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73話「迫る危機」

更新お待たせいたしました。二話連続投稿ですので、前話からどうぞ。

 大分先まで進んだ。

 下の階に潜っていくほど、他の冒険者パーティーと出会う頻度が下がっていく気がする。

 今の階層は19階層。ツカサ君と潜った時よりも倍に近い。

 敵の強さも、一階層に比べて目に見えて分かる程強くなっている。

 例えばゴブリン。

 何も防具を装備していなくて、ナイフみたいな刃物しか持っていなかった低階層と比べて、この辺で出てくるゴブリンは装備品もキチンとしている。

 ちゃんとした防具と武器を持っている。

 単純な行動を繰り返すだけではなく、私の攻撃を避けてカウンター攻撃のようなものも放ってきた。

 それでも、ゴブリンロードには遠く及ばないお陰で、油断しなければ簡単に倒せるレベルだ。


 ゴブリンの攻撃を避けて首に向かって攻撃を仕掛ける。

 けど、避けられた。

 悪態を吐いてゴブリンに視点を戻すと、私に剣を振り下ろしていた。

 避けられないと分かった私は、腕を動かしてゴブリンの剣に私の剣をぶつける。

 キンッ!!と音を立てて剣がぶつかった。

 ここからは力比べ。

 元の世界だったら絶対に負けていただろうが、この世界ではモンスターを倒すごとに成長するらしく、私の力は結構上がっていた。それでいて、筋肉がついたりせずに元の体型なのは嬉しい。

 力を少し込めるだけでゴブリンの剣は、ポキッと折れてしまう。

 私の力が強す過ぎるわけじゃない!!この剣が強いんだから!!消してバカ力が強いとかでは断じてない!!

 剣が折れてしまった事に驚いているゴブリンに、そのまま剣を振り下ろして斬る。


 戦闘終了だ。

 そう思った瞬間、後ろから強い衝撃が私を襲う。

 痛む背中を無視して振り返ると、弓矢を持った骸骨が見えた。


 が、骸骨!!!

 子供のころに見たことあるアニメの骸骨とは全然違う!!

 なんかこう………骨がリアルで怖い!!!


 初めて遭遇する種類のモンスターに、私は直ぐに動けないで居た。

 骸骨は私の様子を見てケタケタと嗤う。

 壁が光っているけど、薄暗い洞窟には変わりない。

 その場所の相乗効果があって、骸骨は余計に怖く感じた。

 骸骨は嗤いながら矢を用意して、弓を引き絞って私に狙いを定めた。

 矢が飛んで来る。私はやっと動く事ができた。

 危機一髪。寸前の所で回避できたのは、私の反射速度が上がっているおかげだろうか?元の世界に居た頃なら絶対に反応出来てないはす。


「あ、危なかった…」


 と言ったものの、まだ安心は出来ない。なぜなら骸骨の攻撃は止まっていなかったからだ。

 続けて矢が飛んでくる。

 今度は冷静になって避ける。矢を叩き落とす。

 隙を突いて一気にダッシュ。骸骨に接近して剣を振り降ろす。


 ガシャン!とと音を立てて崩れ落ちていった骸骨。

 こ、怖かった~。骸骨ってホラーゲームかな!!?

 ゴブリンもグロテスクな見た目をしているけど、まだ許容範囲。でも、骸骨はない!!


 飛び道具くを使ってくるモンスターとの戦闘は、ツカサ君が居ると居ないとでは全く違う。

 飛んでくる矢を斬るなんて芸当、絶対に昔だった出来なかった。

 それだけ成長しているんだって嬉しくなる。


 私は油断をしていた。

 長い間ノンストップでダンジョンを進んでいたせいもあって、集中力が限界に近かったのもあるのかな?

 そろそろ休憩が必要だったのは確か。

 それでも早く進まなきゃ!!と言う思いが私は焦らせていた。

 ツカサ君が居たら絶対に警告してくれたはず。だけど、居ない者は居ない。


 ほっとした事によって剣を納刀して、地面にペタンと座り込んでいた私。

 その後ろからカタカタと音が聞こえてくる。

 何だろう?私は振り返ってみた。

 すると、バラバラに崩れていたはずの骸骨が立っていた。


 え!?復活した!!?

 でも、ちゃんと倒したはずじゃ……。

 忘れていた。ダンジョン内のモンスターは倒させると消える事を。


 私が振り返って時には既に遅かった。

 骸骨は弓を振り絞っていて、矢は発射寸前。

 緊急回避で横に転がれば、まだ攻撃を避けられる余地があっただろう。

 でも、私の体は動かなかった。


 また、死んじゃうの?こんな場所で?

 ツカサ君が居ないこんな場所で?

