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99話「ふとした思いつき」

お待たせしました。

 微妙な空気が出来上がった時に運ばれて来た料理は、まさに渡りに船。

 とりあえず黙って料理を粧って食べ始める。

 まぁ黙っているのは俺だけで、柳瀬さんとエーゼ、エドの三人は楽しくお喋りに興じていた。

 別に会話からハブられている訳では無い。

 話しかけられたら返すつもりはある。

 ただ、食べてばかりいると話しかけて来ないだけだ。

 ………あれ?

 これがハブられているって言うのか?

 ……………。

 とりあえず、ある程度食べたからお腹休めに読書でもしていよう。

 慣れてるからいいもん。



「もういいのか?」

「え?…あぁ、食は小さい方なんでな」

「へぇ。じゃあ食べ終わったなら俺と話そう。食事に集中してるみたいだったから、中々話かけづらかったんだ…」


 は?じゃない。

 えーっと、エドとお喋りをしろと?

 と言うか、さっきまで話しかけてこなかったのは、俺が食べてたから?

 一人でハブられているとか言っておきながら、結局の所は自業自得だったのか……。


「別に話しかけてくれても問題なかったのに…」

「そう?だったら今度からはそうするよ。食事中は喋らない人かと思ったけど、違うみたいだね。勝手な推測で不快な気持ちをさせて済まない」

「いや、謝らなくても良い。会話に積極的に参加しないい俺が悪い。エドに悪いところは一つもないから…」

「ふふふっ、そう言ってもらえると嬉しいよ。なら、お互いの考えがすれ違いだった、さっきのでお相子だ」


 お、おぅ。

 イケメンだ…。

 こんな事をサラリとやってのけるエドは社交的に人格も優れているんだろうなぁ。

 まぁ憶測だからそうと決め込むのはやめよう。

 俺だって周りからはどう思われているか知らないからな。

 中身がこんなクソ根暗なオタクだと知ったらどう思うのだろうか……。




 閑話休題、使い方が間違っているかもしれないが、ちょっとした小話は終わったから全く違う事は無いと思う…。


 俺が食事中は話さないと言う誤解も解けたところで、エドがひっきりなしに話しかけてくる。

 趣味から戦闘中に気を付けている事まで、何でも聞いてくる。

 俺もわざわざ好意的な人を避けたりしない。

 自分から進んで行くことはないが、聞かれた事には考えや話してはいけない事を除いて大抵答える。


「へぇーじゃあ、元々は生活の為に冒険者になったんだ」

「そうなるな。これしかできそうな仕事が無かったから……」

「そうだね。親からの仕事を受け継ぐか、紹介して貰う以外に中々仕事は見つけずらいからね。冒険者はそう言った者には大歓迎だからね。最速で上がったって聞いてるけど、昔から魔法は得意だったの?」

「いや、魔法は冒険者になってから始めて使ったよ…」


 それにしても、ヨーロッパ風の人種がメインだからか知らないけど、エドとエーゼの発育は日本人の俺と柳瀬さんと比べてかなり差が激しい。

 年齢を聞くと何とほぼ同い年。

 エドが18歳でエーゼが17歳。

 一歳違いと言っても誕生日による差だから、同い年と言っても間違いないだろう。

 初めは二十代前半くらいかと思ったが、日本人とヨーロッパ付近の人とは成長が違う。

 同い年でも体付きに差がある。

 まぁ、俺と柳瀬さんが日本人基準でも小柄な方だ。

 見た目程の年齢だとは思われないだろう…。



 時々食事に戻りながら話を進めていく。

 と言っても、俺は基本的に聞きに徹しているがな。

 主に三人が話してて、話を振られたらそれについて返す感じだ。

 元の世界でも似たような何時も通り。

 唯一違う点があるとすれば、俺を除け者にしない所であろうか?


