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魔術を目指して

朝日が窓から差し込みエルの顔を照らす

家中に響く大きな声

「行ってきまーす」


エルはベッドから起き上がり、窓を開け、手を振る

「お父さんいってらっしゃーい!」


「すまん起こしちまったみたいだな、行ってきまーす」


空は晴天、吹き込んでくる風は優しく温かい


ゴブリンに襲われてから3日が経った。

今思い出しても恐ろしい、まさに死を体験したかのような気分だ。

だがそれもこれも無駄だったわけでは無い。

Lvも上がり様々な能力を獲得できたのだ。

その1つが「闇魔術」

そう、今日は母に魔術(スペル)を教えてもらうことになっているのだ


エルは弾むように部屋を出て母のいるリビングに向かった

机にはいつものように見るからに美味しい朝ご飯が並んでいる

「おはよー」


「おはよう。ご飯できてるわよ」


「うん!お母さん!今日、魔術(スペル)を教えてくれるんだよね?」


「ええいいわよ、でもその前にお使い頼めないかしら?」


「うん!いいよ!」

魔術(スペル)を教わる授業料がお使いなら安いものだ

「何買いに行けばいいの?」


「これお願いできるかしら?」

そう言って母は一切れのメモを渡す

そこには食材の名前が並んでいる。そして最後に「魔法水」と書かれた文字

...あの店に行くのか...あの店に行くのは少し気が引ける

だが、これも一つの修行だと思えばなんてことはない!


朝ごはんを食べ終え、お金をもらい、町の端にある家から中心街へと足を運ぶ

細い通りを抜けると店がずらりと並び賑やかに人の声が飛び交う


えーっとまずは...


「おー!エルじゃねーか!今日は1人かい?」

声をかけてきたのは肉屋のおじちゃんだ。


「うん、お使い頼まれたんだ!」


「そりゃえらいなー!」

体格がとても大きく、毛深い。毛深いなんてものじゃない、全身毛だらけである。

当然と言えば当然だ。

なんせこのおじちゃんは獣人なのだから。

このおじちゃんだけが特別なわけでは無い。

辺りには獣人はもちろんエルフやドワーフなどの亜人もたくさんいる。


初めて見たときは驚いた、と言うよりも感動したことを覚えている。

まさに想像通りの異世界!ヒャッホ―――!!

そんなことを考えていた頃が懐かしく感じる。

今では何の違和感も感じなくなってしまった。

慣れというものは恐ろしいものだ…


「今日も何か買ってくかい?サービスするぜ?」


「えっとじゃあ、オーク肉下さい!」


「あいよ!いつものやつね!」

そう言って大きな手で手際よく肉を袋に入れる

あの大きな手でよくあんなに繊細な動きができるものだなー。


「まいどあり!じゃあなエル!お母さんにもよろしく言っといてくれ!」


「うん、バイバイ!」

よし肉は買ったからあとは野菜と魔法水だな...

あの店は最後にしてまずは野菜を買いに行こう


それからいろいろな店を転々と回る

そのたびにいろんな人に声をかけられる母と来ていたときもいつもそうだった

しかし、話しかけてくる人は最後に決まって

「お母さんによろしく」と言うのだ

理由は分からないが母はちょっとした有名人らしい...


そんなこんなで食料は全て買い終えた

大通りを抜け狭くなっていく路地裏を進む

残すは...

エルの目の前には他の店とは明らかに違う怪しげな建物が手招きするように建っていた

これも修行、修行なのだ、、

勇気を出し扉の取っ手に手をかける。

いざっ!

うーん、やっぱり止めとこうかな...

その瞬間ドアが独りでに動きだし

扉の中から人影が飛び出す。

その影はエルを店の中に引きずり込む。


「うわっ」

その影が絡みつき、エルの体を締め付ける

「や、やめろ!!」

こ、このままでは!やばい!


ぼふっ

柔らかい何かがエルの顔を覆う

い、息ができない...


「エル坊ー!会いたかったぞーーー!」

「また大きくなったんじゃないか?」

「エユリカから聞いたぞ今日は一人でお使いなんだってな?エル坊は本当にいい子だなーー!」


「う、ううひい(く、苦しい)」


「そうかそうか!そんなに嬉しいかー」

「お姉さんもエルに会えてうれしいぞー」

「エル坊ならいつでも大歓迎だからな!何なら毎日来てもいいんだぞ?」

「そうだ!エル坊!魔術(スペル)使えるようになったんだってな!エユリカじゃなくて私が教えてあげようか?子供は遠慮しなくてもいいんだぞ?」

「お姉さんはエル坊の言うことだったら何でも聞いてあげるからな!」


「マリーさん、エル君窒息死してしまいますよ」


「え?」

「うわーーーごめんエル坊!!!嬉しすぎてついやってしまったーー!」


「ゲホッゲホッ」

あっぶねーエミルさんがいなかったら死ぬとこだった。

天国が見えた気がした...


ー「死を知る者」がLv.8になりましたー

ー「自動回復」がLv.2になりましたー


嘘だろ?「死を知る者」のレベル上がっちゃったよ!

このデカ乳、凶器過ぎるだろ!だから来たくなかったんだよー。

早く魔法水だけもらって帰ろう...

「あの…マリーさん、魔法水もらえますか?」


「え?あーそうだったな。はい、これ」


「ありがとうございます」


「それとエル坊!私が直々に魔術(スペル)教えて...

「マリーさん!エル君困ってますよ!」


本当に忙しない人だ

「あのー、僕もうそろそろ...」


「えー、もう帰っちゃうのか?もうちょっとゆっくりしていってもいいんだぞ?」


「お母さんも心配しますし...」


「そうか?残念だなー。よかったら明日も来てもいいんだぞ?」


「明日は難しいかもしれないですけど...」


「えーそんなこと言うなよー」

ぼふっ。またマリーの胸がエルを襲う

「うっ」


「マリーさん!!!」


「わー!ごめん!つい愛しすぎて」


そんなことでいちいち窒息死させられては命がいくらあっても足りない

早いとこ逃げ出そう...

「じゃあ僕帰りますね!ありがとうございました!」


エルは逃げるように店を飛び出す


「え、もう帰っちゃうの?

エル坊また来いよーー!」


はぁ。疲れた。エミルさんがいてくれて本当に良かった。

もしいなかったらと考えるとゾッとする。

死にかけもしたが、何とかすべて買い終えた。

だが、帰るまでがお使いと言うものだ

早く家に帰って母に魔術(スペル)を教えてもらおう!


楽しみだ!

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