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76話「救出」



 今まで謎だった柳瀬さんの死因。

 それは、俺が原因だったらしい。


 俺がトラックに轢かれたから、柳瀬さんがここに居る。

 優しい柳瀬さんのことだ。俺が死にそうになるのを見て、手を伸ばしたかったのだろう。

 ならば、あの場所で俺が死んだから柳瀬さんも死んでしまった事になる。

 元の世界で生きていた頃、毎日のように死にたい、死んで異世界召喚されたい。

 そう願っていた。

 願っていたのは確かだ。今更否定はしない。

 だけど、誰かを巻き込んでまでそうなりたいとは願っていない。


 おそらくだが、俺がトラックに轢かれて死んだ。

 そこに女神様の勇者召喚が起こり、何らかの原因で柳瀬さんも一緒にこの世界に飛ばされた。

 そう考えると不自然は無い。



 全部自分のせいだ。

 この世界に飛ばされた柳瀬さんが、生き物を殺して生きていかなければならないのも。

 元の世界では触れもしない様な生活を強いられるもの。

 こんな状況に陥ったもの全部自分のせい。

 結果論だと言われも仕方が無い。

 それでも、俺は自分のせいだという思いから逃げたくなかった。




「だから、ツカサ君は私の事をなんか気にしないで、ここから逃げていいんだよ」


 柳瀬さんが俺に向かって逃げろと言ってくる。

 それは、自分が犠牲になると言っているのと同意儀だ。


「もう、私はツカサ君の足手纏いになりたくないの」


 柳瀬さんはこの世界で行きたい数か月、俺の足手纏いだと思っていたらしい。

 俺が嫌々柳瀬さんと一緒に行動していると。


 違う。初めは確かに仕方なくだった。

 でも、さっきようやく気が付いたんだ。

 俺は柳瀬さんと一緒に過ごした時間が、案外居心地が良かったと思っていることを。



「おい!!!ようやく見つかったぜ」

「ったく。いつまで時間を掛けるつもりだったんだよな」

「意味の分かんねぇ会話ばっかり飽きてきたところだったぜ」


 やばい。もう一人の仲間が戻ってきた。

 早くこの状況を打破しないと時間切れになってしまう。


「ツカサ君……」


 柳瀬さんが縋るような眼で俺を見つめて来た。

 「早くやって」そう聞こえてくる。


 だが、普通に魔法を発動したら相手に気づかれる。

 楽をしたいなら俺は柳瀬さんの言う通り、柳瀬さんを見殺しにして後ろの敵を倒してから残りの二人を倒して逃げるべきなのだろう。

 だけど、この二ヶ月間行動を共にした柳瀬さんを見捨てるなんて頃はできない。

 俺の中で柳瀬さんは、他人では無くなっているのだから。

 それがどんな気持ちなのか、言葉には表せないけど、逃してはならないものだと思う。


 考えろ。魔法ならどんな事でも出来るんだろ?

 諦めたらそこで試合終了だと、バスケットボール監督も言っていた。

 諦めるな。俺が勇者なら、絶対に状況を打破出来る可能性が眠っているはずだ!!

 俺の魔法はイメージによって構成される………。


 魔法ならどんな事でも………イメージによって……。

 lはっ!!魔法を発動する時、どんな風な魔法を発動するかイメージして来た。

 イメージによってどんな事でも出来るなら、発動位置もイメージによって変えられるのでは?

 知らない場所や遠すぎる場所は無理でも、せめて視界内に入っている場所なら可能性はある!!



