スペルのお勉強
エルはお使いを終えた帰り道、賑やかな街道を歩いていた
「わーーい」
「こら!そんなに走ると危ないわよ!」
「うっ」
少女がぶつかってきた
年は3つほどだろうか。
肌は人間のそれと変わりないが、頭には犬の耳のようなものが付いている
見た目こそ人に近いが、この子もあの肉屋のおじちゃんと同じ獣人なのだ
獣人にもこの子のように人に近い者やおじちゃんのように獣に近い者などさまざまなである。
「ごめんなさい」
目に涙を含みながら謝ってくる。
ごめんなさいがしっかりと言えるいい子だ。
「こちらこそごめんね?大丈夫?」
「うん。大丈夫」
子供の母親が駆け寄ってくる
「こら!だから危ないって言ったでしょ!」
「う...ごめんなさい」
「僕、ごめんなさいね」
「いえ、僕も不注意だったので」
「しっかりしてるわね!一人?ってあら」
「エユリカさんの所のお子さんじゃない!どうりでしっかりしてるわけね!」
まただ母はもしかすると有名人なのかもしれない
「母のこと知ってるんですか?」
「そりゃもちろんよ!大魔導士エユリカ様でしょ?知らない人の方が少ないわよ?」
「え?」
だ、大魔導士?
お母さんはやっぱりすごかったんだ
大魔導士と呼ばれているならあのレベルも頷ける
しかし、驚いた...確かに母と出かけたときはいつも何かと声を掛けられていたが
そういうことだったのか...
そうと分かれば早く帰って魔術を教えてもらわねければ!
俺が最強の勇者として名を轟かせるのも、そう遠くない未来かもしれない!
「あ、あの僕そろそろ行きますね」
「あらそう?お母さんによろしくね」
「では失礼します」
エルは家まで駆け足で帰った
「ただいまーー!」
「お帰りなさーい、早かったわね!」
「うん、早く教えてよ!!」
やっと大魔導士の母に教えてもらえると思うと
期待で胸がはちきれそうだ!!
「はいはい、そんな焦らなくてもちゃんと教えてあげるわよ」
「じゃあ、さっそく始めましょうか!」
「そこの椅子に座って」
促されるまま椅子に座る
「では、魔術の授業をはじめます」
「よろしくお願いします!」
「えーっとじゃあまずは基本から
まず、魔術は大きく6つの属性に分けられているの
火、水、風、土、光、闇これが基本の6属性ね
そして人にはそれぞれ適性の属性があるの
私の場合は水が最適性でその次が光、逆に風や闇なんかは少し苦手なの
まずは、その適正を確かめるわね?」
そう言って母は小さな無色透明な石を取り出す
「これを手の上に置いて魔力を流し込むの」
すると母の手に置かれた石が眩い光を放つ
青白いその輝きはまるでオーロラの様である
「はい、じゃあ次はエルね」
忽ちその石からは光が消え元の無色透明な石に戻り
母からその石を受け取る
「少しコツがいるから最初は難しいかもしれないけど、意識を石の中に流し込む感じよ」
なるほど...意識を流し込むか。転生したときのあの感覚に近いのだろうか?
あの時は流し込むと言うより流れていったという感じだが...
石に集中し意識を流し込む
石が黒く染まり闇の中から光が漏れだす。
だが母のと比べると、かなりしょぼい。
「あら、上手ね!」
「珍しいわね、闇と光の適性が同時に出ているわ
闇と光は対極の属性なのだけど...」
何?光と闇だと!絶対強いやつじゃん!かっけー!
もしかして俺には魔術の才能があったりするのか?
「最適性は光の様ねエルは何の属性の魔術を獲得したの?」
「えっとね、闇魔術!」
「闇魔術ね、それなら適正属性だからレベルも上がりやすいはずよ!」
「次は魔術を実際に発動していくわよ!」
「発動の基本はいつもお母さんがやってるから分かると思うけど
まずは「目録」と詠唱するすると使える魔術が表示されるはずよ。やってみて」
「うん、目録!」
闇眼
「どう?今使える魔術が表示されているはずよ」
「闇眼って出てるよ」
「うんうん、次は選択「選択チェック 闇眼」これで発動するはずだけど今は、一旦保留にしておきましょう
目録は時間がたてば閉じるけど、すぐに閉じたいときは「消去」で消せるから試してみて
「分かった、やってみる!...消去」
表示が消えた...鑑定の表示もこれで消せるのだろうか
いつもは時間で消えるまで待っているのだが
「魔術というのは、その人の魔力を使って消費するの。
だから技能と違って魔力が無くなれば使えなくなる。
でも技能では出来ない能力の重複が可能になるからその分、可能性は幅広いのよ」
なるほど能力の重複か...魔術ってすごい!
もう一度転生できるなら職業は魔術師を選んでもいいかもしれないな。
「じゃあ、そろそろ実戦に入るから出かけるわよ!」
「え?どこ行くの?」
「お母さんは、闇魔術はあまり得意じゃないから実戦を教えるには適任じゃないわ
だから、闇魔術をよく知っている人の所へ行くわよ!」
ま、まさか...