94話「最後の時間稼ぎ」
俺の配分がミスって柳瀬さんを危機に面してしまった時、まるで物語の主人公のように現れたエドさんとエーゼさん。彼らのお陰で最悪の事態は免れ、更に一緒に戦ってくれる心強い味方を得たのであった。
……とアニメの前回のあらすじ!!風にザックりと説明をしたところで、これからの予定だ。
先ずは役割の確認からだ。お互いに初対面ではないが、戦闘を見たことあるのは二回のみ。即席ではないにしろ、コンビネーションを組んでドラゴンを相手取るには少々手厳しいレベルである。
故に、お互いに出来ることとできないことをザックりと解説する。と、その前に……、
「己が敵となる物に試練を与えよ!!『拘束』!!エド!!!戻ってきていらっしゃい!!」
「やっとか!!?助かった」
エーゼさんが魔法を使ってドラゴンの動きを止めた。拘束魔法……そんな魔法が存在してたんだな。一度効果を見たのなら、俺でもイメージをするだけで再現できそうだ。
ドラゴンを拘束したことで注意を引き付けていてくれたエドさんが自由になり、少しだけ疲れた様子を見せながら戻ってきた。
あれだけの動きを行いながらなお疲労した様子を見せない……エドさんも大概な体力の持ち主だな。少なくとも、俺は比べものにならず柳瀬さんといい勝負が出来そうなくらい。剣士ってのは肉体能力がバケモノみたいなものだからあなぁ。
と、エーゼさんが拘束魔法でドラゴンを拘束出来る時間も短くはない。長くても一、二分が限度だそうで、俺たちも早く作戦を決めないといけない。
「それで?作戦は?」
「わたくしに聞かれましても……。正直、あのドラゴンと戦っている時間はあなた方お二人の方が長いですわよ。エドは何か言いたい事でも?」
「いいや、俺からは特に何も。ただやるべきことをやるだけだよ」
「う~~んどうしよっか?」
「どうするも何も、早くしないと魔法が解けてしましますわよ!!?……さっきから黙っているツカサさんは何か考えがお有りで?」
陽キャ同士会話をお楽しみください。陰キャな俺は黙って見ていますから……と流れに身を任せようとしていた俺だったが、エーゼさんから急に話を振られてしまう。
黙っているていっても、別に考えをまとめているとか考えていたわけじゃない。ただ、早く終わらせたいな~とか急に隕石降ってきてドラゴンにぶち当たらないから~とか、そもそも今日一回も本読んでないなぁ~とか、全然的外れな事を考えてましたよ。
しかし、話を振られたのなら俺も一応考えていいたことを口に出さないといけないだろう。あ、でも、そんなに期待の籠った目で見られると困るんですが……。柳瀬さん貴女のことですからね?
「えーっとまず一つ。エドさんとエーゼさん二人だけでドラゴンに勝てたりしない?」
「そ、そんなことは無理に決まっていますわよ!!貴方、ドラゴンの事を何だと思っているのですか!!?」
言いたいことを言えっていう雰囲気だから言ったのに、エーゼさんに怒鳴られました。酷くないですか?
それにドラゴン?そんなもの、最上位のバケモノって考えですけど?……あれ?そんなモノに苦戦したり時間がかかっているものの、あと少しで倒せる所まで持ってこれた俺と柳瀬さん。
……………俺と柳瀬さんも大概にバケモノじゃね?
