11話 閑話 長谷川圭太の苦悩
俺の名前は長谷川圭太。
特に取り柄のない高校生だ。
そんな俺は平凡な日常を過ごしていたある日、ボールを追いかけて飛び出していった少年を助けて、かわりに車に轢かれてしまったんだ。
この流れだと、なんだか霊界探偵になれそうな気がするんだけど、そうはならなかった。
俺は気付いたら見知らぬ白い空間にいたんだ。
そして目の前のとても綺麗な女の人が俺に話しかけてきた。
「ここは死後の世界、そして私は女神ライネス。長谷川圭太、あなたは車に轢かれて死んでしまいました。しかしあなたは最後にとても素晴らしい善行を為しました。そのため異世界で2度目の人生を送ることができます」
なるほど……どうやら少年漫画展開ではなく、ラノベ展開になるようだ。
「しかし、転生することになる世界は今のあなたのスペックではすぐに死んでしまいます。そこで、あなたには特別にいくつかの力を授けておきました。その力を使って次の世界では楽しく生きてください」
そうして、俺は転生する……と思ったところで、体がぐいっと引っ張られる感覚。
これは把握してないらしく女神様も動揺する。
「えっ……? これは!? 別世界からの干渉!?」
そして俺は意識を失い、気が付いたらまた見知らぬ灰色の空間にいた。
目の前には見知らぬダンディな男性。
「長谷川圭太。お主はワシの管轄する世界から呼び出された。今ワシの世界は龍王というものが世界を支配しておる。お主にはそれを倒して欲しいのじゃ。もちろんそのままで行かせるわけには行かん。そこでじゃ、お主にはいくつかのスキルを授けておく。きっと役に立つじゃろう」
そう言って、男神は俺を異世界へ送り出し……ん?
……なんだか身に覚えのある感覚がする。
「なんじゃ!? 他の世界が干渉してきておるじゃと!? まずい……このままでは!!」
そして俺はまた意識を失った。
毎度お馴染み見知らぬ空間、見知らぬ女神。
「長谷川圭太。あなたは私の世界から召喚されました。とはいえこの世界を生きるのは大変でしょうから、いくつか特別にスキルを授けておきました
で始まる異世界召還。
今回こそはうまく行け。
そう強く願ってやっと俺は、異世界に召喚されたわけだ。
……………
そしてこれが俺の初期ステータス。
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ケイタ・ハセガワ 17歳 男
HP23/23
MP18/18
筋力:34
知力:28
素早さ:30
敏捷:26
防御:18
魔防:13
運:58
スキル:全魔法S+ レベル1/20 全強化S レベル1/10
気配操作S レベル1/10 王殺術S レベル1/10
正体看破S レベル1/10
アイテムボックスS レベル-/-
勇者S レベル1/10
パッシブスキル:「オールスキルS化」
「成長2倍」「スキル獲得簡略化」
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どうだろうか。
ちなみにこの後、いろいろあって仲間も増えた。
そのとき知ったのだが、このスキル群はぶっ壊れだそうだ。
ところで俺はこの国、ロイク王国にこうして召喚され、世界を魔王の手から救って欲しいと言われたわけだが、俺の正体看破Sで王城の中にいてはいけないものがいると分かった。
今のままじゃそいつには勝てないから、とりあえず旅に出たってわけだ。
……………
成長2倍はすごい。
瞬く間に俺のステータスが強化されていくのを感じた。
だがそれより異常なスキルの取り合わせがあった。
スキル獲得簡略化とオールスキルS化だ。
スキル獲得簡略化は、例えば頭の中で足し算をしたとしよう。そしたら算術スキルが手に入る。
剣をふれば剣術、矢を射れば弓術スキルが手に入る。
そしてオールスキルS化。
これによって手に入ったスキルは全部即Sクラスになるのだ。
もしかしたら、俺、最強主人公になるんじゃね?
……………
初めてダンジョンに潜る。
なんだか冒険者ギルドでダンジョンの地図が売られていた。
一枚買って見てみると、やけに細かいことまで書いてある。
………ここまで丸裸にされたらダンジョンもたまらんだろうな。
とりあえず潜ってみたが、力をつけすぎたようだ。
1日でダンジョンを踏破してしまった。
……………
疫病に襲われているある村に魔王軍の襲撃があった。
その村出身の美人な少女、イルサと共に魔王軍を倒し、村を疫病から救った。
イルサはどうやら俺に惚れたようだ。
こういうのは無自覚系の方がいいんだったかな?
イルサが俺の旅に加わった。
……………
王城で少し優しくした姫、ハンナが俺も所に来た。
どうやら俺に惚れているようだ。
世の無自覚系主人公とやらは、ここまでしてくる女の好意に気付かないというが正気だろうか?
ハンナが俺の旅に加わった。
……………
3人でいくつかのダンジョンを踏破する。
だんだんダンジョンの難易度も上がってくるが、まだまだ余裕である。
少しした町で、奴隷の女の子が虐められているのを見かけた。
その子は獣人だった。
その後町に襲いかかる魔王軍幹部との戦いの中でその獣人の子を助け、運悪く主人が死んでしまったためその子は俺の奴隷になった。
その獣人の名前はエマ。
………そろそろチーレム主人公と言われる奴になっただろうか?
……………
エルフの里でドジっ子ボインエルフ、リーナを助けた。
ちょうど大挙してエルフの里に攻めてくる魔王軍。
俺の行く先々に魔王軍が襲来するのは、某少年探偵のように、行く先々で殺人が起こるようなものなのだろう。
どうやらリーナは俺に惚れたようだ。
この流れ何回目?4回目か。
リーナも俺の旅についてきた。
このあとエロハプニング多数。
本当にあるんだね。お風呂で遭遇に、触手の罠。
文句ひとつないハーレムですな。
……………
どんどんダンジョンのレベルが上がっていく。
だんだん回復魔法が必要になってきた。
ハンナが一応ヒーラーを担当しているが、ダンジョンのレベルが高すぎて回復が間に合わない。
「ケイタ! ポーションです!」
ボス戦。
異世界お馴染み、ベヒモスさんである。
ベヒモスの謎ブレスで同時に大ダメージを受ける俺とエマとイルサ。
後方でサポートに回るリーナとハンナは協力してベヒモスの妨害と、俺らの回復をする。
だが、あまりの大ダメージに全員の回復が追いつかず、ベヒモスの足止めもそろそろ無理が来ている。
ハンナはとっさの判断で俺にポーションを投げ渡した。
「ありがとう! ハンナ!」
ポーションを一気にあおる。
「オエエエエエエエェェ…………」←イマココ
「「「「ケイタ!?」」」」
口の中いっぱいに酸味と辛味と苦味が広がり、喉から鼻に抜ける刺激臭は汚物のソレと同じだった。
くそっ……なんだこれ……この世界、ポーション不味すぎるだろ。