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私の体験談  作者: アマチュアーン
2/2

その1

まずはジャブ。

 これは某温泉旅館にいた時の話。


 もう、十年以上前でしょうか。


 まだ二十歳そこそこで、何を思ったのか無計画旅行に出ました。


 海外をとも考えましたが、私はヘタレな上、当時は9・1・1の影響で海外は危ないと思い、国内を選択しました。

 更におバカな事に冬場に出立。『寒いから南』と安直に選択。


 大阪のアパートを引き払い。荷物は実家にドーン。

 手元には数枚の着替えと、財布に五万円と万が一の予備の二万のみ。


 今思うとアホですね。


 寝袋もテントも無し。

 格好も旅をする格好でありませんでした。

 

 それでも伝を頼って大阪から脱出しました。

 そして直ぐに、自分のボカに気付きました。


 なんと軍資金の五万や身分証。携帯まで荷物と一緒に実家に送っていたのです。

 

 当時、新品財布に変えたばかりで、現金やその他諸々を移していました。

 しかし私はその事を忘れて、新しい財布を実家に送り、古い方の財布を持って旅に出た訳です。

 

 そこで私は、大阪を出て直ぐ近場の温泉地に移動して、日銭を稼ぐ事にしました。


 温泉地に着いたら着いたで、中々大変でした。

 身分証はない。見た目は怪しい。

 格好も平服でしたし。

 犯罪者と勘違いされて、警察沙汰に成りかけました(笑)


 それが縁で、無事温泉旅館に住み込みで働く事になったのです。


 私の業務は、朝食の片付けと清掃がメインでした。

 たまに調理場の手伝いもしてました。


 結構ハードでしたが、二週間もすると馴れるものです。

 調理場の人や中居さんとも、打ち解ける事が出来ました。


 そんな時ですかね。


 ある噂話を聞きました。

 『旧館の風呂場には出る』

 と耳にしたのは。



 要らぬ好奇心がムクムク湧きますね。

 ヘタレでも二十代。

 威勢だけは良いです。


 という訳で、夜中に若い連中と共に(ヘタレは群れます)旧館の風呂場に向かいました。


 旧館と言っても、建物こそ古いですが、中身は改修工事もされているので、不気味さは一切ありません。


 もう気軽なものです。


 そんな感じで、群れたヘタレ達は、旧館の風呂場に突撃したのです。

 流石は温泉旅館です。


 出ると噂されている露天風呂も中々趣のある造りをしており、間接照明で薄暗くありましたが、それが又風情を醸し出していました。


 私達ヘタレ達は目的を忘れて、夜中の露天風呂を満喫しました。


 若い連中が揃うと騒がしいものです。

 十分程でしょうか。

 騒いでいると露天風呂に人が入って来るのが見えました。


 旅館の従業員ですので、直ぐに『マナー良く』入浴している風を装いました。

 ぶっちゃけると旧館は混浴でした。

 野郎どもの心はウキウキ&緊張で一杯です。


 しかし世の中無情なものです。


 入って来たのは、オッチャンだったのです。

 胸の代わりに腹の出たオッチャンだったのです。


 あの残念感と安堵感の入り交じった空気は、何とも言えませんね。


 オッチャンもそれを感じたのか、申し訳なさそうにしてました。

 

 まぁ、若い野郎が揃って肩を落としているので、丸わかりです。


 それ以来です。

 私は旧館の露天風呂が気に入り、夜中の露天風呂が癖になりました。


 そのオッチャンとは、滞在客な様で、露天風呂で頻繁に遭遇しては、ポツポツと会話をする様になったのです。


 オッチャンとの裸の付き合いは、私の軍資金が貯まる三ヶ月ほど続きました。

 寒さも弱まる三月の末に、私は旅館を後にしました。


 そして気が付いたのです。


 そもそも滞在客なんてのは居ないのです。

 いたとしても一週間前後。

 三ヶ月もの滞在する客はいません。

 外来の受け入れは夜の十時迄。

 私の入浴時間は、夜中の零時前後。

 例外で受け入れたとしても、新館の方に案内します。


 当然、従業員にも見覚えはありません。


 さて、頻繁に風呂で遭遇したオッチャンは一体誰なのでしょうか?


 何と無く、既に故人である創業者に似ていたのは、私の気のせいでしょうか?

 

 真相は解りません。


 因みに、その旅館は今でも営業しています。


 因みに、オッチャンとは、怪しい関係ではありません!

 私はノンケだ!

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