 俺は早速イメージを始めた。

 誤射が怖いけど、一発で仕留める必要がある。

 使う属性は一番イメージし易い火属性。

 絶対に逃げられないように、地面から炎が噴き出る様にイメージする。

 密着している柳瀬さんは悪いけど、死ぬ覚悟しているならこのくらい許容範囲だと思いたい。

 威力は、直ぐに消されたり柳瀬さんを離さない意志が残らないように、強めに設定。

 普通に使っている魔法の三倍以上の魔力を込めていく。


「へへへ。おい、口を開けろ」

「魔法使いは口させ封じたら怖くねぇからな」


 遂に猿ぐつわ代わりの布を持って来た奴が、俺の場所までやって来た。

 後ろでは、剣を突きつけたまま笑っている奴が。

 柳瀬さんを拘束している奴も俺に注目している。


 よし、今なら一番不意を付けられる。

 未来が見える訳ではないので、何時が一番いいタイミングなのか分かる訳がない。

 だったら、ここだ!!と思ったタイミングで仕掛けるしかない。


 俺は黙って口を開いた。

 その瞬間、イメージを現実にする為に魔力を押し出す。


(炎よ噴き出ろ!!!)


「ぎゃあぁぁぁぁあ!!!!熱ィィ!!!!!!」

「なっ!!何だ!!!」

「アニキ!!!」


 柳瀬さんを拘束していた奴の足元から、炎が吹き荒れる。

 そいつはあまりの熱さに、柳瀬さんを放り投げて地面を転がった。

 俺の近くにいた2人が、何事かと俺から視線を外す。


 俺はその隙をついて、自身に魔法障壁を展開。

 同時に追撃用の魔法をイメージした。


「なっ!!お前の仕業か!!ぶっ殺せ!!!」

「よくもアニキを!!!って魔法障壁!!!?」


 ようやく俺の行動に気が付いた2人が襲ってくる。

 が、先に張っていた魔法障壁に阻まれた。


「詠唱なんて聞こえなかったぞ!!!」

「そりゃあ、詠唱なんてめんどくさいものしてないからな!!『ロックニードル』!!!」

「ぐわぁ!!!」

「お、おい!!!省略詠唱の使い手だなんて聞いてねぇぞ!!」


 剣を魔法障壁に突き立てて、何とかして俺を殺そうとしてくる奴に向かって、ロックニードルは放つ。

 ここはダンジョン内と言えど、洞窟なのは変わりない。

 地面の土を使って土属性魔法を放つことで、効率よくダメージも与えられる。


 最後の一人が怖じ気づいたらしく、背を向けて逃げていく。

 真っ直ぐに部屋の外を目指してくれたお陰で、俺も魔法の狙いが付けやすい。

 こんな犯罪者を生きて帰す程、俺はお人好しではないからな。


「逃がすかっ!『ロックニードル』」

「ぎゃあぁ……。くそ痛ぇよ」


 明確に人を殺す。

 殺しが初めてではないが、明確な殺意を持って人を殺すのは初めての事だ。

 それが俺の狙いをズラしたのかも知れない。

 最後に放ったロックニードルは、確かに逃げようとした奴に向かって命中した。

 だけど、足に刺さり動けなくさせた程度。


 ま、この程度でいいだろう。

 そんなことよりも柳瀬さんだ!!


