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70話「ホノカの異世界生活――後半」

 あの後、休憩をはさみながらスライム討伐を続けた。

 モンスターの位置は全てツカサ君が見付けてくれる。

 スライム以外のモンスターにも出会ったけど、今は相手をしないと言う事で、避けたり立ち止まって回避した。


 大量のスライムジェルを手に入れた私達は、日が暮れる時間帯になると町に戻ることにする。

 ツカサ君曰く、「目的の数は集まっているし、初めての異世界を野宿はしたくない」とのこと。

 私も野宿は嫌だ。汗だってかいちゃったから、お風呂に入りたい。


 それと、ツカサ君がアイテムボックスなるものが使えた。

 子供の頃に少しだけやった事あるゲームの記憶を引っ張り出すと、確かに主人公は明らかに見た目よりも多くの物をバックに入れていた。

 それと同じ原理と考えたら良いそうだと、ツカサ君は説明してくれる。

 魔法便利だね!それに、また二人だけの秘密が増えた。




 メリーちゃんの下に戻って依頼のスライムジェルを渡すと、メリーちゃんから依頼の完遂確認を貰う。

 元の世界では月に一回、給料日があって一気にお金が入って来るけど、冒険者は依頼の完遂が確認されるとお金が支払われるそうだ。

 一日で終われば日給制。ツカサ君が真っ先に冒険者ギルドに行って、冒険者職業に就いた理由が分かった。



 その後は、ギルドで晩御飯を食べると思ったら、ツカサ君が「ギルド内での食事は、近くは控えた方がいいかも」と言ったので、私もツカサ君に着いて外に出る。

 途端にギルド内での、仕事終わりの汗臭さやお酒や重い料理が混ざった匂いがマシになって、新鮮な空気に包まれた。

 早歩きで先を行くツカサ君に、何を探しているのか尋ねる。すると、丁度目的の物を見つけたらしい。

 串焼きを売ってる露店だった。まさかこれで夕食を済ませるつもりだろうか?と見ていると、私の予想通り。


「いただきます。はむっ!」


 結局、ギルドで食べるよりも安いと言う事で私も買った。

 毎日これだと栄養が偏るし、何よりも量が足りない。それでも、今の私とツカサ君は節約しないといけないので仕方なくだ。

 うん!!この世界初めての食べ物選びは成功だね!!美味しい!!!

 ところで、この肉は何の肉なのかな?そう思ったけど、結局考えるのを辞めた。



「ツカサ君はそれだけで足りるの?」


 私はふと疑問に思った事を口にする。

 私が五本の串焼きを買ったのに対して、ツカサ君が買ったのはたった二本。私の半分だ。

 串焼き一本はかなりの量が刺さっているけど、所詮は串焼き。二本だと全然足りないんじゃないか?と心配になる。

 だって、私は五本でも満足しないくらいだよ?運動した後だから、一杯食べないとお腹いっぱいにならない。


 そう思ってツカサ君に聞いてみたわけだけど、


「いや、いつもこのくらいだから」


 と、まさかの返答!!

 もう少し食べてほしい気持ちを思いながらジト目を送ってみるが、無視して宿探しに集中していた。

 このままだと絶対に倒れちゃう!!今はともかく、金銭的余裕が出来たら絶対に普通の食事をとらせよう!!

 そう決めてツカサ君の後を追いかけた。

 う~~ん!!安くても結構この串焼き、美味しいなぁ。






 心配だった宿探しも、十歳くらいの男の子の後をついて行ったら解決した。

 ツカサ君曰く、この年で家業の手伝いをするのは当然な習慣だそうだ。

 この辺りは元の世界と全く違ってビックリ。


 で、肝心な宿なんだけど………。


「じゃあ、寝るから」

「…うん。お、おやすみなさい」

「……おやすみ」


 何故かツカサ君との2人部屋になちゃった!!


