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69話「ホノカの異世界生活―一日目前半

 次に目が覚めると、そこは知らない世界だった。

 見た事が無い建造物。通り過ぎている人も私が知らない服。

 例えるならそう、中世ヨーロッパに迷い込んだみたいだ。


「ここ、何処?」




 私は高校一年生。もう直ぐ二年生に進級する間近だった。

 そんな私は『異世界』とやらに召喚?されてしまったらしい。

 らしい。というもの、私はこんな話初めてで、全く理解できないで居たから。

 そんな私がパニックにならずに、状況をある程度理解できたのは、


「ねぇ易波君。私達何処に向かっているの?」

「…冒険者ギルド」



 目が覚めた私の隣に好きな人が居たから。




 初め私に気がつかなかった易波君は、なにやら興奮していた。

 本を読んでいる時みたいに表情がキラキラしている。

 私の様に急に変な場所で目が覚めたとは考えにくい。なので、私は易波君についていくことにした!


 って私の事忘れている!!私は片時も忘れた事ないのに!!

 あぁ~~!!逃げないでよ~もう!!




 何とか追いついて話し合う事が出来た。

 やっぱり落ちついているツカサ君に、私は上目遣いで易波君に頼み込む。

 並んでみて初めて気が付いたけど、中学の頃よりも背が伸びていて、私よりも大きくなっている。


 それで、私がこの世界に慣れるまで。ということで易波君に同行許可を貰いました。




 同行許可を得てから、私は色んな事を易波君から教えてもらった。

 この世界が最近流行っているライトノベル?っていう本に似ている事。

 それに当てはめると、私達は死んでしまい、この世界に転生?したらしい。

 要するには、中世ヨーロッパのような別世界に放り投げられたと。


 易波君は色んな事を知っている。この世界に転生?したツカサ君は、前と違って生き生きとしている。

 何も知らない私を導いてくれる。


 正直言って、易波君が居なかったら私は何も出来ない。

 ある程度の事は元の世界に似ているけど、細かいことが全然違う。というか、それ以前に知らない場所に放り出されて、どう動けばいいのか普通は分からないだろう。

 でも、易波君は全部分かっているかのように動く。冷静だ。


 オドオドして易波君の後を追いかけることしか出来ない私は、惨めな思いでいた。






 易波君の勧めで冒険者と言う何でも屋になった。

 身寄りがない私たちがこの世界で生きていくためには、この方法が一番だと易波君は言った。

 流されるままに冒険者になったけど、正直言って危険な仕事だとも説明してくれる。


 でも、私にはこれしかない。易波君について行かないと、私はきっと死んでしまう。

 それに易波君と一緒にいる事が出来るから………。




 ツカサ君が冒険者登録時に倒れてしまうと言うハプニングが起きた。

 私が易波君をツカサ君呼びに変えたのは、メリーちゃんが呼んでいたから。私も勇気を振り絞って一歩でもツカサ君に近づかないとね!!とそんな場合じゃない!!ツカサ君が倒れたのだ!!


 その時も、対応をメリーちゃんに任せきりで、私はオロオロするだけ。

 ここに来てからと言うもの、対して何も出来ていない。もっとしっかりしないと!




 結局、偶々ギルドにいた不思議なお姉さんがツカサ君の容態を見てくれた。

 倒れた原因は分からなかったらしいけど、この人のお陰でツカサ君の容態は良くなった。感謝しかない。


 でも、ギルド常務の魔法使いでは治らなかったのに、この人が見ると一瞬だったのは何でだろう?

 もしかして物凄く有名で凄い人だったり?と思ったけど、メリーちゃんも分からない人だそうだ。


 何故か謎の人がツカサ君に膝枕をしていると、ツカサ君は意識を取り戻した。

 ツカサ君!!私は反対したんだからね!!

 でも、意識が戻ってくれて良かった~。

 特に後遺症もないみたいだし、私はやっとほっと一安心する事が出来た。


 ツカサ君が意識を取り戻すと、謎の女性はツカサ君と私に目を合わせてから立ち去った。

 見返りも求めないし、何だったんだろうか?