 至近距離で俺の魔法の炎を浴びた柳瀬さん。

 鎧がボロボロに壊れ、服を通り越して真っ赤に焼けただれた肌が見えている。

 こうするしかなったと言えど、申し訳なさを感じてしまう。

 俺は急いで柳瀬さんの下に急いだ。

 近くには、柳瀬さんを拘束していた奴が転がっている。

 真っ黒に焼け焦げて瀕死の状態。

 ゲホゲホと呼吸をしているようだが、その度に口元から真っ赤な血が噴き出していた。


 俺が殺した……。手が震えている。

 俺と柳瀬さんが生きるために、相手が犯罪者だから、と理由があったにせよ、俺が殺した。

 感情が乏しいと自称しているにもかかわらず、気持ち悪くなる。

 偶に起こる吐き気が俺を襲いかかってきた。


「…うっ!!っぷ。おぇっ!!………ハァハァ」


 胃酸が口元まで逆流。

 目元が涙で滲む。


 そのまま吐いて楽になりたい。

 そう思ったが、グッとこらえて柳瀬さんに駆け寄った。

 限界を超えたのか、気絶している。

 腕を触って確かめてみるが、脈はまだある。

 とりあえず、回復魔法だ。


「汝のマナよ、我が命じる。我が力を注ぎ、その命を繋ぎ止めよ……『ライフリカバリー』」


 詠唱と共に魔力をつぎ込んで、柳瀬さんの肌が治すイメージをする。

 俺の魔力がなくなっていくと同時に、柳瀬さんの肌が治っていく。

 視界内に映るHPゲージも増えていく。


 良かった。今まで俺の魔法障壁で大きな怪我を負った事がなかったし、小さな怪我も俺の魔法に頼るまでもなく、柳瀬さんが回復薬を飲んで治していたからな。

 俺の魔法はイメージが大切だ。

 物質を生み出したりするのは相性が良いみたいだけど、自分以外の者に影響を及ぼす魔法発動しにくい。

 イメージがし難いというものあるのだろう。


 それ故に、詠唱込みの回復魔法だったけど、上手く発動してくれたみたいだ。

 肌は元に戻ったし、HPゲージも全体の五分の一は回復したみたい。

 少なくとも、命の危機は無い。

 呼吸も普通に行っている。


「……ツカサ君……」

「柳瀬さん!!良かった……」


 少し様子を見ていると、柳瀬さんが目を覚ました。

 俺ははっきりとした安堵を浮かべて、柳瀬さんの名前を読んだ。

 すると、あろうことか柳瀬さんは涙を流し始めたではないか!!?

 な、何が行けなかったのか!!?


「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいでまたツカサ君に迷惑かけちゃって……」

「そんなこと……」


 いつもの俺なら、ここで言葉を詰まらすのだろう。

 だけど、言葉足らずなのが今回の件を引き起こした。

 そう考えると、ここで引いてはダメだ。

 思っている事は言葉にして伝えないと!!!


「そんなことはない。俺は柳瀬さんが心配だったからここまでやって来たんだよ」

「っ……!!?わ、私の為に?」

「うん。なんて言ったいいのか分からないけど……俺は柳瀬さん一緒に過ごした時間が楽しかった。知り合い…じゃない」

「………………。わ、私も。私もツカサ君と一緒に居て楽しかった。でもね。私のせいでツカサ君に負担がいっていると考えたら………ツカサ君の隣に立てる実力を身に付けなきゃって………思ったの」


 なるほど。

 だから、こんな短時間で十九階層なんて場所まで潜っていたのか。

 無理をしてここまでやって来た。

 無理をしたせいで、不意を突かれて人攫いにさらわれたと言ったところだろう。


 泣いている柳瀬さんを見て、どうするべきか悩む。

 小説とかだったら、柳瀬さんの背中をさすってあげたり、元気な声で励ましたりするのだろう。

 が、俺にはそんなことできない。

 緊急事態とか不可抗力とかなら仕方ないけど、妹以外の女の子と接する事がほとんどない俺に、そんなことを求める方が間違っている。

 俺に出来るのは、ただ柳瀬さんが落ち着くまで黙って待つことだけだ。




 ふと、マップに赤点が表示されていることに気が付いた。

 柳瀬さんに集中していたから気付かなかったけど、一人だけ仕留め損ねた奴がいたはずだ。

 生きてるならわざわざ殺すことはない。

 拘束してギルドにでも引き渡そうか。そう思っていると、赤点がスピードを出してこちらに接近して来た。


「このままやられるかよ!!!死ねぇぇえl!!!!!」

「……ッカサ君!!!」


 急いで振り返ると、足に刺さった土棘を無視して走っている人攫いの生き残り。

 手にはボロボロの剣を持っていて、俺を目掛けて振り下ろしてくる。


 急いで魔法障壁を………と思い、イメージを構築するが、障壁は現れない。

 視界に映る青色のゲージを見て気が付いた。NPが足りない!!?

