89話「2人での戦闘」
「ツカサ君……一体何が…」
弱々しい柳瀬さんの声が聞こえる。今までにない程の強敵を目の前に、柳瀬さんは震えているらしい。俺のマントの裾を掴んで震えている。
俺は柳瀬さんの質問に答えるべく口を開いた。
「今までは遊びだった……だろうな。考えてみても上手くいきすぎていた。俺と柳瀬さんが居ると言っても、あのレベルなら第一陣は少なからず保っていたはず」
「……そうだね。でも、私たち以外の人は…」
柳瀬さんは悲しそうな顔をする。震えているのも、恐怖からではなく、他の冒険者を思ってからの事なのだろう。
やはり柳瀬さんは優しい。俺はそんな事微塵も思わなかった。単に「残念だったね」程度だ。この世界は全てが自己責任で成り立っているのだから。
柳瀬さんの言葉を聞いて、自然と視界の隅に視線を移した。そこにはマップが映ってる。
少し離れた場所にドラゴンを示す赤点。そこを中心として冒険者の数は極端に少ない。
ドラゴンが冒険者の集団に突っ込んでいったのは確かである。と言うことは、あそこに居た冒険者は死んだのだろう。マップ機能は今まで間違えた事がないのだから…。それに、生き残ったと思われるものも、出血多量か分からないが、時間経過と共に点が消えていってる。
間違いはない。
「あの中で生きていられるのは少ないよ……」
「…ッ!!?でも、ツカサ君だったら……」
「無理だ。今でもこれだけの障壁を展開しているのが誠意一杯。柳瀬さんには酷いと思うけど、俺は俺と柳瀬さんを一番に考えて行動するから……」
「……うん。分かってるけど、どうしても考えちゃうんだ……。ツカサ君を攻めるわけじゃない」
一瞬だけ悲しそうな目を向けた柳瀬さんだけど、最後には強い目には戻っていた。
多分「これ以上犠牲は出せない!!」とか思っているのだろう。……俺よりも勇者らしい。
そのままこちらがアクションするまで、ドラゴンが行動を起こさないわけがない。この世界はターン制限があるゲームではないのだから。
ドラゴンが起こした行動は舞い上がていた砂粉塵をまき散らすことだった。先ほどの衝撃波に比べたら大した事は無いが、それでも十分強風の域に達し風が中心から巻き起こる。
砂粉塵が晴れた先に待っていたのは宙に浮ぶドラゴンだ。身体はこちらを向いており、目線までもが俺を睨んでいる。
ドラゴン的には「雑魚を始末して本命に取り掛かる」という感じだろう。全くもって面倒なことだろう。
しかし、何故俺が本命なのだろうか?確かにドラゴンを討伐できそうな高威力の魔法を放ったが、それだけでこうも段取りを組むだろうか?
……と考えている時間は無い。目の前にいるドラゴンがこちらに向かって飛んできた。
「一先ず、生き残ること優先で」
「……分かった。ツカサ君も無理しないでね」
俺と柳瀬さんはそれだけ確認し合うと、それぞれ別方向に散った。
柳瀬さんは持ち前の脚力があるから大丈夫だが、俺にはそんなもの持っていない。
この世界で生きてきたお陰か、何かゲーム的な要素が絡んできているのかは分からないが、元の世界で生きていた頃よりも体力や筋力は上げっている。
アスリート並みの力を……とはいかないが、高校の平均的な能力のトップくらいにはなっているだろう。
だが、ドラゴンの前にはそんなもの無力にも等しい。俺などどう足掻いても直ぐに死ぬ雑魚だ。さっきの冒険者たちの様に。
しかし、俺は魔法使いだ。どれほどの謙虚に取り繕ろうと、俺はトップレベルの魔法使いだと言う事実は変わらない。
だから、魔法を使えばドラゴンなど恐れるに足らん!!!と、身体強化の魔法を使って前転して回避する。
危なッ!!すれすれの所をかすったぞ!!………見栄を貼りました。ホントはとても怖いです。
だけど、全力を尽くせば何とかなりそうな相手だ。
ドラゴンは遊びを辞めたのにも関わらず回避した俺と柳瀬さんを確認すると、明らかに不機嫌そうな唸り声を上げた。
口から炎がチラッと噴き出して……って!!ブレスかよ!!