 この時の人について知る事になるのは、かなり先のお話。






 その後、メリーちゃんに簡単なギルドの説明をしてもらった。

 何と無くしか分からなかったけど、ツカサ君が全部知っている風だったし、私はこれから段々と覚えていけばいいはず!!

 行動して覚えていくのは得意な方。


 いざ依頼に!!!!とその前に装備を整える必要があるだとか。

 ギルド直営店の店主さん、フェンティーンさんが言うには、装備を整える前に魔力量を図った方がいいらしい。

 その前にも何か色々と説明を受けたけど、私にはよく分からなかった。

 大丈夫!わかんなかったら、ツカサ君にその都度聞けば良いんだ!!


 魔力量を図るにあたって、またしても変な道具を出される。見た目は水晶玉のようなもの。でも絶対普通の水晶玉じゃない事を私は直感で理解した。


「ど、どうしようか?」

「何が?」

「だ、だって!!また危険な状態になるかも……あl!!」


 私が躊躇していると、ツカサ君は戸惑いなく水晶玉に触れた。

 ツカサ君?さっき倒れたばかりなのに戸惑いとかないの!!?

 私はツカサ君がまた倒れるのを心配するけど、ツカサ君はそんな気鬱は知らないらしい。

 もう少し人の気持ちを理解して欲しいな!


 私がオロオロと見つめていると、水晶玉が光だした。

 また何か!?と私は身構えたけど、メリーちゃんとフェンティーンさんは普通にしていることから、普通の反応なんだと理解できた。

 その後、フェンティーンさんが狼狽え始め、ツカサ君はメリーちゃんに止められた。

 結果から言えば、どうやらツカサ君は魔力量がかなり多いらしい。



 やっぱりツカサ君は凄い。よ~し!私もっ!!と水晶玉に手を置いた。

 と、体から何かを吸われていく感覚が私を襲う。

 え?えっ!?なにこれ?これを水晶玉に込めていけばいいのかな?


 どんどんと謎の感覚を水晶玉にこめていく。込めていくと共に体力が奪われていく様な感じになる。

 本当は早めに辞めた方が良いのだろうけど、私はツカサ君に認めて貰いたかった。なので、疲労感など気にしないで何かを流していく。


「ハァハァ……わ、私も虹色!!」


 頑張ったのが功を奏したのか、ぎりぎりの所で虹色に光る事が出来た。これでツカサ君と並べる!!

 と思ったら、褒めてくれるのはメリーちゃんとフェンティーンさんだけ。むぅ~ツカサ君の為に頑張ったのに、本人が褒めてくれないのは本末転倒!!

 アピールするべく、私はツカサ君にもう一度報告する。聞いてなかったかもしれないしね!!でも、ツカサ君の方が多いから自信がなくなる。


「え、易h……ツカサ君!!私も虹色、だよ?」

「えっ!あ、あぁ。流石じゃない?」

「さ、流石だなんて……え、ツカサ君のほうが……」


 やはり謙遜してくる。もう少し自信を持てばいいのに……。




 その後はツカサ君にアドバイスをもらって――使い安い物を選んだら?というアドバイスだった。

 ツカサ君が先に試した片手剣を持ってみる。


 刃物なんて、包丁を学校の家庭実習と家で少ししか持ったことがないから緊張する。

 が、思ったよりも手にしっくりくる。ツカサ君は重たいって言っていたけど、全然そんなことはない。

 むしろ振り安い。あ、危ないから鞘?は付けたままだけど


 やっぱり、あのしっくりくる感覚が適性と言うやつだったそうだ。

 フェンティーンさんに進められるがままに色んな剣を試してみる。

 普通の剣、大きいサイズの剣、小さい剣、本当の名前はあるらしいが、私にはまだ覚えきれていない。

 その中でも、私には刃の部分、が細長い剣――細剣が一番合っているらしかった。

 一撃離脱を得意として、走るのが得意な私にピッタリな剣だと言う。


 その後も、制服のまま依頼に出る訳にも行かず、軽い胸当てと腰当て手に付ける籠手を買った。

 重装備だと機動力が生かせなくなるので、これくらいが丁度いいらしい。

 下に着る汎用の服も買う。制服の上に防具を着る訳にもいかないしね!

 色々言われるがままに装備を買ってしまい、色々と借金をしてしまったが後で返せばいいんだ!!