 咄嗟に左腕を突き出した。


「うぐっ!!」

「ツカサ君!!?」


 直後、柳瀬さん悲鳴と共に、腕に味わった事がない程の痛みが俺を襲った。

 腕に人攫いが振り下ろした剣が食い込んでいた。

 余りの痛さに叫んで痛みを和らげようと本能が疼く。が、歯を食いしばって別の事に意識を向ける。

 アイテムボックスを開いて右手に『鋭い針杖』を出現させる。

 そのまま、力の限りを込めて、針のように尖っている杖の後端を振り下ろす。


「あのまま寝てたら殺さなかったのに、なぁ!!」

「ゴッバッ!!ま、魔法使い、じゃなかったの、か………」


 勢い良く突き刺した杖は、人攫いの心臓付近を貫いた。

 瞬間、口元から血を吐き出して、俺にかかってしまう。

 心臓を貫かれた人攫いは、俺が剣と見間違える程の杖で突き刺したのを見て、本当に魔法使いなのか、と口にする。それが最後の言葉になった。

 俺の視界に見える敵のHPゲージ。もしかしたら、生き残れたかも知れない程に残っていたHPゲージも、俺の一突きで消し飛ぶ。

 グングンと減っていき、最後には消えて無くなった。

 死んだことによって支えていた筋肉が役目を放棄し、俺に全体重がのしかかる。


「って!!重いんだけどなぁ!!!」

「……はっ!!つつつ、ツカサ君!!!大丈夫なの!!!?」

「大丈夫……だと思いたいなぁ。腕は物凄く熱くて痛いし、魔力不足でフラフラするけど、うん。たぶん大丈夫」

「それ、全然大丈夫じゃないよね!!?」


 ははっ、さっきまで殆ど死にかけてた柳瀬さんが言うセリフじゃない。

 でも、それだけの反応が返せるなら、柳瀬さんは大丈夫そうだな。

 それよりも、魔力回復しなきゃ………。魔力が無ければ、何も始まらない……。


 アイテムボックスを開いて、魔法薬を取り出す。

 いつもと違うやつで、いつも使っている奴が低級だとすれば、これは中級の物。

 俺はそれを開けようとする。が、片手では上手く開かない。

 見かねた柳瀬さんが助けてくれる。


「私が開けるよ。えいっ!」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして。それで、その剣は私が抜いてあげようっか?」

「いや、血が垂れていると思うけど、こう言った物はまだ抜かない方がいい。むやみに抜くと傷口から血が噴き出て出血死するから」

「そ、そっか。他に私に出来ることはない?」

「……だったら、綺麗な布を持って来て欲しいんだ」


 「分かった」と柳瀬さんは返事を返すと、部屋の中をキョロキョロと見渡して何処かに行った。

 柳瀬さんも先まで瀕死だったから、あんまり動かないでほしいんだけどなぁ。



 俺は柳瀬さんに開けてもらった魔法薬を飲み干す。

 やはりと言っていいが、この世界の回復薬や魔法薬にもランクが存在する。低級、中級、上級の三段階に分かれている。

 低級だとかすり傷を直す程度、薬草よりも少しだけ効果がアップしたレベル。中級だと骨折レベルが徐々に治っていく。上級だと重度の怪我でも完治出来る効果を持っている。

 当然、効果があるだけに高い。更に言えば魔族と戦争中なこの状態、当然戦前が優先的に消費される。上級ともなると、製作も難しく、中々お目目にかからない。

 かと言って、地方冒険者たちが全く使えないレベルで枯渇しているわけでもない。上級は戦前に、中級は高いけど街でも買えないほどでない。初級は冒険者どころか、一般人の死亡率を下げるためにも大量に出回っている。


