30話 かくて彼らは新たな仲間を求める
長らくお待たせしました
申し訳ありません
「うーん、考えれば考えるほどゴブリン生産法はよく作られているなー」
ロビンたちが正義の名のもとに特許侵害をしようと決意してから1ヶ月、事態は全くといっていいほどに進展していなかった。
ロビンの家は一人暮らしにしては無駄に広い。
これは単純に適当な空き家を買ったら、意外に広かっただけである。
それはともかく、ちょうどいいので空き部屋に研究機材が色々と設置されたのだった。
今日も今日とて、ロビンの家に集まり試行錯誤を繰り返す日々。
まあその多くを担っているのはアルマなのだが。
「そうなのか?」
ロビンがアルマの呟きに反応する。
大雑把な話ならともかく、細かい研究に関してはひとかけらの役にも立たないロビンとユナ。
かといって遊んでるわけにもいかないため、彼らは粛々と研究を眺め続ける日々を過ごしていた。
「そうなんだよー。現状、『最初の草』と『ヤーナの水草』の回復効果を発揮させるならゴブリン生成法が1番コストも手間もかからないんだー」
「あー、なるほど……。たしかにロビンさんがポーション飲めるポーションを作っても、高価だったら意味がないですもんね」
ユナが納得、といったように言う。
どれだけいいポーションを作ったところで売れなければ意味はない。
かと言って慈善事業でもないので、タダでくれてやると言うわけにもいかない。
であれば、もっと安価で、もっと衛生的な、生産方法を模索するしかないのだった。
「そうなんですよ〜。実際どう作ってるのかは見たことないですけど、ゴブリンには人件費がかかりませんからね〜」
ガチャ、と扉が開く音がして部屋に入ってくるのはリリー。
リリーはアルマが家に泊まるようになってから、ポワーンとした感じが少し薄れた。
………夜な夜なアルマの研究知識を長々と聞かされるためである。
始めこそロビンに泣きついてきたのだったが、今となってはその一端を理解できるほどになっている。
予想と斜め上の化学反応を起こしたリリー。
未だにちょっと現状を受け入れ切れていないユナがいるのは秘密である。
「アルマ〜、言われてた材料持ってきたよ〜! はいどうぞ〜」
そして見事に助手ポジを獲得していた。
ユナとアルマにしてみれば、
それでいいのかリリーーーー!
という心情であったのだが、当の本人はそんなに気にしていないらしい。
どのような形であれ、それでロビンさんの役に立てるなら嬉しい。
とそう言ったリリーに敗北感をユナは覚えた。
「敗北者……取り消せよ、今の言葉!」
「きゅ、急にどうした!?」
「あ、いえ……つい思い出しツッコミを」
「「「思い出しツッコミって何!?」」」
「あ、あんまり気にしないでください………。そ、それで? ゴブリンを使わないでポーションを生成する方法自体はあるんですか?」
なんとか話題を逸らそうとするユナ。
疑問は残りつつも、その心意気を買ってかうまく話題が逸れた。
「それがなー、あると思うんだどなー」
「なんでそんな微妙な感じなんだ?」
どうも歯切れが悪いアルマにロビンが疑問をぶつける。
「正直なところ、もう1人知識人が必要だなー。僕とジャンルの被らないタイプのやつだー」
「なるほどな、違うジャンルか………」
ロビンは頭をひねる。
だがあまりいい人は思い浮かばなかった。
「こういう時は……リリー、誰かいい人いないか?」
「えっとですね〜、まあ心当たりはありますが〜。でも誰がいいでしょうか〜?」
こういうときに、リリーはとても役に立つ。
というか日常役に立っているのだが、ここはリリーの独壇場だった。
彼女の培ってきた経験と知識がよく活きている。
「なるべくロビンの被害者がいいー」
「俺の被害者………?」
「こっちの話なんでロビンさんは気にしないでいいですよ?」
訝しげなロビンの疑問を切って捨てるユナ。
このあたり、ロビンの扱いをよくわかっているとも言える。
「あ〜! ならひとり、いい人がいますよ!」
「おお! 誰だ?」
「製薬ギルドのミーシャさんです!」
……………
製薬ギルドはポーション作成組合と同じ畑のようで少し異なる位置どりになる。