 元の世界でも俺の近くに人は寄ってきたが、それは殆どが似たような同類ばかり。

 同類の定義はかなり幅広いが、飽くまでも学生生活を桜花しているリア充共とは違ってオタク寄りな人達のことを指示している。

 それに比べて、現代日本の学校に居たらクラスの中心人物間違い無しのエドとエーゼだ。

 たいていクラスの中心人物と言ったら、皆に優しい雰囲気をイメージする場合が多いが、そんな人俺は一人も見たことはない。

 学園系ラノベでホイホイ出てきているが、クラスの中心人物且つ成績優秀性格良好でイケメン男子など、一学年に一人何処か学校に一人もいないわ。

 まぁあれは創作だからこそのご都合主義で、現実は甘くなく面白味も無いというわけだ。


 だと言うのにだ。

 エドはその役割にピッタリな存在とも言えるだろう。

 この世界ではそうでもないが、女神の特典を貰っていなければ確実に底辺を彷徨っている実力であるはずの俺を普通に対応し、決して除け者にするどころか積極的に会話に参加出来るように気配りしている。

 これほどまでに性格が良い奴を俺は知らない。

 知っているとすれば、それは物語の中だけの存在であろう。


 エーゼに関しても似たような感想を抱く。

 エドがクラスの中心人物だとすれば、エーゼは女子のナンバーワン。

 お嬢様口調ながらも傲慢な性格ではなく、話せば分かり合える良識を持った女性。

 出る所は出てるし、引っ込む場所は引っ込んでいる女性の特有の発育が柳瀬さんよりも進んでいる。

 可愛いよりも美しいが出て来る人だ。

 俺にそういう感覚がハッキリとは分からないにもかかわらず、元の世界に居た化粧で誤魔化している醜い女と違い、不自然なく美人だと思える。

 異世界にも化粧はあるみたいだけど、元の世界程発展しているわけでもなく、基本的に裕福な人が買える値段設定。

 故にゴテゴテの化粧をしているとは思えず、ほとんど自然体の顔なのだが、美人だと俺でも思わざる得ない整った容姿だ。

 もっとも、好みの問題もあるので、美人だとは思うが好みだとは全く思わないわけだが……関係ないか。



 段々と話していると、より踏み入った内容に近づいていくわけで……。

 話題は冒険者を続ける上での具体的な目標になっていた。


「こうしてドラゴンスレイヤーの称号を得たわけだけど、ツカサとホノカさんは目標とかあるのかな?」

「わたくしとエドは当面は無いですわ。その日のお金さえ稼げれば、それで良いと考えております。まぁ、貧乏は嫌なので出来る限り仕事に打ち込みたいと思っておりますが…」

「あぁ、それなんだけど。実はそろそろ最前線へ行っても良いかな?って思ってるんだけど……」

「はぁ!!?まだそんな戯言を考えていたのですの!!?最前線など、死にに行くような物ですわ」

「でも、この国の現状を考えたら、こんな後ろの方でのんびりとしている方が可笑しいよ。ツカサとホノカさんが殆どやってくれたと言え、俺たちもドラゴンを相手に出来たんだ。十分前線で戦える技量だと思うけど……」

「そういう問題では無くてですね!!わたくしが言いたいのは……」


 あれ?

 急に痴話喧嘩を始められたんですけど……。

 こんなものを目の前で展開させられても……。

 文字で見ているうちはかなり面白そうなシーンだけど、それを実際に目の前で繰り広げられると、面倒極まりない。


 聞こえてくる会話の内容を簡単にまとめると、エドは魔王軍との戦いの最前線で人族の手助けをしたいらしい。

 初めのうちは実力不足を理由に、エーゼに言いくるめられていたらしい。

 だけど、今日のドラゴン討伐の手助けを出来るくらい成長した今なら、魔族との戦いでも遅れを取ることはないだろう。

 だから、人族を、このき国を守るために魔族との戦おう!!