 話は戻るが、俺が飲んだのは中級の魔法薬。

 回復薬のランクと特に変わった点はなく、違うのはダメージが回復するのではなく、魔力が回復するてんだけ。

 ゲームの様に、回復量が違うランク付け。

 前にも言った通り、俺はゲームとかでも過剰に準備をしてから戦闘に挑む。

 パソコンは持っていなかったから、MMORPGはしたことがない。だけど、ドラ〇エなどはプレイ済み。

 それと同じように、この世界でも常に初級の回復薬や魔法薬を二十本以上ストックし、中級も五本は入れている。


 今の様な緊急事態に備えてだったけど、役に立ってくれたみたいだ。

 早速効果が出てくる。俺の視界に映るNPゲージは五分の一程回復した。

 中級でこの程度か……と思うかもしれないけど、俺の魔力量が多すぎるだけ。普通なら半分以上は回復している。

 俺もその程度あれば十分。


「ツカサ君合ったよ!!はい、綺麗な布だよ」

「柳瀬さんありがとう」


 柳瀬さんは魔法袋から綺麗そうに見える布を取り出して、俺に手渡して来た。

 自分の荷物が入っている魔法袋を探しに行っていたのか。


 俺は柳瀬さんにお礼を言って、片手で掴んだ。

 そのまま剣の柄を掴む。


「私がしよっか?」

「いや、自分で対処出来るからいいよ。それよりも、周囲の警戒をしてくれたら助かる」

「…あっ!ここってまだダンジョンなんだっけ」

「そう。………本当は柳瀬さんにはゆっくり休んで欲しいんだけど、働かせちゃごめん」

「ううん!!ツカサ君が回復魔法をかけてくれたから大丈夫だよ!!」


 何となく「空元気」そう思った。

 俺がもっとうまくやれば、怪我なんか負う必要が無かった。

 そしたら、柳瀬さんはただ身体を休めることに集中できたのにな。

 ………二人だと、限界があるのか………。今後の課題っと。一つ、気になる点もあるしな。


「柳瀬さん、これでも食べてて」

「え?あっ、っと。これはドライフルーツと干し肉?」

「非常用だけど、とりあえずそれでも食べて。昨日から何も食べてないように見えるから」

「そ、そうだけど……何で分かったの?」

「ゲームの様な視界」

「あっ!そっか」


 柳瀬さんは納得すると、俺が渡した非常食を食べ始めた。

 これで、柳瀬さんがかかっている異常状態『飢餓』は治るだろう。

 その他の異常状態『麻痺』と『毒』?回復魔法で治りましたが?


 再び自分の怪我の処置に集中しようか。

 剣の柄を握って引き抜く。同じ状態だと慣れていって痛みを感じずになっていたけど、引き抜くというアクションを与える事で痛みが戻ってくる。

 引く抜くと同時に血がビチャビチャと噴き出してきた。

 俺は出血を出来るだけ防ぐために、柳瀬さんから貰った布を傷口に当てる。

 NPを確認して……よし、回復魔法分は溜まっているな……元の怪我をしていない肌をイメージしながら魔力を注ぐ。

 自分に影響することだからか、詠唱は要らない。


 回復魔法を発動して少しだけ経つと痛みが引いてい来たのが分かった。

 恐る恐る、一部血を吸って真っ赤に染まっている布を外してみると、元通りの腕がそこにあった。

 傷があった場所を触ったり、腕を曲げたりするが、何も違和感はしてこない。完治完了。


「ふぅ~」


 ひと段落付いた感じがして、ため息がもれてしまう。

 だけど、やることはまだある。

 とりあえず、まだ万全の状態じゃない柳瀬さんを連れて帰らなくちゃ。


 とその時、部屋の外に反応が見えた。

 モンスターを示す赤点ではなく、人間を示す白点。二人分だ。


「柳瀬さん、誰か入ってくる」

「わ、分かった!」


 柳瀬さんに注意を飛ばす。が、それも気鬱に終わった。

 なぜなら、部屋に入って来た人物は顔見知りだったからだ。


「ほうら、わたくしの言った通りですわよ」

「あぁ、流石はエーゼだな。助けに来たよツカサ君、ホノカさん」


 キラキラとした金髪にブルーの瞳の美形青年と薄クリーム色の髪の毛にお嬢様口調の美女。

 見違えるはずもない。俺が知っている冒険者で「如何に物語の主人公!!」という特徴を持った奴は彼らしか知らない。

 初めてダンジョンに潜った時に、休憩所でお世話になったエドさんとエーゼさんだ。

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