開戦と同時に使ってきたブレスと同じ、いやそれ以上の魔力量を感じる。
俺は慌てて魔法障壁を展開して防御態勢に入った。
一番初めの時よりもヤバそうだが、あの時は全体に対して広範囲に展開した。今は俺だけを守ればいい。一点集中だ。魔力も全部回せる。
「防御障壁」
完全な無詠唱魔法よりも消費魔力やイメージ力を強められるため、こうして余裕のある時は魔法名を呟くことにしている。
実際に俺の言葉は誰にも届かず、それでもそれだけの価値のある魔法障壁を構築して俺を守った。
ドラゴンブレスと俺の魔法障壁がぶつかる。その衝撃は先ほどドラゴンが地面に突っ込んだものをも超える勢いだ。仮にもしこの場にいるただの人間が居るのならば、辺りに放出された濃い魔力だけで気を失うだろうな。
それにしても、防御だけでもかなりヤバいのが分かる。どうヤバいかって言うと、魔法障壁のイメージに低一杯で、攻撃に転換できないほどである。
俺の魔法は既存の魔法とは違う。詠唱が必要なく、イメージさえ出来れば後は魔力の有無次第で発動できる。
だから、イメージ次第によっては防御しながら攻撃とかも可能だ。魔法の発動位置ですら任意で決められるんだもん。当たり前だ。
しかし今はその様な余裕がない。魔力的余裕は十分ある。だが、この攻撃を防ぎながら攻撃魔法を浮かべる……と言うことは全くもって想像が付かない。
俺がこの攻撃は全力で防ぐしかない…と思っているからだ。イメージ魔法は心と脳に深く関わっている。俺が心の中でダメだと思っている事はできない。逆に言えば、一度出来ると思い込めばいいのだが、今回が難しいだろうな。
今回は防ぐのに手一杯だけど、超強力な攻撃を防ぎ切ったと言う事実を作れば、今度は同時に発動出来る可能性も高まる。
ドラゴンブレスと俺の魔法障壁のぶつかり合いは、長い間拮抗し続けた。長いと言っているが、俺にとってはで、他の人やほんの僅かな時間だったのかも知れない。
時間経過と共に段々と減っていく魔力を見て、このまま続けばやばいな…なんて冷や汗をかき始めた頃、遂にドラゴンブレスは止まった。
奴が自分の意志で止めたのではない。横槍を入れてきた人物がいたからだ。
「ツカサ君ばっかり、見て!!!!私の存在も、忘れないで、ねっ!!」
ドラゴンが低飛行でブレスを放っていたのが幸いしていた。
ドラゴンの体当たりを回避して側面に回り込んでいた柳瀬さんがダッシュからの飛び上がり、剣を抜刀してドラゴンの首を斬り付ける。
意志の力なのか、戦いの中でレベルアップしているのかは分からないが、ついさっきまではかすり傷レベルでしか与えられ無かった斬撃が、致命傷……まではいかずとも無視できないレベルとなって、ドラゴンに襲い掛かる。
その攻撃に驚いたのか、ドラゴンはブレスを中断する。魔法障壁を消して、攻撃に転じた。
さっきはよくもやってくれたな。お返しだっ!!と恨みを込めて魔法を構築。
魔力消費も考えて、凸凹になった地面からの素材を活かせる土属性魔法。それなりの大きさの槍を作って発射する。
柳瀬さんが己に無視できない傷を付けた事で動揺していたのだろう、ドラゴンは回避できずに土槍が刺さった。
人間からすれば多く思える量の血が噴き出た。かなり効いてるように見えるが、ドラゴンからすれば微々たる差のようで、視界に移ってるドラゴンのHPゲージは四分の一も減ってない。
ドラゴンがいきなり大量の傷を負ったことで混乱しているうちに、横目で行動を見ながら魔法薬を飲み干す。
魔力にはまだ余裕が残っているが、全魔力を必要とする場面も出てこないとは言い切れない。
ちょっとした油断が死に繋がるこの戦闘では、常に万全の状態を保っていたい。そう思うと、この魔法薬の値段だって安いものだ。早めの回復は重要だからね!!