「まぁまぁ、エーゼも落ち着いて。ツカサ君だって冗談で言っている訳じゃないんだろうから。しかしだな…俺とエーゼ二人だけとなると、少々厳しいかもしれない。抑えるだけが精一杯だよ」
「わたくしの攻撃でも中々ダメージが通らないって、流石ドラゴンと言うべきですわ」
なるほどなるほど。俺と柳瀬さん、エドさんとエーゼさんの力の差はほぼ一緒。最終局面のドラゴン相手だと、攻撃力が足りずにじわじわと追い詰められると。
出来れば俺と柳瀬さんはこのまま戦線から離脱。エドさんとエーゼさんがドラゴンにトドメを刺してくれたら、俺としては最高の結末だったんだけどなぁ。
出来ないのなら仕方ない。俺と柳瀬さんも手伝って四人で戦うだけだ。
そろそろ拘束魔法の時間切れも近い。早めにやることを伝えなければ……。
「……わっ!?そろそろドラゴンが動き出すんじゃない!!?」
「ッ!!普通ならまだ時間が必要ですのに…。こうなったらもう一度皆さんに時間を作って頂いて……」
「柳瀬さん、やることは少し前と変わらないから…」
「えっ?………あ、そっか」
柳瀬さんに気づいてもらえたのなら、俺は少しでもは早く魔法が完成するように集中をするだけだ。
エドさんとエーゼさんへの説明は柳瀬さんがやってくれるはずだ。俺はそう信じている。信頼がある。
だから俺は、ドラゴンの残り四分の一のHPゲージを全て吹き飛ばす高威力の魔法を構築するべく、イメージという名の妄想を開始した。
ツカサ君が目を閉じて集中し始めた。これでもう、最後まで彼には頼れないだろう。
「ホノカさん!!?ツカサさんは一体何をしているですの!!?」
「何か作戦を思いついたんだね。俺たちに出来ることはあるかい?」
急に動かくなったツカサ君の真意を私に問いつめてくるエドさんとエーゼさん。私が今しなくてはいけないのは、言葉足らずだったツカサ君の作戦を補足することと、
「はい!!ツカサ君はドラゴンを倒すための魔法を考えてるの。だから、私たちの仕事は時間稼ぎ!!」
「分かった!!とにかく時間さえ稼げれば彼が終わらせてくれるんだね」
ドラゴンの足止めを行うこと。
ツカサ君の作戦で私がやるはずだった時間稼ぎ。それは、私の不注意で攻撃をうけてしまい、失敗に終わった。
だから、今度は絶対に失敗させない。
今度は私一人だけじゃない。同じ前衛のエドさんも、ツカサ君と同じ位高位な魔法使いのエーゼさんがいる。これで失敗なんかしたら、ツカサ君に申し訳ない。
ツカサ君は私がドラゴンを足止め出来ると信頼してくれた。私はツカサ君が最後に終わらせてくれると信じている。だから………その信頼に私は答えようッ!!
覚悟が決まったと同時にドラゴンの拘束が解かれた。真っ先にエドさんが走って向かう。
私もそれに続いては走る。
「エーゼさんはツカサ君の護衛をしてください!!」
「……分かりました。あなた方を信じてみまわすわ~~!!」
走りながら、エーゼさんにツカサ君の護衛を頼んだ私に、エーゼさんが了承する声が届く。
会ったことがあるのはたった二回だけ。それなのに、直ぐにツカサ君の作戦にオッケーを出してくれて、上から目線っぽかった私の願いも聞いてくれる。
この人達は自分の事で精一杯な私と違って、他人を思いやれるとても素晴らしい人間なんだろう。
だからせめて、私もその期待に応えられるように剣を振ろう。ツカサ君みたいに色々考えるのは得意分野じゃないんだから、私は私にしかできるない事をしよう。
それはすなわち、
「やあぁぁぁぁ!!!!」
腕の感覚がなくなるまで剣を振り下ろして、足の筋肉がつぶれるまで走って動き回る。目を大きく開いてドラゴンの動きに集中!!
動いて斬る。回避して斬る。いつもならあるツカサ君の支援を考えちゃダメだ。でも、私一人じゃない事も忘れるな。
極限状態とでも言うのかな?私はそんな極地に立っていた。
普段は出来ないような動きも出来る。でも、これじゃあダメだ。もっと、もっと早く。もっと強く。私だけでも倒し切れるように……。
段々と思考が過激になっていく。冷静に考えたらやることは時間稼ぎだと言うのは分かっているのに、ドラゴンにやられた人たちを思うと冷静でいられなくなる。
体が動けるのをいい事に、私はどんどんと前へ前へで行く。安全的に回避するのを辞め、紙一重で避けていく。そして、避けた先にある肉体へと斬りかかる。
一撃、二撃、三撃……。連撃の数々。私は剣を習っていたという過去もないから、我流で剣を振るう。
それは型のない技。何とか流!!みたいな剣技を扱える人たちからすれば、余りにも不愉快に思える剣技でだろうね。
でも、私の技は私の技。他人に真似される筋合いはないし、目の前の敵を倒すことが出来るのなら、私は型になんか拘らない。
幸い、剣なんか16になっても持ったことがなく、元の世界では走ってばっかりだった私だけど……剣の適性があったのは私だった。
何も知らずに飛ばされたこの世界。頼りになる現代知識もここでは役に立たない。使えるのはこの身体だけ。
私は体を動かすのが好きだ。走っている時に感じる疾走感や身体を動かして得る解放感も好きだ。だからだろうか?剣を振るうのは好きだし、私にはこれがあっていると感じるのは。
それに、理屈では説明出来ない何かの力が働いて、私には剣を振るべきタイミングと方法が分かる。それが適性と言うこの世界だけの効果なのかは私には分からない。でも、この感覚のお陰で私は戦えてる!!
