初!魔物との闘い
転生してから8年が経つ頃。
朝焼けの空に剣の音が鳴り響く。
森の中に人影が2つ。小さな影と大きな影。
小さな影は大きな影に向かって突進する。
エルは剣に力を込め切りかかる。
「うりゃーーー!!!」
だが、その力は遠く及ばず、軽々といなされる。
「どうした!そんなものか?」
高らかに笑いながらエルの攻撃は全て受け流される。
剣を握り直し、構える。
「まだまだー」
そう叫びながら右足を強く踏みこみ全力で切り込む。
ー「剣士」がLv.10になりましたー ー「剣術」がLv.10になりましたー
全力の一撃だ!!!
しかし、またしても受け止められてしまう。
エルは力尽きたようにその場に倒れこむ。
「お!今の一撃はなかなかよかったぞ!」
余裕綽々な表情でエルを見下ろし、腰に掛かった鞘に剣を戻す。
「よし、じゃあ今日は、ここまで!」
「はー、父さん強すぎだよー」
そう、この人は父である。
父は国の騎士団に所属している。だから、強いのは当たり前である。
だからこうして、毎朝この森で稽古をつけてもらっているのだ。
その甲斐あって、さっき「剣士」「剣術」共についにレベルが10になった!
よっしゃーーー!!
上半身を起こし父の方を見る。
「父さん!剣術、レベル10になったよ!!」
「おー!そうか!ついにか!」
そう言って、父は笑顔で俺の頭を掻きなでる。
「うん!!」
嗚呼、やっとだ「剣術 Lv.10」ここを目標にずっと鍛錬してきたのである。
「なら明日からの稽古は魔物狩りだ!」
「はい!!」
ついに明日から魔物狩りが始まる!
魔物と言っても初めはスライムなんかの弱いものだが、
これはチート能力をゲットできるかもしれないチャンスなのだ!!
この世界では魔物を倒すことによって技能や呪文を獲得できる。
それに称号を獲得することも稀にあるらしい。
未だに全く役立たずの「鑑定」もレベルが上がるかもしれない!
よし!明日から魔物倒しまくるぞーー!!
そんな期待に胸を膨らませながら森を抜け、町はずれに在る家に帰宅する。
家の前ではエプロンをつけた母が、花に呪文を使って水をやっている。
日常的な風景だ。
「ただいまー」「ただいまー」
父と声を揃えて母を呼ぶ
「おかえりなさーい」
「まー、エルは今日もドロドロね」
微笑みながらいつものように洗浄で俺の服を洗浄する。
「母さん!今日ね、やっとね、剣術がレベル10になったんだよ!!」
こうやって子供のふりをするのも、もう慣れたものだ。
「あら、じゃあ明日からは魔物をやっつけに行くのね!」
「でも、お母さん少し心配だわ…」
「父さんが一緒なら大丈夫だよな!エル!」
そう言ってまた父はまた俺の頭をわしゃわしゃと掻きなでる。
「うん!お父さん強いもん!」
「そうね。お父さんは強いものね!」
そう言って微笑む母の顔にはどこか不安が残っているような気がした。
その日は父の仕事は休みだったらしく、一日中魔物のことについて話を聞いた。
この世界の魔物はF~Sでランク付けされているらしく、明日倒しに行くスライムはFランクに属しているのだそうだ。
ランクの枠に入らない魔物もいるらしいが、それは「天災級」と呼ばれ人の手には負えない存在のようだ。
さらにその上にはこの世にいるかどうかも定かでは無い、人知を超えた「伝説級」と呼ばれるものがあるようだ。
だが「天災級」や、まして「伝説級」になど普通に生きていれば遭遇することはまず無いらしい。
そして、そういった魔物を倒したり、迷宮(ダンジョンの様なもの)に潜ったりする「冒険者」と呼ばれる人たちがいる。
これはほとんどの人が通る登竜門的なものらしい。
ここで様々な能力を身に着け他の仕事に就いていくそうだ。
中には、一生「冒険者」として生活している者もいるらしいが、それはギルドの存在が大きいみたいだ。
俺はこの稽古を終えたら「冒険者」として旅に出ることになるらしい。
そんな話を聞き、ワクワクが治まらないエルは少し睡眠不足で翌朝を迎えるのだった。
まだ朝の太陽が顔を出し始めた頃
「よし!行くか!!!」
父はいつもと変わらぬ面持ちでそう言う。
二人はいつも稽古していた場所を通り抜け、森の奥へと進んでいく。
森の背はだんだんと高くなっていき、出てきたばかりの朝日を遮る。
薄っすらと暗くなりいつもと表情を変えた森に一歩また一歩と足を踏み出す。
やがて木の葉の隙間から日の光が差し込んだ頃。
「この辺でいいな!!」
「お!いたいた」
そう言って父は木の陰に視線を向ける。
スライムだ!!よく見ればあっちにもこっちにもスライムがいる!
