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16話 かくて女たちは想う

 

「先程はとりみだしてしまったよー。すまないー」


「いえ〜私も挑発しすぎました〜」


「はぁ……」


 ニッコリと黒い笑みを浮かべ、握手を交わすリリーとアルマ。

 その様子を見てなんだか疲れるユナ。


「とりあえずお茶でもどうぞー」


 アルマはどこからともなく取り出してきたお茶をユナとリリーに出す。


「あ、ありがとうございます……」


 意外にも話し合おうとする姿勢を見せるアルマに、ユナは少し好印象を覚える。

 まあそもそも初手で首筋を切った相手の評価が少し上がったところで、決してプラスになるわけではないのだが。


「ありがとう〜」


 リリーはヒョイとお茶を取ると、近くにあった、這い寄る生き物Yの水槽にひっくり返す。

 数秒後、這い寄る生き物Yの死体が浮かび上がってきた。


「ヒッ……!」


「チッ!」


「あらあら〜、間違えて毒でも入れちゃったんですかね〜、ウッカリさん?」


 ニコーっと笑いながら、戻ってくるリリー。


「あー、ごめんごめんー。ちょーどユナの分でお茶っぱがきれちゃったから、お湯でといたらお茶の色になるマルセリアル(激毒)で代用しちゃったよー」


 ニコーと笑みを浮かべて返事をするアルマ。


「いきなりバチバチでいくんだ!?」


 先が思いやられる、とユナは頭を抱えた。



 ……………



「とまあ、それでですね。がっつり警戒されているアルマさんのイメージ向上をしようと思いまして」


 とりあえず、目下落ち着いたところで、ユナが話を切り出す。

 アルマとリリーのドタバタのせいで、なんだか落ち着いてしまったユナはアルマにも流暢に話せるようになっていた。


「そんなものは必要ないよー。僕は別にロビンとどうにかなりたいわけじゃあないしー」


「うそを言わないでください〜。どーせ、振り向いてもらえなかったらどうしよう〜なんて怯えてるだけでしょう〜?」


 提案を突っぱねるアルマをリリーがからかう。


「もう一度毒を盛られたいか?」


「無駄ですよ〜?」


 アルマはリリーをギロリと睨むが、リリーはそれを難なくかわす。


 先程アルマをちょっと助けてやろうと、ユナと意気投合したリリーはどこへ行ったのか。


 暗殺者だが普通民なユナはこの2人の会話にとてもじゃないが、ついて行けなさそうだった。


「とにかくっ! アルマさんだって、ロビンさんとどうなりたいとか無くても、意識されないのはいやでしょう!?」


 このままでは収集がつかなくなる、とユナは思い、強引に話を進めようとする。


「何を言ってるんだかー。ところでかくいう君たちは、ロビンに意識してもらっているのかー?」


「うっ………」


 しかし、その結果アルマに痛いところをぐさりと刺されることとなった。


「たしかに私たちも意識してもらってませんが〜、それはこれからどんどんアピールしていくので〜。でもあなたはアピールチャンスが少ない上、ロビンさんからなんだか恐怖されてるんですよ〜?」


「え………?」


 アルマが驚愕の表情を浮かべる。

 そこに勝機を見たリリーが、ここぞとばかりに攻め込んだ。


「気付いてなかったんですか〜?あなたがニヤッと笑うたび、ロビンさんはビクッとして、怯えていましたよ〜?」


「…………」


「いいんですか〜?本当にこのままで。どうにかなりたいわけじゃないと言いながら、言葉の所々で匂わせてみたり、ロビンさんの為にいろいろしてみたりしてるんでしょう〜?」


「…………!」


「このままじゃ、あなたの思いはずっと伝わらないまま、私たちのどちらか………いえ、私にとられてしまいますよ〜?」


「…………」


 驚きの事実を告げられ、顔が真っ青になったかと思うと、今度はときどきのアピールが全て見透かされていたことに対する羞恥で真っ赤になり、さらに目の前に敵がいるのだと見せつけられ恐れと焦りを抱き、再び真っ青になるアルマ。

