですね。私はミーシャ・アルマデルです! ロビン様とはあんなことやこんなことをした仲なのです!」
「「「誰がロビン(さん)と自分の関係について語れと!!!」」」
そんな言葉が浮かんでは消えてもまだ足らず口から出てしまう三人。
なおロビンとミーシャのあんなことやこんなことについてはそんなに心配していない。
そろそろ慣れたのもあるが、ロビンが◯◯◯ことや△△△ことをする筈がないと言うのは3人が一番わかっているからだ。
(というかミーシャに手を出してるならリリーや僕に手を出してるはずだしなー)
(ほんとそれですよね〜。今更何を言われたって動じません〜)
(ん? なんで私だけその中に入ってないんですかね?)
((え?))
フー♪ ススー♩ と口笛を吹き始める2人。
全くこの3人のテレパス的な会話が聞こえない一同は、急に口笛を吹き出すリリーとアルマに困惑するばかりであった。
「って、急に口笛吹き出してびっくりしたがそれどころではないぞ! ロビン・ステッパーと言ったか! 貴様、俺のミーシャに何をした!?」
「そうだ! ミーシャさんと何をしたんですか!」
「ミーシャ先輩……まさかもう……」
「大人の階段のーぼるー……ハァハァ」
「君はまだシンデレラーさ……ハァハァ」
「このトクダネ、イチキュッパ!」
「やすーい」
ところがそうは行かないのは、ミーシャのファン達である。
このノリを嫌と言うほど経験してきたユナ、リリー、アルマにしてみれば何でもないことである。
だが彼らにしてみれば一大事だったりするのだ。
「いや何って言われてもなぁ……」
そしていつまでも学ばないこの男。
何を隠そうロビンである。
バッサリ、何もしてない! と言ってしまえばいいものを、『なんかしたかなー』みたいな感じで記憶をさぐったりするから事はややこしくなるのだ。
「そんな……ロビン様……私にあんなことまでしておいて、忘れたって言うんですか?」
そして火種を注ぐ天然たらし。
何を隠そうミーシャである。
しかもたちが悪いのはほとんど本気でこんなことを言っているところである。
これがまだ小悪魔的な所業であるならまだ話は単純なのだが、なまじ本気であるからこそさらにことは拗れることになる。
「いや、全然覚えがないんだが……」
「ひどいです! 私、初めてだったのに……」
そうして自分の両肩を抱くミーシャ。
こんなの何も知らない人からすれば、100人いれば99人は『ポトリ』と落ちる牡丹の花を思い浮かべることだろう。
現に想像した者たちがそこにいた。
「おい! 聞いてないぞ、そんなこと!」
「ミーシャさん! 今の話本当ですか!」
「ミーシャ先輩……そんな……」
「『ミーシャ、ひどいことをされたくなかったら言うことを聞きな!』『ああっ!』…ハァハァ」
「『ポトリ』……ハァハァ」
「はい! こちらのビデオ、牡丹が落ちる演出まで入って、お値段今ならイチキュッパ!」
「やすーい!」
男たちは動揺した。
その動揺っぷりといえば、後半の4人が心なしかコラボしていたような気がするほどだ。
いや実際コラボしていたのかもしれないが、そんなことを気にしてはいられない。
「えー……俺がミーシャにしたことなんて、薬の材料を採るために〈隠密〉とかの手ほどきをしたくらいだと思うんだけどなぁ」
「やはり覚えていらっしゃらないのですか……? 私、男の方と一緒にベッドに入ったのは、あれが初めてだったのに……」
「「「なん、だと……」」」
その発言に、今まで
(あー、僕たちも最初はこうだったなー)
(わかります)
(私も〜)
と思いながら傍観していた3人が一気に反応する。
ちょっと待てよ、と。
私たちだってロビン(さん)と一緒にベッドに入ったことはないぞ、と。
「あー! そういやそんなこともあったなぁ!」
そして純粋に懐かしい思い出を思い出すロビン。
面倒くさいことは好きじゃないのに、自分で面倒くさい方向に面舵いっぱいとる男がここにいた。
「「「どういうことですか!?」」」
「いやどう言うことも何も、ミーシャが選んだ部屋にたまたまベッドが一つしかなくて……」
「それでもロビンさんなら、床とかに寝ますよね」
「そうだそうだー」
「ユナ議員、言ってやってください!」
外野から野次が飛ぶ。
居眠りをしてる奴はいないので、勇者はここを見ても国会とは言わないだろう。違うそうじゃない。
「いや、それがな? なんでかしらないけど、床にはなんか訳の分からない、明らかに毒がある薬が溢れててさ……」
ああ、と。
女たちは思い出した。
そういえばこいつ、鈍感系だった、と。
「で、ミーシャが、しょうがないから一緒のベッドで寝ますか? って言ってくれたから、俺のポリシーには反するけど寝させてもらったわけだ」
「でも、初めてだったんですよ?」
「そうなのか? そういえば、ミーシャ、お前すごく寝相悪かったけど、あれ直ったのか?」
「なんなら試してみますか?」
「いや結構です」
ポンポンと交わされる言葉と、そんなに大した事情じゃなかったことに圧倒され、言葉を発することを忘れた男たち。
そしてその後ろでは、何やらプルプルと震えている女たちがいた。
「ん? どうした?」
そう問いかけるロビンの言葉も耳に入らない様子の女たち。
そして突然、バッ! と顔を上げ、口を開いた。
「「「そんな手があったのかーーーーーー!」」」
静かなユーグの街に女たちの声が響いた。
伸ばしておいてたいして話が進まないという。
ちゃんと次の話から進めて行きますので、どうぞご勘弁をm(_ _)m