 無理をしたせいだ。ツカサ君やメリーちゃんから無理だけはしないようにって言われていたのに……。

 自業自得だ。


 この世界に召喚されてから数か月。

 長くも短くもある期間は、戦闘に慣れたつもりになるには十分な時間だった。

 たった数か月程度の戦闘経験では、無意識に身体が反応する癖が身体に染み付かない。

 だから、緊急事態に対する行動が出来ずに、ただ骸骨の行動を見ているしかできない。


 目をつぶって来るはずの痛みに身構える。

 …………………………………………

 いくら待っても痛みは来ない。

 それどころか、ガシャン!ガシャン!と何かが崩れる音が二度聞こえて来た。


「え?」

「危なかったな。おい、そっちは片付いたか!!?」

「全く。お前の謎の六感はどうなってんだよ」


 二人の冒険者さんだ。

 ガシャン!と言う音は、私を守るように立っている方の冒険者が骸骨を倒した音だったらしい。

 もう一人はダンジョンの奥から走って来た。

 どうやら、私はこの人に助けてられたらしい。


 た、助かった~~。

 っと、安心している場合じゃない。

 動かなかった私を助けてくれた人にお礼を言わなくちゃ!


「あの、助けて頂いてありがとうございました」

「良いって良いって。困った時はお互い様だぜ!」


 私が頭を下げると、冒険者さんは「気にするな!」と言ってくれた。

 私がオロオロしている間にも、もう一人の冒険者さんが周囲の安全確認をしてくれる。

 私は何もしていない。


 あれよあれよと流されていると、小休憩の準備が整ってしまう。

 と言っても、ダンジョン内に安全地帯など各階層に一か所しかないので、通路の片隅に荷物を降ろしただけだけど……。


 二人とも中年の男。

 物語のようにイケメンとか渋いおじ様とかではない。

 現実は物語のように上手くいかないんだね。

 わ、私にはツカサ君が居るから惚れたりしないけど!!


 水筒からコップに移した飲み物を渡される。

 自分のがあると断ったんだけど、押し切られた。

 で、聞かれるのは当然、一人でここにいた理由。


「んで、どうしてこんな場所に一人で居たんだ?正直言って、ここは一人で潜るにはちっとばかり深すぎるぜ」

「え、えっと……」

「あぁ、怖がらなくても大丈夫。おじさんたちはこの辺を狩場にしているDランクコンビさ」

「それで?どうして一人でこんな場所に?見た感じ、ソロではなさそうだが?」

「ソロ……ソロじゃなかったです。はい。でも、今は……」


 私の事情を聞いてくる二人。

 初対面なのに話すべきれは無いと、冷静に考えると分かり切った事だけど、私は事情を説明してしまった。

 危険だった場面を助けて貰った恩があったからかな?

 それとも、好きな人から振られたけど、諦めて切れないことを相談したかったのかもしれない。

 メリーちゃんにも相談してたけど、知らない人に話して楽になりたかったのかもしれない。


 私は何でこんな場所に居るかを話した。

 ツカサ君と上手くいっていたのに急にコンビ解消を告げられたこと。

 私はまだコンビを解消したくないこと。

 どうしたらまたコンビを組めるか考えた結果、自分がもっと強くなればいいと思ったこと。

 強くなる為、ツカサ君に認められる功績をたてる為にダンジョンに潜っていたこと。


「そっか。それは大変だったな。でもな、急ぎ過ぎる!!!」

「お、おい!!初対面だぞ。いくら何でも……」

「いいや!!こいつはまだ十代なんだ。三十代過ぎているおっさんとは違うんだよ!!おい嬢ちゃん」

「は、はぁ。何ですか?」

「一時期の感情でこんな所でまで潜ってくるな。ダンジョンの中でも街の外でも、この世界は危険です満ち溢れている。それに、ちょっと前までコンビで依頼をこなしていたんだろ?コンビとソロでは勝手が違う」