一撃。されど一撃である。
これまでこれ程にダメージを与えられた事はあったであろうか?否、そんな物無いに決まっている!!!誰だ!!この俺様に傷を付けたニンゲン風情は!!!?
とか思っているのではないだろうか?俺を睨んで、柳瀬さんを睨む。混乱しているのか、その行動を繰り返しているドラゴンの心情を表してみました。
いや、そんな余裕ないけどね!!焦っているのだが、人間緊急事態になると冷静になるとか言うしね……。
あ、これは冷静じゃなくて、普段の不真面目な脳内会議ですね……。
と、心の中で独り言を言いつつも、俺は行動を起こす。
よくあるRPGゲームでは表現されていないが、どの様な戦闘にも立ち回りと言うものがある。
魔法使いはただ突っ立って魔法を唱えるだけで、剣士なのど前衛職は常に一対一で適当と向かい合っているわけではない。
常に行動を起こしている。一つの場所にとどまっている方が珍しい。
柳瀬さんはドラゴンを見据えながらこちらに走ってきた。俺もそれをサポートするべく、ドラゴンに向かって上級魔法の威力を持った魔法を連射。
炎、水、風、氷、土、色んな魔法が間をおいて発射される。上級魔法並みの魔力を込めたつもりだけど、雑だから当たっても大したダメージにはならないだろう。
それでも足止めになれば十分だ。一つの属性なら対局した魔法でレジスト可能かもしれないが、複数の属性の魔法となると対応が困難だろう。足止めには十分だ。
その間に柳瀬さんが俺の近くに到着した。さて、簡易的ではあるが、作戦会議だ。
まずは柳瀬さんを褒める所から入ろうか。
「柳瀬さん、何時の間にドラゴンの鱗を斬れる様になってたの?」
「えへへへ、凄いでしょ!!ツカサ君への攻撃を止めないとッ!って思って剣を振ったら斬れたの」
「よし。これなら二人共攻撃が通るってことで攻めやすくなった」
柳瀬さんを褒めつつ、いつの間にかそんな力を?と聞いてみた結果、俺を思って力を込めたら斬れたらしい。
俺もイメージ魔法なんてチート能力を持っているけど、柳瀬さんのバグじみた身体能力に食えて、初めて剣を握ってから半年とは思えない程の剣撃を見せつける。それは、中級冒険者の剣士を遥かに凌駕し、上級者にも劣らない剣裁き。
ふと、チートを貰ったのは俺だけじゃないのでは?と考えがチラ付いた。でなければ、あの力は説明が付かない。
俺の魔法と柳瀬さんの剣術……合わせたらホントに物語の勇者じゃないか。うん。そうに違いない。
俺はそう思うことにした。間違っていた時の方が怖い。しかし、今の俺にはそれを確かめるすべは持ち合わせていないからな。
閑話休題。話が逸れてしまったが、元に戻していこうと思う。
先ずは現状確認だ。これを手早く柳瀬さんと確認していく。ドラゴンがいつ復活するか分かったものじゃない。
今は格上のドラゴン相手だ。部隊はほぼ全滅。生き残っているのは、俺と柳瀬さん。後方で動けないでいる後衛部隊。前衛部隊はドラゴンに全員やられた。幸い生きていたとしても、直ぐに動ける状態ではないだろうし、そもそも心をへし折られている可能性の方が高い。
こちらの戦力は俺と柳瀬さんだけだ。俺の魔法も、柳瀬さんの剣撃もドラゴンにはダメージを与えることが出来る。
要するに、二人だけでドラゴンと言う最強生物を相手しろって言われてるようなものだ。
「というのが現状だけど、どうしようか?」
「回復だけでも後衛にやってもらうのは?ほら、回復魔法で離れた位置からパァーっと」
「どうだろう?一撃喰らったら回復魔法は必須だけど、疲労まで回復するわけじゃないからな……。せいぜい回復アイテムを分けてもらうのが限界だろうさ」
「う~~~ん……ごめんなさい。私だと思いつかないや。ツカサ君は何か作戦ある?」
こんな緊急事態だ。解決方法をポンポンと出されてしまっては、俺の見せ場が無くなる。
…………いや、俺だってそんな解決方法を持ってる訳じゃないんだけどね。
