魔王のわがまま
空は赤黒い雲に覆われ
不気味な獣の鳴き声が響き渡る
黒く佇む魔族の城の中では侵攻計画の最終段階に進んでいた
会議室には6人の幹部と1人の魔王
「侵攻計画の最終確認に移る
グラスター君、現在の状況報告を頼む」
グラスターこの男は今回の計画を提示した者である
「はい、現在周辺の統率系統の称号持ち魔獣のコントロールは完了、魔族小隊を3隊待機させております
それぞれ既に配置についており何時でも決行可能な状態です」
「では、作戦の確認をする
目標はフェールの商業機能の停滞
まず初陣の魔物でここを攻撃、次に………
「では、これより侵攻計画を決行する!
意義のあるものはいるか?」
「「「「「異議なし」」」」」
「では魔王様そのようにして宜しいでしょうか?」
「ん?何?面白いことするの?」
魔王は目を輝かせながら問う
「面白いことといいますか…」
「じゃあ何?楽しいこと?」
「いえそういうわけでは無くてですね…」
「じゃあ、何なの?私は仲間はずれ?」
「ですから、フェール侵攻計画がですね…」
「なにそれ?おもしろそう!私も行く!」
子供のように無邪気にはしゃぐ魔王
「いえ、魔王様が直接手を下さる必要は…」
「いいじゃん別にー」
「しかしですね…」
「いいもん!私は私で勝手にするからね!」
「そ、それは困ります!
魔王様が動いてしまっては色々と大変なことに…」
「あん?」
魔王に別の人格が乗り移ったように豹変する
「てめぇ、あたしに口出ししようってか?」
「いえ、そ、そのような事はだ、断じてございません」
まとめ役らしきその男は顔面蒼白の様子で
声を震わしながら膝まずき、深く頭を下げる
その破棄に周りの幹部達も表情が強張りその場に沈黙が訪れる
「だよねー」
先ほどまでの覇気はどこかへと消え去り
また、無邪気な子供のように振る舞う。
「じゃあ…そこのメガネ案内よろしくー!」
そう言って魔王はグラスターを指名し、王座から腰を上げる
その佇まいは魔王と呼ばれる名とは程遠いまさに幼女そのものである。
「かしこまりました私が責任を持ってご案内させていただきます」
グラスターはきれいにお辞儀し何事もなかっかってかのように振る舞う
まとめ役の男はそのグラスターの言葉に驚きと焦りの表情を見せる
「では、お時間になりましたらこちらからお呼びしますのでそれまでお待ちください」
「どれくらい?」
「準備が整うまで2時間ほどお待ちいただけますでしょうか?」
「分かった」
魔王はそう言って楽しそうに自室へと帰っていく
「や、やべぇだろ…」
「ええ、これは大変なことになるわ」
「グラスターどうするつもりだ?」
「問題ありません」
「問題大アリだろーが」
「どうするつもりじゃ?」
「魔王様をフェールにお連れします」
「そ、それだけはだめだ!」
まとめ役のその男はまだ顔色を青くしながら必死に止める
「魔王が直接手を下すのだけは絶対にだめだ!
魔王が動けば勇者が生まれてしまう。これは自然の摂理、何者にも変えることができないのだ。魔族はこれまでの長い歴史の中で幾度となく勇者率いる人族に滅亡させられかけてきた。勇者が生まれれば今度こそ魔族は…」
「勿論理解しております
ですが、問題はごさいません」
「な、何か策があるのか?説明しろ!」
「この計画には皆様にも協力していただく必要がありますが宜しいですか?」
「も、もちろんだ、
緊急事態なんだ侵攻計画が執行出来なくても
魔王が、動いてしまうことだけは止めなくては…」
「いえ、計画は予定通り行います。そして魔王様も抑えます」
「そんなことが可能なのか?」
「私の予想では可能です。
ですが、この計画には、あの人間がかぎとなります」
「例のあの者か?」
「ええ、フェールの魔女です」