 そういいたいらしい。

 が、エドの説明を聞いたエーゼはいい顔をしなかった。


 まぁそりゃそうだよな。

 誰が好き好んで死ぬ可能性が高くなる場所に飛び込む馬鹿が居るんだよ。

 …………俺と柳瀬さんはもっと危険で死ぬ確率が高い事を目標にしてましたね。

 だとすると、俺も人のこと言えない馬鹿ってなるな。


「でも、この危機的状況に強くなった俺たちが立ち向かわなくてどうするんだ!!?」

「だから、それがわたくし達では無くても構わないではないですか!貴方は自分を大切にするという考えが頭の中からないわけで!!?」

「自分よりも、今苦しんでる人たちを助けるべきだと思う。実力のある俺たちが後ろの方で生活してるだなんて、俺には耐えられないんだ……」

「あぁ~~!!何て言えば諦めてくださるの!!?……国の危機は分かりますし、どうにかしなければならないと思うのはわたくしもです。しかし、何故エドが危険な目に合う必要があると言いたいですのに………」


 エーゼはエドの言い分を理解出ない様子だった。

 まぁ俺にもその考え方は理解し難いからな。

 エドの考え方はまさしく物語の勇者その者。

 困ってる人がいるなら助けになりたい。

 自分の力を他人の為に使ってあげたい。

 その気持ちはある意味正しいともいえるが、別側面から見ればただの自己犠牲が過ぎる考え方だ。

 逆に、エドはエーゼの気持ちが分からないのだろうな。

 傍から見ればエーゼはエドの事を心配して言っているのに、エドは全くそれに気が付いている用には見えない。

 もしかしたら気が付いてはいるのかもしれないが、その心配を無視して自分の考えを貫こうとしている。

 自分に余程自信があるんだろうな。

 最悪を想定しない。

 如何にも陰キャラっぽい勇者様だ。


 …………。

 待てよ。

 何かを見落としている。

 そう、とても重要な事を……。



 俺がエドとエーゼの会話を振り返っている間にも、二人の口論は続く。

 個室だから現状は問題ないものの、このままでは店に迷惑がかかる。

 そして、矛先が俺と柳瀬さんに向いた。


「ねえ!?ホノカもそう思うですわよね?魔王軍なんて、私たちが関わるべき問題ではないでしょう?」

「えーっと……私も、私たちに実力があるなら前線で戦うべきだと思うよ?それに、私たちも魔王軍を相手にしようと行動していたし……」

「ほら!!ホノカさんだってこう言ってるよ。……ってあれ?ホノカさんとツカサも魔王軍と戦うつもりだったの?」

「~~ッ!!?二人してなんですの!!?こうなったら、味方はツカサだけですの……!!」


 あ……やっと違和感に気づいたぞ。

 魔王を倒すだ。

 エーゼが否定しかしないから忘れがちだったけど、俺と柳瀬さんも魔王軍と戦う予定だった……。

 いや、魔王軍と戦うよりも難易度の高い、魔王討伐を目標としてるんだったな。

 少しずつ北へ北へ移動しながら技量を磨いていくつもりだったから忘れてた。

 となると……エドとエーゼは渡り船なのでは?


「……ツカサ君、ツカサ君。そろそろ現実に戻ってきた?」

「あ、あぁ。状況把握と今後の予定を詰めててさ。それで?どこまで進んでたっけ?」

「ツカサも魔王軍と戦うつもりなのかい?」

「慎重な魔法に関して以外は常識人の貴方に限って、そんな無謀な事は無いですわよね?」


 期待する目で俺と見つめるエドとエーゼ。

 期待する目は同じだが、その期待に対する思いは真反対だ。

 エドは俺にも同意して欲しいんだろう。

 対してエーゼは同意して、エドと柳瀬さんの考えを否定して欲しいんだろう。

 だから、その期待をぶち壊す。


 慎重にだ。

 俺には言葉が足りないんだから、慌てずに俺の考えを伝えるんだ。

 さて、この場所に適切な言葉は…………


「魔王軍とは戦うけど、最前線には行かない」


「「「は?」」」


 あれ?

 言葉選び間違ったぁ!!?

次回更新も一か月後の予定です。

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