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12話 かくておっさんは錬金術師を訪ねる

 

「やあやあ、どうしたんだい?僕の大切なロビンじゃないかー」


「おう、久しぶりだなアルマ。それと俺を被験体としてみるのはやめてくれ」


 ニヤッとした笑みに迎えられるロビンたち。


 ロイク王国、迷宮都市リトレイア。

 その住宅街の一角………から隔離されるように対極の場所に作られた専用の研究所、ファレル研究所。


 その中の研究室が集まる棟………からも隔離されるようにそこから1番離れた棟にある研究室に、ロビンたちは来ていた。


「ものの見事に隔離されてんなあ……」


「天才とは孤独なものなのだよー」


 妙な調子のついた口調で返事をするアルマ。

 その目はロビンの後ろの2人を捕らえていた。


「それでー? あの2つは僕への捧げ物ー? ロビンからプレゼントしてくるとは積極的じゃないかー」


「んなわけないだろ」


 さらっと人をもの扱いするアルマ。

 リリーは一歩を踏み出し、自己紹介を始めた。


 アルマもSランクの錬金術師になるまでは、冒険者をやっており、素材なんかをバンバン乱獲していた。

 ちょうどリリーが受付嬢を始めた時期にも重なっているので、ギリギリ顔見知りである。

 なお、その時期からアルマはマッドであった。


「お久しぶりです〜、アルマさん。覚えていますか〜? 受付嬢のリリーです〜」


「んー。あー、あの天然爆弾かー」


 さすがSランク。

 最初からリリーの本質をちゃんと捉えていた。


「あ、あの、はじめまして。ロビンさんの弟子のユナと申します」


「ふーん。よろしくー」


「それでだ、俺らは今……」


 世間話等することもなく、ロビンはズバッと本題に入る。

 アルマとは冒険者時代、一時期随分縁があったので扱いはよく分かっている。

 とりあえず、こうして話は始まった。



 ……………



「へぇー、面白そうなことしてるねー」


「それでなんだが、ポーションの作り方に覚えはないか?」


「うーん、どうだったかなー」


 アルマは少しの間悩んだあと、


「確かこの辺りに試作品がー」


 と言い出した。


「えっ……試作品!?」


 ユナが驚きの声を上げる。

 アルマほどの天才ともなれば、すでにポーションのゲロマズさに疑問を持ち、いくつか気付いたことがあるのだろう。


「はいこれー」


 と、アルマは薄赤い液体を取り出した。


 ポーションは赤い。

 あまりにも色が薄過ぎたため、リリーが疑問の声を上げる。


「薄くないですか〜?」


「うーん………えいっ!」


 するとアルマが視界から消えて、ユナの背後に立っていた。

 そして、ユナの首筋を切り裂いた。


「ユナの血、げっとー」


「え、嘘………」


 ドバドバと流れる血に動揺するしかない一同。

 しかしアルマは血を採取すると、呑気にポーションを勧めた。


「ささー、これ飲んでー」


 もはやされるがままのユナ。

 ポーションを飲むと血が止まり、完全に傷が塞がった。


「………は?」


「………え?」


「あれ……?」


「んんー?」


 3人は完全にアルマのペースに呑まれ、立ち直るのにだいぶ時間を要したのだった。



 ……………



「これが僕の試作品キュアポーション、ポーションカイザーだよー」


「ポーションカイザー?」


「そー。まあ簡単に言えば、HPをMAX回復できる回復薬だよー」


 あのあと、混乱が極まって泣き出したユナをロビンがなだめ、アルマはユナに謝罪し、一から説明することとなった。


「じゃあこれ、ものすごい高価じゃないですか!?」


 無意識だが、高価と効果が掛かっていてなんだかうまい感じのユナの質問に、アルマは答える。


「うんー。まあこうなったのにはいろいろと理由があるんだけどー、金貨120枚はするかなー。ま、特許取られてる以上は、非売品だけどねー」


 さりげなく、金は取らないと伝えるアルマ。


「それでですね〜、私たち、ポーションの作り方が知りたいんですけど、教えていただけませんか〜?」


「それなんだけどねー、僕、ポーションの作り方知らないのー」


「「「は?」」」


 本日2度目の衝撃だった。



 ……………



「なるほど、それで金貨120枚ですか」


「そー」


 アルマの話では、ポーションのゲロマズさに自分でポーションを作った方がいいと勇んでポーション開発に乗り出したはいいが、味は向上したものの、HPは5しか回復しなかったり、逆に本家より酷い味になったこともあるそうだ。