前に、前に、前に!!
時間稼ぎと言う概念も忘れて私はただひたすらに身体を動かして剣を振るう。
やみくもに見えて繊細な行動。それは些細な事で崩れ落ちると言う事。
私は頭に血が上っているのか、安全をあまり意識せずに前に突っ込んでいた。
ドラゴンの腕を剣で攻撃を逸らしながら回避すると、私はがら空きの胴体目掛けて地面を蹴った。目で追うのが難しい、ツカサ君はそう言っているスピードを持って私は胴体へと移動する。
と、急にドラゴンが回転した。ドラゴン程の巨体となると、人間一人を引き潰すことなんか用意なのかな?
とにかく、緊急回避をしないとッ!!
足を急停止して後ろにバックステップ。これで何とか避けれたんだけど………それはドラゴンの策略。
私がバックステップで宙に身体を投げだしたと分かると、回転を止めて即座に尻尾による薙ぎ払いを行って来る。
ダメだ。地面に着地する前に攻撃を受けてしまう!!剣で如何にか防御姿勢を……。と空中で防御態勢をとって衝撃に備えようとした時だ、
「ホノカさん!!前に出過ぎだ!!!『破刀の一撃』!!!」
エドさんの両手剣が尻尾と衝突。完全に切立つまでは行かないものの、それなりにダメージを与えて両者はじかれる。
その隙に私は地面に着地してドラゴンから距離を取った。
………恥ずかしい。同じ事を二度も繰り替えてしまった…。一度目はツカサ君が助けてくれて、今度は他のパーティーのエドさんにまで迷惑をかけてしまった。
二度目は無いと思っていたのに……。私のせいで迷惑がかかってしまう。私はなんて成長しない人なんだろう。皆頑張っているのに、一人だけ役割を忘れて突っ込んで行って迷惑かけて……。
ううん。ダメッ。ヘコタレてちゃ余計にダメだ!!終わった事は終わったこと。ハッキリと線引きして意識を切り替えなくちゃ!!
何度失敗したっていい。反省はして繰り返さないように努力するもの大切。でも、それでめげていたらもっと大切なことが鈍る。
それはつまり……。
「ごめんなさい!!でも、ありがとう!!」
私は声に出して謝って感謝を述べる。相手は勿論エドさんだ。
声に出すと言う事はとてもいいことだ。気分が落ち込んだ時に声を出すと、気分が良いしモヤモヤとした考えが吹き飛ぶ。
友達の愛ちゃんにも「穂香って外見と違って案外脳筋だよね~」と言われている。納得いかない評価だけど、自己評価してもそう思える………。
だから、私は私らしくやってやる!!