俺は凡人だ。それどころか欠陥品ですらあると自負している。だから、相手を惑わすような奇策を思いつくわけでもないし、何通りもの作戦をセーブ出来るわけでもない。
俺に出来ることは、思い出すことだけだ。これまでの人生で読んできた本の内容を思い出して、それを現実に当てはめて実行出来るかどうか判断を下す。少しでも不安があれば却下だ。俺に出来ることは少ないのだから、出来ないことは出来ないと割り切った方がやりやすい。
もう一つ出来ることはイメージすることだ。最低でも死なない。死なせない。これをイメージして努力する。努力は苦手で嫌いだけど、一度決めた事は中々覆さない。
読書にしたってそうだ。俺は読書の魔の手にハマってしまった。その時思ったんだ。これがなければ生きていけないだろう。本が読めないくらいなら死んだ方がマシだと。だから、それ以外のほとんどを切り捨てる事ができた。切り捨てると決めたら、ホントに何も思わなくなる。勉強にしたって、周りが良い点数をと取って喜んでいるのに、悪い点数をとった俺は何も思わない。悪い点数を取ったから何?良い点数取れたからと言って目に見えて強くなれるわけでもないし、強くなくたって生きていける。本さえ読めれば後はどうだっていい。そうやって振り切った。一度決めたからにはひきかえせない。
俺には出来ることは少ない。だからこそ、その数少ない事をやり切る。読書だけに生きていく。元の世界ではできていた。ならば、この世界で俺が出来ることはなんだ?
それは勿論、今まで読んできた小説の内容を思い出して、そのテンプレをこの世界に当てはめていく。そうすると、自然と道は見えてくるはずだ……。
俺に出来るのはこのくらいでしかない。いや、この世界の人から見れば、俺の思考回路や行動パターン、魔法の使い方は異常にも程がある。って小説には書かれていた。
うん。だってそれは元の世界の異世界物のラノベに酷似した世界ばかりだもの。俺の様にネット小説や異世界物のラノベを読み漁っている人からすれば、予想すら簡単に浮かべられる。小説に書いてあった作戦や元の世界の技術を少しだけ伝えるだけでこの世界では偉人だ。
まぁつまり、俺に出来ることは元の世界の異世界物語を思い出して、この状況を脱出できる作戦を思い出すこと。そしてそれを実行する。
なぁに、世界の制約に縛られていたり、何の力も持たずに困難を乗り越えて来た努力化な主人公達と違って、俺にはチート能力が存在している。制限はある程度あるが、イメージするだけでその通りの現象を引き起こす事が出来る魔法だ。俺の想像の中である限りは、出来ない事は無いだろうと、ここ半年の経験の結果、判断する。
俺の想像にある限りは魔法として発動出来る=俺の作戦は全て実現できる。と言うわけだ。と言う理論が成り立つ。
勿論、世界全てを俺の想像に書き換える事など不可能だし、俺以外にも柳瀬さんやドラゴンと言った知性生命体が作戦に関わって来る。どう行動するかは俺の想像の範疇を超える。だから、作戦が完璧に行えるわけではない。
作戦に必要な、この世界では一般的では有り得ない魔法がいともたやすく発動できる。というわけだ。
…………その考え自体が間違っているのもしれない。出来ないと心の何処かで思っているから、それが出来ないのであって、本当にそうだと想像すれば出来るのではないか?それについては思わないことにする。
だって、戦闘中に考えもしないような事を思いつく程俺は頭が出来ていない。頭が良いなら、俺の能力と合わさって、ドラゴンなんか簡単に撃破しているさろうさ。
と、こんな感じの事を頭の中で思考していても、ほんの二、三秒しか経っていない。勿論、今まで文字に起こしているのを全部が全部正確に黙読しているわけではないから、全く同じ内容ではないんだけどね。多分似たような内容なはすだ。
脳って言うのは速度が恐ろしく速いので、人間でも理解できない速度で動いている。それが幸いしている。