 おそらく、根本的に作り方が違うのだろう、とアルマは言った。


 そこで、もっと回復力を備えた素材を使って回復力向上を目指し腐心した結果、沢山の回復素材を組み合わせて出来たのが、このポーションカイザーだそうだ。


 正式なポーションの作り方ではできておらず、超偶然の副産物だという。


 あまりにも素材に値段がかかりすぎるため、研究はカイザーが完成した時点で打ち切りになったらしいが。


「回復素材についてならいくらでも教えれるしー、機材とかも貸してあげるしー、面白くなってきたら僕も参加するけどー、作り方は自分たちで調べてー。ちょうどこの町にもポーション作成組合の支部があるしねー」


 アルマはそう言って自分の研究に戻っていった。


「………分かったか、俺がなぜアルマを頼るのにあれだけ悩んだか」


「分かりました………」


「なんか疲れました〜。もう今日は宿に戻りましょう〜?」


 3人はアルマの研究所から、宿へと戻っていった。


「………ポーション作成組合が故意に不味くしてるか確信がない、ですかー。少し現実を見せないといけませんねー」



 ……………



「お客様、手紙が届いております」


 今回はちゃんと宿は2部屋とった。

 リリーとユナはだんだん仲良くなっているはず、なので大丈夫だと自分に言い聞かせながらロビンは封を切る。

 実際、リリーとユナはなんやかんやで仲良くなっている。

 やはり一緒なんらかの作業をすれば、それなりに打ち解けるのは人間の性質だろう。


「アルマから? あいつ手紙出せたのか」


 随分とひどいことを言うようだが、ずっと引きこもって研究をしている人から手紙が来るとはそれくらいの衝撃なのだった。


 なお、手紙には「うちの研究所の地下道の調査、たのんでもいいでしょうかー?」と書いてあった。

 口語で。


「今度手紙の書き方教えてやらないとな」


 ロビンは決意した。

 そして、2人の部屋をノックし、ロビンの部屋に集まるよう指示する。


「アルマからこんな手紙が来た。一応いろいろとしてくれた恩はあるし、受けようと思うんだがいいか?」


「はい、大丈夫です!」


「問題ありません〜」


 と、リリーが言ったところでふと、気付く。


「リリーってどのくらいの強さなの?」


 例によって、ステータスがオープンされた。



 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 リリー・フェルナン 永遠の18歳 女


 HP118/118

 MP358/358


 筋力:か弱い乙女並

 知力:出来るキャリアウーマン並

 素早さ:身軽ですけど、軽い女じゃないですよ?

 敏捷:呼ばれたらすぐにでも!

 防御:他の男に弱みは見せません

 魔防:あなたに守られたい

 運:あなたと出会えたのが私の最高の運命


 スキル:会話術A レベルMAX 接待術A レベルMAX

 護身術S レベルMAX 計算A レベルMAX

 火魔法A レベル3/10 水魔法A レベル1/10

 風魔法A レベル4/10 土魔法A レベル2/10

 雷魔法A レベル3/10 氷魔法A レベル1/10


 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


 家事S レベルMAX

 料理S レベルMAX

 花嫁S レベルMAX



 ――――――――――――――――――――――――――――――――


「…………どこから手をつけていいかわからない」


「永遠の18って書くと、老けて見えるわよ」


「ええ〜」


 ユナと比較してもぶっ飛んだステータスに、もはやなんと言っていいかわからなくなったロビン。

 ユナが永遠の18にツッコんだことで、リリーは救われたのだった。


 強いて褒めるべきは、家事、料理、花嫁スキルの見せ方か。

 ユナのようにごちゃごちゃとせずにシンプルにまとめられていることで逆に注意を引きやすい。

 それを見てロビンが何を思うかは別の話であるが。


「まあ、いい感じに魔法まとまってるんじゃない?」


「最初から魔法使えって感じのMP量でしたからね」


 とりあえず、リリーの強さも把握できた―――と言われると把握できている気がしないが―――ところでいざ研究所の地下道に挑むのであった。



素材がわかったので作り方編に入ります。

ここからは少しずつ、ポーション以外の話も入れていきます。


大筋はもちろんポーション。



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