「そ、そうですね……」


 少し新鮮だった。

 この世界に来てから出会った人は皆、私やツカサ君の事を褒めてくれることはあっても、こんな風に叱ってくれる人は初めてだったから。

 この人は優しいんだな~。と思う。

 だって、初対面の私に嫌われる覚悟を持って言ってくれているのだから。


 そして、ツカサ君が居ないと私はダメだと再確認する。

 だって、ツカサ君が居たら、こんなハイペースで潜れることなく、安全なペースで進んでいたはず。

 私が突っ込み過ぎると、後方から冷静に指示を出してくれる。

 さっきだって、骸骨に攻撃して私を助けると同時に活を入れてくれるはず……。

 ……なんか、知らない場所でツカサ君に依存してたんだと気付く。

 ぜんぶ、ツカサ君が居たら起こらなかったことじゃん………。


 俯いた私にを気遣ってか、二人とも黙る。

 グイグイ来ない方の冒険者さんがグイグイ来る方の冒険者さんにチラッと目配せした。

 私にもう一度飲み物を進めて来る。


「ま、まぁ。そこまで気を落とさないで。ここまでソロで潜って来れているのは、戦闘を避けてたからじゃないんだろ?」

「…はい。この階層に入ってからも戦闘はしてました……。骸骨に驚いちゃっただけです」

「うん。だったら実力は申し分ないんだね。コンビと違うソロ特有の勝手が起こっただけだよ」

「そこが命取りじゃねぇかよ。冒険者っつうのは生きてこそなんだよ」

「そこは助かったからいいじゃない?結果論だよ。それに休憩したら直る程度のミスさ」


 もう一人の方も優しい。

 あまりしゃべらないから怖い人かと思ったけど、単に機会を伺っていただけか。

 その人の話を聞いて、そういえば休憩してなかった……と気が付いた。


「で、僕たちは本格的な休憩をしようと思ってたんだけど、一緒にどうかな?」

「えl?えっと……」

「初めてこの階層に来たなら、場所も分からねぇだろ。これも何かの縁ってやつさ」

「で、ではお言葉に甘えて……ご一緒させてください」

「よし!そうと決まれば早速移動だな」


 あれよこれよで休憩まで一緒に取ることになった。

 グイグイ来る方のおじさんさんが先頭、もう一人のおじさんが最後尾。

 つまり、私は挟まれるようにして移動する。

 自然と私を守ってくれる配置で、やっぱりベテラン冒険者はこう言った気遣いが出来る物なのだなぁ。


 だけど、守られているだけでは申し訳ない。

 ダンジョンなので、一回もモンスターと出くわさない。なんてことは起こらない。

 途中で遭遇したモンスターとの戦闘に、ちゃんと参加させてもらうよ。

 許可を貰ってダッシュ。コウモリみたいなモンスターを一気に斬り捨てる。

 全部倒し終わった後、今度こそ油断はしない。

 私の戦闘を見た二人のおじさんは、こそこそと二人だけで話している。

 一体どうしたのかな?


 道中は少しだけお話というか、説明を受けた。

 曰く、この階層のメインモンスターはコウモリみたいなモンスターで、骸骨は中々現れないレアモンスター。

 普通なら一階層降りた二十階層に出現するらしい。

 要するに、運が良かったってこと?でも、死にそうになったんだから運が良かったとも言えない……。

 骸骨は打撃攻撃が一番有効らしく、一度崩れても骨が無事なら再構築して襲ってくるそうだ。

 私が油断したのはこのせい。

 ツカサ君が居たら、絶対に教えてくれたのにな……。


 私が想像以上に強いと知ったおじさん二人は、私に戦闘を任せてくれた。

 危ない時は助けると言っているし、私の目的としてはありがたい。

 一番の気持ちは、折角休憩所まで案内してもらうから、このくらい安いもの。

 私に出来る事なら、任せて下さい!



 モンスターとの戦闘は数回。

 そんなに多くはないけど、そろそろ肉体的疲労を感じ始めた頃。

 ようやく休憩所にたどり着いた。

 らしいが、目の前に広がっているのは、


「壁……ですけど?」

「あぁ言ってなかったけど、壁の中にあるんだよ。一見普通の壁に見えて……ほら。すり抜ける」


 壁を触って実演してくれるおじさん。

 ほんとに手が壁をすり抜けている。

 私、これ知ってるよ!!隠し部屋って言うんだよね!!


 通り抜けられる壁をすり抜けて、私は休憩所に入った。

 中はちょっと汚いものの、何処か生活感があった。

 とてもダンジョン内とは思えない。


 荷物を降ろして端の方にチョコンと座った。

 休憩と言ったらご飯だけど、作る気分にはならない。

 ドライフルーツと干し肉を食べながら、水筒からお水を飲もうかと思っていると、おじさんたちにご飯を誘われた。

 ここまで来たら、ご飯を奢るのがセオリーだってグイグイ来る方のおじさんが言ってきて、又しても言いくるめられてしまう。

 戦闘を引き受けてくれたお礼って言われたら、断れない。


 なんだか、色々とお世話になっている。

 帰ったら絶対にお礼をしないと!!

 お食事を奢るくらいで大丈夫かな!?高価なレストランとかがいいのかな!!?


 と、待っていると、眠くなって来ちゃった。

 何でだろう。ついさっきまでは眠くなかったのに。

 身体に力が入らなくなって、地面に倒れてしまう。

 な、何で……?



「お、やっと眠ったか」

「やっとかよ。ったくどんだけ耐性が強いんだよな。この小娘」

「静かにしろよな。もう動けないと思うが、万が一ってことがある。慎重にだ」

「分かってるって。何時ものように売る……んだが、ちょっとくらい楽しんでも問題ないろ」



 何か聞こえる。

 耳には入ってきているけど、頭が朦朧として働かない。

 霞んで見える視界には、先ほどまでとは全く違う表情で私を見下ろしている、おじさんがいた。



 そこで私の意識は途切れた。

長かったホノカ視点もそろそろ終わりです。次回は前半ホノカ視点、後半からツカサ視点に戻る予定(ここ大事!!)です。

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