 宿を取る時の話し合いを全部ツカサ君に任せたら、いつの間にかツカサ君との相部屋になっていた。

 いや、私もツカサ君も、望んで相部屋になったわけではない。

 夜になっても宿が決まらず、どうにか一部屋空いている所に急いで入ったのが原因だ。

 もっと早くから行動していれば、二部屋確保出来てたかもしれない。


 ツカサ君は決めるとき、一応私に聞いてきたんだけど、その時私は上の空で余り話を聞いていなかった。

 だから話も聞かずに頷いてこうなった訳だ。

 ツカサ君は料金が浮くと喜んでいたから良しとするべきなのか……分からない。


 お金や部屋が空いてなかったから仕方ないけどさ!!もうちょっと何か反応があっても良いんじゃないかな?

 私は好きな人と同じ部屋、と言う現状に心臓がバクバク言っているよ!!

 この宿の女将さんには茶化されるし……私だって少しは期待していたのに………っ!!

 なのにこの人ときたら!!!椅子に座って一人で寝ちゃったの!!?

 私はこんなにもドキドキで眠れないのに!!


 部屋に入って早々寝てしまうツカサ君に、私は複雑な気持ちを抱いて睨む。

 一応、ベットで寝るのは気が引けたみたいで、ソファーで寝てくれているけど、体痛くならないのかな?

 譲られたこちら側の気分としては、微妙な所だ。

 だけど、ベットで寝る以外に選択肢が見つからなかったので、仕方なく寝転んだ。

 色々起こって疲れているだろうから、きっと直ぐに寝られるはず。




 そう思ったんだけど………。

 好きな人と同じ部屋で寝泊まりと言う現実が、私を簡単に寝させてくれなかった。

 ベットに入って寝転んでも心臓の高鳴りが全然収まらず、寧ろどんどん高まっているようにも思う。

 私は体制を変えようと思い、何も考えずに寝返りをした。

 すると、ソファーで寝ているツカサ君が視界に入る。


 寝ているツカサ君の顔なんて初めて……。

 どうしてこんなにも、胸の高まりが抑えられないんだろうか?

 好きだから?…それは分かっている。

 告白したり付き合ったりしたいと思っているけど………やっぱり恥ずかしい。顔から火が出そう。

 付き合ったら手を繋いだり、抱きしめたり、キキキスをしちゃったり。その先も………。


 わぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 変な事を想像したせいか、体が熱い。

 少し離れた位置にツカサ君が居るのに、私は出来るだけ声を抑えて悶える。

 こ、こんれだと全然寝れないよぉ~。


 結局色々としてしまい、寝付けたのはかなり遅い時間になってからだった。



 こうして一日目が終わり、私とツカサ君の異世界生活が始まった。











 二日目以降も波乱万丈な毎日だった。

 カードックと言う珍しい魔物を私とツカサ君で倒したり、大量のゴブリンを倒したりと依頼は順調。

 初めて人型モンスターを倒した時に覚えた恐怖感も、ツカサ君のお陰で乗り越えられた。

 この世界はゲームだ!!ツカサ君が言うなら間違いないんだよ!!


 事故で、下着姿をツカサ君に見られたりもした。

 恥ずかしかったけど、妹みたいと言われたショックで吹き飛んだけど……。

 でも、恥ずかしそうに視線をずらしていたところから、普通な感性も持ち合わせているんだと嬉しかった。

 二次元にしか興味ない風だったから、私にもチャンスがあるんだよね!!


 この世界に転生してから時間が経った。

 私とツカサ君が拠点にしていたクレーミヤと言う町から、ツカサ君は移住をするらしい。

 ツカサ君には一人でも生きていけるって言われたけど、私は付いて行くことにした。

 折角普通の話は出来るようになったのに、ここで離れてやるもんか!!