「うん、どういたしまして。こっからはちゃんとヒット&アウェイで行こうか」
「はい!!一撃離脱……深追いはしない!!」
「そうだね。さぁ、来るよ!!」
声に出して自分に言い聞かせる。そうすることで自分の中にとどまる。
エドさんの言葉と共にドラゴンの攻撃が私たちを襲う。口から放たれた火球をエドさんが大きな剣で防いで、私が横から斬りかかる。
一撃、二撃。三撃目を行う余裕はあったんだけど、離脱の言葉を私の中に残っているから辞めた。即座にドラゴンから身を引くと、今度は私にドラゴンの視線が向く。が、その隙をついてエドさんがドラゴンの側面から切りかかった。
効いているのか、血飛沫が飛跳ねドラゴンから苦痛の叫びを上げるが、数秒経てば傷は塞がってしまう。
これが私たちが攻めあぐねている理由。どんな攻撃を浴びせても直ぐに傷は塞がって戻ってしまう。これじゃあ埒が明かない。でもツカサ君曰く、敵の回復量は無制限ではないらしい。
つまり、残ってる体力を全部吹き飛ばせば倒せれる。普通の攻撃はあまり通じず、本気で剣を振るって高火力の魔法を浴びせてようやく鱗を通してダメージが入る相手。
そんなバケモノにどうやって残りの体力を全部持っていく攻撃を浴びせることが可能か?と思うけど、ツカサ君ならやれると私は信じている。そのための時間稼ぎだ。
私が斬って離脱、エドさんが斬って離脱。私が斬って離脱。エドさんが斬って離脱。
何回繰り返したのだろうか?数えるもの忘れた。というか、そんな余裕持ちさわせていない。
一心不乱に……と言うのはちょっと違うけど、隙間をぬぐうような精密な動きは必要ない。ただ片方に注目が行っている間に移動して斬り付けるだけ。一回か二回斬り付けたら安全を取って直ぐに身を引く。
ただそれだけ。それだけなんだけど、集中力を切らしたら一撃で持っていかれる。いや、その前に倒れちゃうかもしれない。
傷はツカサ君に直して貰った。でも、受けた痛みは戻らないし疲労だって溜まっている。正直に言って、体力に自身がある私でもここまで疲れたのは久々の事だ。
真剣にやっているものの、毎回毎回の依頼は私とツカサ君では直ぐに終わってしまう。それでも疲れるし汗もかくんかだけど、倒れる程疲れたか?と問われれば即座にいいえと首を横に振るだろう。
無理……ではないけど、一日に何度も依頼をしたり限界まで続けるのはツカサ君から嫌がられる。曰く「生きるためと本の為の資金集め、後は魔王討伐に向けたスキルアップの為に依頼をこなし続けるけど、疲れるのは嫌いだからそこまではしない。……どうしてもって時はやるけどさ」だそうだ。
だから、今まで無理という無理をしたことがない。でも、今まで休日にだって走り込みや剣の鍛錬を行って成長できるように頑張っているし、元の世界では先生が厳しかったから何度も何度も死ぬほど走って追い込んだ。
そう、このくらいなんともない!!
攻撃を受けたのは一度だけ。このくらいでへばってちゃっ元の世界に帰る何て出来やしない!!
その思いを胸に私は足を止めない。剣を振るう。一撃離脱を頭に残して私は頑張った。
エドさんと私がドラゴンの注意を引く。時に余裕があったらしいエーゼさんに強化魔法や回復魔法をかけて貰いならが粘る。
これで倒しきれたら一番良いのだけど、ツカサ君が言った通り決定打に持ち込めない。やっぱりツカサ君の魔法が完成するのを待つしかないッ!!
と、私はツカサ君を頼りにして時間を稼いだ。研ぎ澄まされた思考の中では、実際の時間と体感時間に違いが大きく出る。
どのくらい時間が経ったのだろうか?日の傾きぐわいから計算するとそこまで時間が経っていないようにも思える。でも、実際には数時間……までは行かなくても小一時間は経っていたのかもしれない。でも、私にはそれは関係ない。
どれだけ時間が過ぎようとも、ツカサ君さえ守り切れば私たちの勝利は疑わない。そう、誰もが「Cランク冒険者がドラゴンを潰せる?」「有り得ない、もっと高位の魔術師や剣士に頼るべきだ」そう言うかもしれない。
でも、世界中の誰もが信じなくても、私だけはツカサ君を信じぬく。顔も知らない人よりも私は私の知っている、私のパートナーで、右も左も分からない私を導いてくれた、私の大好きなツカサ君を信じる。
彼ならきっとドラゴンさえも倒してしまえる魔法を使いこなせるだろう。本人は女神様がどうとか言うと思うけど、私はそれがツカサ君本人の実力だと思う。
与えられただけの能力でも、それを使いこなしているのは事実。私だったらツカサ君みたいに上手く使いこなせないだろう。
ツカサ君だからこそ出来るのだ。ツカサ君でないと出来ないのだ。
ほら、ツカサ君ならきっとやれると信じていた…。
何度目、多分とうに幾度の攻撃を繰り返した。
そんな時間の果て。
ドラゴンに斬りかかった私の視界の隅に、今までの見たこともないような大きな魔法陣を広げたツカサ君が見える。
完成したんだ……。
このまま居たらきっと邪魔になる。私たちは急いでドラゴンから離れる。
さぁ、こんな悪いモンスター。やつっけちゃって!!
次回でドラゴン倒せたらいいなぁ~と思う作者であった。長くなりすぎだと自分でも反省しています。