 後方で待機していたユナはリリーのおぞましさに思わず一歩さがる。


「………ってくれ」


「はい〜?」


「でていってくれ!」


「はぁっ!?」


 出て行けというアルマに、リリーの呆れの混じった声が上がる。


「何を……あなた本当にこのままでいいんですか!」


「僕がいいって言ったらいいんだよ!」


「そこまで強情にならなくてもいいでしょう! あなたの反応を見れば分かります! このままじゃ嫌なんでしょう!?」


「うるさいうるさいうるさい! 人の心の中にズカズカと入り込んでくるな!」


 激しい言い合いになるリリーとアルマ。


 見るからに今の現状から抜け出したいと思っているだろうアルマを見て、なぜこれほどイライラしているのか、リリーには分からなかった。

 でも、それでもアルマがここで終わることを良しとしない自分がいたのだ。


「馬鹿なんですか! この分からず屋!」


「これ以上僕に関わるな! うざい!」


 過激になる言い合いにアルマがスキルを行使して、空中から薬品を取り出す。

 リリーも護身術スキルを行使し、空中から細い棒を取り出して構えた。


「あーーーーーもう! 2人とも落ち着きなさい!」


 一触即発、といったところでユナが制止にはいる。

 〈加速〉を使って2人の手から武器を取り上げ、安全な場所におき、アルマの肩を掴んで正面から見た。


「くっ……! はな、せ! あっ……!」


「離しません! う、うわっ!」


 尚も抵抗しようとするアルマと、床に落ちていた紙で足を滑らせ、もつれあいながら倒れ込むユナとアルマ。

 荒い息をするアルマと、今度こそユナは正面から見つめ合った。


「私はロビンさんのことが好きです。世界で一番好きです。誰にも負けないくらい好きです。アルマ、あなたはどうですか?」


 ユナはアルマに問いかける。

 目には涙を溜め、乱れる息を抑え、アルマは自分の思いを口にした。


「………っ! 僕だって……僕だって、ロビンが好きだ! 世界で、いやこの世に存在する全てのものの中で一番好きだ! 誰にも負けない!」


 さらにユナは続ける。


「私はロビンさんにちゃんと見てもらいたいです。ロビンさんに好きって言って欲しいです。ロビンさんに抱きしめてもらいたいです。アルマはどうですか?」


「僕だって……僕だって! 今のままじゃ嫌だ! ロビンに見てほしい! ロビンに愛してもらいたい! 

 ロビンと一緒にいたい!」


 ユナはうなずく。

 ここにいる3人、性格は違えど思うことは同じだ。


「なら一緒に頑張りましょう?」


 ユナはニッコリと微笑んだ。


「…………!」


 アルマは目を見開く。

 そしてゆっくりとうなずいた。



 ……………



「はぁ……なんだか疲れました〜」


「誰のせいだと思ってるんだー」


 アルマとリリーが睨み合う。

 ユナがアルマを説得してから約10分後。

 とりあえずお互い謝り、前のようなギスギスした関係では無くなったのだが、逆にフレンドリーに嫌味を言い合うようになった2人。


「ところでアルマ」


「んー? なんだいー?」


「私、まだ頸動脈いきなり切られたこと根に持ってますからね?」


 アルマの肩がビクッと跳ねる。


「いやー、あのときはすまなかったー。リリーのことは知っていたんだけど、ユナは知らなくてー、知らない女がロビンの隣にいると思ったらついー」


「私、嫉妬で頸動脈切られたんだ!?」


「まあ、死ななかったんだしー、ねー?」


 驚くユナと謝るアルマ。

 それをやれやれと眺めるリリー。


 なお、3人とも友達になり、全員名前呼びするようになった。


「じゃあ始めましょうかー。アルマ向上委員会〜」


「よ、よろしく頼む」


 乙女たちの秘密の会議が始まるのだった。



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