 護衛依頼は初めてだったけど、他の冒険者の方とも知り合えたいい機会になった。

 みんな優しい方で、ツカサ君の実力に驚いている。私も自分のことのように鼻が高い。




 南都アルケーミに着いてからも相変わらずな毎日だった。

 ツカサ君と一緒に出来そうな依頼を探して、モンスターと倒したり素材を収集したりと毎日のお金を稼ぐ。

 借金も全て返済し終わり、今は貯金を少しずつ溜めている。


 後は、護衛依頼で仲良くなったオング君とイリちゃんや『鉄壁』のみなさんとも依頼を数回合同で行った。

 ツカサ君はベテランのノウハウを学べて良かったと言っていた。

 私からすれば、ベテランさんと同じくらいの知識を持っているツカサ君が凄いと思うけど、本人は本を読んで得た知識を使っているから、と言い訳ばかり。

 私からすれば、本を読んでいるだけで色んな知識を覚えているどこが普通なのか教えて欲しいところだよ。




 他にあったことと言えば、初めて新しい武器を新調したことだろう。

 何でも、休みの日に一人で依頼に出掛けてドワーフと言う人間とは少しだけ違う種族と知り合ったらしい。

 その話を聞いた時、私は足手まといなのかな?と思ってしまった。

 だって、ツカサ君は一人でも依頼を完遂する事が出来るから………。

 私にはまだできない。私はまだ、ツカサ君が居ないと何も出来ない弱虫だ。


 ドワーフの老人から彼女と言われた事は嬉しかったです。


 このままでは、一人でもこの世界を生きられるツカサ君から、何でも頼ってしまっている私は見捨てられてしまうかもしれない。

 だから、私はもっと強くなろうと決意を改める。

 まず手始めに、ドワーフの老人―ゴーヴァストさんから新しい武器『血の針剣』(ブラッドレイピア)を買った。

 柄は黒く、鞘は岩みたいな色。肝心な刀身は血のような真っ赤。初めて見た時、凄く綺麗な色をしていると思った。

 と同時に、強くなるには私自身だけじゃなくて、武器もいいものを使わないと!!と考えて、勢いで買ってしまう。

 初めに言われた金額は銀貨十枚。貯金しているけど、中々手を出すには難しい金額だ。

 でも、ツカサ君のパートナーと言う事で半額に。これなら支払える!!!

 後で気が付いたけど、パートナーって言われて、恥ずかしくも嬉しくもあった。


 とにかく、これでツカサ君に一歩近づいたかな?

 その肝心なツカサ君も、マントと杖を新しくしてかっこよく……強くなってしまったが。


 さらにその後、ツカサ君の新しいアクセサリーをどれにするかを巡ってゴーヴァストさんと争ったが、ツカサ君はどっちも選んでしまった。

 そりゃそうだとよね!!お金に心配ないなら、どちらも選んでしまえば関係無いよね!!

 でも、私の方だけを選んで欲しかった気持ちもある。残念。




 武器や装備品も新調したということで、ダンジョンと呼ばれる地下施設に潜る事になった。

 本当はダンジョンに潜る予定が先に入っていて、その為の装備品新調。


 人工的に作られた場所ではなく、モンスターが自然に発生する溜まり場。それがダンジョンならしい。

 繁殖で増えることは無く、時間経過によって生まれる。倒したモンスターの死骸は残らず、ゲームのようにアイテムがドロップする。

 自然の環境とは全く違うらしい。全部ツカサ君がレクチャーしれくれた内容だ。


 自然発生した場所と聞いていたから、テレビのバラエティ番組で見かける真っ暗で進みにくい洞窟を想像していたけど、そんなことない。

 壁や道は整備されているし、光源は松明も無いのに光る壁。ちょっと幻想的で綺麗だ。

 この辺の原理のツカサ君が説明してくれる。やっぱり頼りになる。



 ダンジョン内での戦闘も順調に進んで行った。

 ツカサ君がマップを使って周囲を索敵し、ツカサ君の指示に従って私が切り込む。

 剣を使って生き物を殺すと言う行為にも、もう慣れてしまった。

 本当はいけないことだけど、ツカサ君と一緒に生きる為には、仕方ない事だと割り切るしか方法が無いから。

 一撃で行動を止めて、二撃目でトドメを刺す。

 大抵のモンスターはこれで倒れていく。ダンジョンでも同じだ。


 苦戦したことも、怪我をしてしまった事もない。

 だから、私とツカサ君は絶対に負けないくらい強いんだって錯覚してしまう。

 その油断が、この世界では命取りなのに。



 八階層まで潜ると、小休憩を取る事になった。

 今までも休憩を挟んでいたけど、食事をしたり交代で睡眠を取る。

 絶対、私に合わせてくれているのが分かる。

 だってツカサ君、平気で朝と昼を食べなかったりするんだもん!

 ツカサ君自身は大丈夫って言ってるけど、見ているこっちが空腹で倒れそうになる。

 だから、私がお願いして1日三食食べて貰えることにしたのだ!