と、話が横道に逸れまくっている。独り言が多いと、こう言った事が多いから物凄く不便だ。
今ま考えないといけないことは目の前で、絶賛混乱中のドラゴンをどうするか?と言う内容だ。
今は混乱してこちらに眼中にないようすだが、何時冷静に戻るか分からない。急いで考えよう。
敵はドラゴン一体。向こうの目的は不明。
対してこちらの勝利条件は……
「耐久戦……かな?」
「耐久戦?攻撃が通るなら、やっつけちゃわないの?」
「攻撃が通っても、それが殺すまでのダメージにはなるわけじゃないし。それに、アテはある」
「アテって……あ、Aランク冒険者!!」
「そう。最低でもさっきみたいな事にはならないはず。それで勝てるかと言われても答えられないけど……」
「じゃあ耐久戦だね!!!詳しくは…」
とここで声が途切れた。ドラゴンが復活して俺たちに突風を浴びせてきたからだ。
柳瀬さんは剣を地面に突き刺して、俺は地面からと棒状の物を作りそれを持つようにして絶えた。
が、ドラゴンもそれで上手くいくとは思っていなかったらしい。突風に加えて火球を数発放ってきた。人間など一撃で飲み込めて黒焦げになりそうな大きさだ。
火球が回避出来るような距離まで近づくと、突風が鳴り止み移動が出来るようになっていた。俺と柳瀬さんは互いに言うまでもなく、回避を取った。
柳瀬さんは持ち前のスピードで回避して、俺は避けられる奴だけ避け、無理だと思ったやつにはウォーターボールをぶつけてレジスト。ホントに目の前でぶつかったよ……。やだの火球でレジスト可能な限り威力で良かった……。
俺もやられっぱなしは納得がいかない。そもそも、俺だって死にたいわけじゃないんだ。
だから、上級魔法を数発ドラゴンに向かって放つ。この戦闘ではお世話になります土槍さんだ。消費魔力が一番少ない。
空中に居ると言う事で、軽々しく回避を行うドラゴン。俺だって狙いも定めずに撃ってる訳じゃない。しかし、ターゲットカーソルという物が俺にはあるので、何発かは刺さったが、視界内に移るHPゲージは少なくない量のダメージを与えた事を示す。
だけど、
クソッ!確かに総魔力量の多いくて何発も上級魔法を連発できる俺だけど、殆どが回避される上に当たっても大したダメージにはならない。
MPゲージの減りとドラゴンのHPゲージの減りを比較してみた結果、このままだと俺の魔力枯渇が先になるだろう。
魔法薬を飲み続けても回復量には限界がある。ならば、と、俺はアイテムボックスから石を取り出した。ただの石ではない。
皆さんは『魔石』と言うアイテムを覚えているであろうか?魔物の体内や自然的に生成される魔力の結晶だ。
効果内容としては、魔力を溜めれて好きな時に引き出せる魔力貯蔵と、美的価値が高い装飾品。美的センス皆無で、興味すら湧かない俺が持ち歩いている理由など前者の理由でしない。
早速取り出して魔力を引き出す。感覚で言うと、何かを体の中に引き入れている感覚だ。抜け落ちる魔法発動とは真逆の感覚である。
あぁ…この感覚は気持ちいい。MPゲージもグッと回復出来るから大助かり。
使い終わった魔石は再びアイテムボックスにしまう。何度も使える事が出来るのが最大の特徴だろうよ。
小走りしながら魔力の回復を行っていた。
そんな俺に向かってドラゴンも口から火球を吐き出して牽制しているらしいが、何とか回避してダメージは受けていない。
そればかりか、俺ばかりに攻撃を繰り出すドラゴンに向かって柳瀬さんが斬り込む。不意を着いた結果なはずだが、ドラゴンも先の一撃で柳瀬さんも警戒していたのか、あっけなく回避。
やはり空中に浮かんでいる状態だと、柳瀬さんには不利な状況にある。というか、よくあそこまでジャンプできたな。脚力の差か……。
とりあえず、柳瀬さんのお陰で魔力は全快まで回復出来た。ついでに回復薬も口に含んで、万全を期す。
さて、この状況を打破する作戦を考えないとな……。
ひょんなことから始まったドラゴン戦は、まだ中盤を迎えたばかりであった。