青や緑いろんな色のスライムがいるようだ。
鑑定してみる
スライム
やはり名前しか表示されない
「まずは父さんが手本を見してやる!」
そう言ってゆっくりと近づき剣を片手で振り下ろす。
バシュッ!ワンパンである。
スライムは弾け、そこに残ったのは小さな光る石。
「簡単だろ?で、これが魔石だ。」
そう言ってその光る石を躊躇なく拾いこちらに放り投げる。
俺はその石を恐る恐る手に取りじっと見つめる。
「綺麗だね!!」
その石から放たれている光には小さいながらも溢れ出す力を感じた。
引き込まれるようにじっと石を眺めていると。
「エル!今度はお前がやってみろ」
剣でスライムの方を示しながらにっこりと笑う。
「うん!やってみるよ!」
そう言って腰に下げた剣を力いっぱい握る
昨日と同じように右足に力を込めスライムに全力で切り込む。
パシュッ...やったか??
だが、まだ弾けない。
もう一度切り込もうとした瞬間、スライムが突進してきた
「うわっ!!」
ペチッ...
全然痛くない...弱っ!!
流石、魔物界最弱と呼ばれるだけあるな。
だが、そんな最弱の魔物を一撃で倒せなかった俺は...
その後もう一撃、もう一撃と切り込む。
そして4回切り込んだところでやっとスライムが弾けた
やっとか...
ー「加速 Lv.1を獲得しました」ー
!?
一体倒しただけで新しいスキルを獲得した!?
まさかこんなに簡単に獲得できるとは思っていなかった。
「父さん!「加速」獲得したよ!!」
「お!そうか!なら、あそこのスライムに使ってみろ!」
「やってみる!」
また剣を握り右足を踏み込む、と同時に叫ぶ
「加速!」
すると体が軽くなりさっきよりも少し速くなる。
パシュッ
「加速!」パシュッ
「加速!」パシュッ
「加速!」パシュッ
ー「加速」がLv.2になりましたー
今回は新しい能力は獲得できなかった。
だが、「加速」これは使える。速度上昇の効果が見られる。
詳しくはわからないが使える技能であることは間違いない!
「いい感じだな!!よし今日は20体を目標にする!」
「はい!」
よし!やるぞーーー!
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ
ー「加速」がLv.2になりましたー
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ
ー「剣士」がLv.11になりましたー
ー「剣術」がLv.11になりましたー
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ パシュッ...
あれから一時間ほどが経ちスライムを19体倒した
新しい技能は得られなかったがレベルは上がった
加速はLv.3 剣士 Lv.12 剣術 Lv.11 になった。
1日目でこれなら上出来ではないだろうか?
「よし!最後の一体だ!」
「加速!」パシュッ パシュッ パシュッ
3回で弾けた!!攻撃力が上がったのだろうか??
その時まさかのアナウンスが頭の中で鳴る
ー「鑑定」がLv.2になりましたー
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ありがとうございます!
可能な限り投稿していくんで、生暖かい目で読んでやって下さいw