 なぜか私が強くお願いすると、ツカサ君は大体折れてくれる。

 これって親しくなって来ている証拠かな?

 この世界に来たての頃は絶対に譲ってくれなかったからね!


 ツカサ君がマップで休憩所を発見すると、急いで向かった。

 何故なら、私のお腹はペコペコで限界だったから。

 休憩所に入ると、私とツカサ君みたいなコンビが1組いた。

 初対面でも挨拶を忘れずに!と言うのが、元の世界で部活の先生に口すっぱく言われていた事なので、元気良く挨拶を交わす。


 二人ともビックリするくらい美形だった。

 男の人はエドさん。サラサラな金髪にブルーの瞳を持ったイケメン。でも、私の好みでは無い。

 女の人はエーゼさん。クリーム色の髪の毛に、シミ一つない綺麗な肌。

 まるで物語に登場する王子様とお姫様見たいだと思ったのが第一印象。

 二人とも剣士と魔法使いコンビ。


 どうせなら、とエドさんに誘われて一緒に食事をすることに。

 うんうん。他の冒険者との交流は大切だよね!!


 と、ここでツカサ君が二人に驚かれた。

 何か、無詠唱魔法?と言うツカサ君が何気なく使っていた魔法が、普通の魔法使いには扱えないものだったらしい。

 そういえば、『鉄壁』の方々や、イリヤちゃんとオング君と一緒に依頼をする時は、ツカサ君何時も省略詠唱?をしてた様な気がする。

 って!!エーゼさんに詰め寄られている!!!むぅ~~!!!私には何も思わない癖に!!!

 結局、ツカサ君はエーゼさんに言い寄られて何も感じなかったらしい。コミュ障なのは関係無いと思うよ?



 ご飯を食べ終わった後、私は同じ剣士だと言う事で、エドさんと話が盛り上がった。


「へ~数か月前からツカサさんと二人で」

「はい。私が剣士の適性を持っているので、前衛で敵を引き留めてツカサ君が後ろから援護してくれるんです。エドさんのパーティーはどんな風に戦うんですか?」

「そうだな~。俺とエーゼが格好撃破かな?エーゼはああ見えて、近接戦闘もある程度出来るからね」

「ほへ~~。私は剣を振ることしか出来ないから羨ましい限りです」

「俺でよければアドバイスは出来ると思うよ?ただ、俺は両手剣使いでたまに簡単な魔法も使うから……」

「凄いですね!!!だったら、機会があればよろしくお願いします。私は一撃離脱を主にしていますけど、他の戦い方も知っておいて損はないですから」


 とまぁ、甲斐なく盛り上がってしまった。

 私が他の男の人――しかもイケメン――と話していて、ツカサ君は嫉妬とかしてくれないかな?

 なんて思ったりしちゃった。

 そしたら視線を感じた。チラッと確認すると、エーゼさんが私を睨んでいる。

 えっ!?そっち?っていうか………。


「……エドさんエドさん」

「ん?どうかした?」

「エドさんってエーゼさんと付き合っているの?」


 私はエドさんとエーゼさんの関係が気になった。

 私もJKなのだ。人の恋バナとか一応気になる。

 エドさんに小声で聞いてみた。


「………付き合ってはいないよ。でも、大切には思っている」

「…………片思い?」

「あはは。どうだろうね。さてと、お喋りはもうお終いにしようか」


 こう言った事に疎い私でも今のは分かる。

 はぐらかされた?


 気になるの確かだけど、今日初対面の他人同士。

 込み合った話を深く聞きすぎるのも良くない。

 私はグッとこらえて毛布に包まった。

 疲れていたものあって、目を閉じると直ぐに私の意識は落ちていく。


 数時間後、まだ寝むたい目をこすりながら起きると、ツカサ君と火番を交代した。

 交代直前にツカサ君とエーゼさんが何か話していたけど、私はそのくらいでは嫉妬していません。

 エーゼさんがエドさんと交代する前にお話をしたけど、嫉妬なんかじゃないもん!!


今回でホノカ視点終わらせようと思ったけど無理だった。次回で終わらせたい(願望)

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