製薬ギルドの歴史は浅い。
その成立はポーション作成組合の成立の約20年後である。
そのとき組合と作るものが被らないように、自分たちの作るものに細かい規定を加えたのだ。
故に製薬ギルドは組合と同じようなくくりに見えて、全く違うものなのである。
その製薬ギルドといえば本部は山林の町、ユーグにある。
なんなら支部がないので本部をつける必要もないのだが、そこは見栄を張りたかったようだ。
ともかく製薬ギルドの本部にはギルド員総勢30名が日々穏やかに過ごしていた。
穏やかに。
「ミーシャさん! 今度僕とユーグリア山に薬草を採りにいきませんか!?」
「ミーシャ。街にお洒落なカフェができたんだ……。今度俺と一緒に行かないか?」
「ミーシャ先輩! ちょっと僕の作った薬見てもらえませんか?」
「ミーシャちゃん……かわええなぁ………」
「ミーシャたん……はぁはぁ………」
「これ、ミーシャさんが一昨年使ってたフラスコですよ?」
「でも、お高いんでしょう?」
「そんなことありません! これにミーシャさんが去年使っていたビーカーも合わせてサンキュッパ!」
「やすーい!」
日々を穏やかに過ごしていた。
では熱心に誘われている当のミーシャといえば、ギルドホームの窓際のイスに座り、窓に肘をついて黄昏ていた。
ユーグ随一の美女ともてはやされるミーシャはその様子もとてつもなく絵になる。
最近黄昏ていることが多いので、国中から画家が集まるくらいには絵になる光景だった。
「はぁ………」
(ロビン様は、私のことなんか忘れてしまったのかしら……?)
ため息をついて何を思っているのかと言えば、まるで彼氏に捨てられたけど忘れられない女みたいなことを考えていたのだった。
(あんなに私の心を弄んでおきながら………)
これに関してはロビンは無意識にやっていることなので、責任を取れと言われても困ることなのだが、そんなことは関係ない。
落ちてしまった恋の淵から抜け出すのは時間がかかるのである。
(いいえ、でももう忘れるべきなの。だってもう会うことなんてないんですから………)
実を言えば、ロビンと最後に会ってから約6ヶ月経ち、いい加減彼女の恋の病は快方に向かっていた。
当分ファーレンに行く予定はなく、ロビンももう結婚してもおかしくない、というか少し遅いくらいの年齢である。
私ががいないうちに、結婚してるかも。
そう思うのも自然であった。
だが、忘れもしない冒険者ギルドのギルドマスターであるミシュレの懸念。
ロビンという男の恐ろしさ。
【あのハーレム製造マシンは、何故か(無意識に)仕留めた女を手放さないのだ】
ふと、風の流れが変わった。
(あら? 風が変わった? 天気が変わるのかしら、不思議なこともあるものね……)
ミーシャは何気なく向こうの雲を見ようと遠くへ目をやった。
「うそ……! ロビン様?」
【女性の方が、そろそろ諦めようかな、と思う時期にかかると、何故かタイミングよく現れて、また恋の谷に突き落として去っていくのである】
「おーい! ミーシャ!」
ミーシャはいても立ってもいられずに、ギルドを飛び出した。
「あっ、ミーシャさん!?」
「ミーシャ、俺を置いてどこへ行くっていうんだ?」
「ミーシャ先輩!?」
「ミーシャちゃん!」
「ミーシャたん!」
「サンキュッパ!」
「やすーい!」
いろいろな声がかかるが、それらがまるで耳に入ってこないかのようにミーシャは駆け出す。
(あぁ……! ロビン様! 私のことを忘れないでいてくれたのですね………!)
【これにはどんな対策も意味をなさず、なんらかの補正が働いているとしか考えられない】
ミーシャは思わずロビンの胸に飛び込んだ。
「待っていましたわ! ロビン様!」
次の修羅場が幕を上げようとしていた……。
【】の中のセリフにピンと来ない方は、10話を見てください。
またヒロインが増える……これでラストかなぁ?
おすすめ小説の方も片手間に書いていますが、やっぱり時間がない……
というわけですいません、次の投稿は一ヶ月後となります。
2月下旬からは一週間に2回くらいを予定しています。
申し訳ありません。
これからもよろしくお願いします。