 さっそく店の奥を借りて着替えてみる。

 選んでもらったと言え、新しい服が自分に似合っているか気になる。特に好きな相手だと尚更。

 さっそく聞いてみよう!!


「ど、どうかな?フェンティーンさんとメリーちゃんのおすすめを装備してみたけど……」

「……いいんじゃない?」


 可愛いとか似合っているとか、思った様な答えではない。雰囲気もそっけない。

 それでも、否定的な返答よりは嬉しいものだ。私は顔を綻ばせた。



 私が終わると、続いてはツカサ君の番。

 私が接近職を選んだせいなのか、それとも元からそのつもりだったかは分からないけど、ツカサ君は魔法使いになった。

 ホントに直ぐ。フェンティーンさんに渡された本をペラペラと読むと、詠唱?を殆どしないで魔法を発動した。


 す、凄い!!私の剣は元の世界でもやろうと思えば出来る物。

 でも、魔法と言う物はこの世界でしか使えない。

 ほんの数時間前までは出来なかった未知の能力をもう扱えるなんて………。

 しかも、この普通じゃないレベルで扱えるとのこと。

 ただ剣を使えるらしいだけの私とは、やっぱり違う。


「ツカサ君は!!凄いよ!!!」

「……ッ!お、落ち着て柳瀬さん」


 私は思った事をそのままツカサ君に伝える。でも、ツカサ君には自覚がないらしい。

 謙虚なのはいい所だよ!?でもね、少しくらい誇っても良いんじゃないかな?

 だから私は、少しでも自覚してもらいたくて、ツカサ君に向かって嬉しそうに叫ぶ。


「だって、だって!!最高ランクの冒険者になれる才能を持っているんだよ!!?」


 ツカサ君のこととなると、自分のことのように嬉しくなる。

 でも、ツカサ君はそこまで嬉しくなさそうだ。 

 私も頑張って足を引っ張らないようにしないと!!私は改めてそう決意した。


 装備が揃うと、最終チェックや普段着、その他冒険者に必要な物をメリーちゃん教わりながら買った。

 勿論借金だ。仕方ないよね。お金なんて持ってるわけないし。

 ツカサ君は魔法があるから……と借金をする事を拒否した。

 魔法使いは自分の舌さえ確保してあれば、戦闘には役に立つらしいのでそのままでもいいらしい。

 もうちょっと下準備をしても良いんじゃないかな?






 装備が整うと、ツカサ君が選んだ依頼を受けた。

 なんでも、今日の分の宿代を稼がないといけないらしい。


 そっか、元の世界では家がちゃんとあったし、生活費も親が負担してくれていた。

 でもこの世界では全て自分で稼がないといけない。

 ツカサ君が真っ先に冒険者ギルドで冒険者登録をしたのも、全部理由があったんだ………。

 やっぱり、ツカサ君が居てくれて良かった~。



 初めての依頼はスライムと言う、私でも知っているモンスターを倒した時に落ちるスライムジェルと言うアイテムを集めることだった。

 初めてこの世界では危険だと言う町の外。

 町の外はモンスターと言う危険生物で溢れかえっていると言う話を、ツカサ君から聞いて緊張していたけど初めの数分で気鬱に終わった。

 なんでも、他の人には見えない情報が見えると言う。敵の位置から体力値まで。

 私の不安を吹き飛ばすような秘密だった。


 うへへへ~。私とツカサ君だけの秘密かぁ~。これは私を信頼していると受け取っても良いんだよね!!

 私はツカサ君に頼りっぱなしだと言う現実から目を逸らして、ただ好きな人との秘密を共有していることが嬉しかった。




 初めての戦闘は緊張したけど、思ったよりも動けたと記憶している。

 モンスターの中でも最弱。

 それでも人を襲う生き物に対面する事が初めて(ハチなどは例外)で、出会った時は変な汗が流れてしまう。

 ツカサ君が初めに魔法で牽制してくれて、驚いている隙を付いて私が走って近づいて斬る。

 適正というやつなのか、鞘から剣を抜いて握り直した瞬間から、どう動いていいのか直感で分かった。


 更に続いて三体。私に向かって来るが、冷静にツカサ君が指示をくれる。

 一番私に近いスライムに集中。単純な体当たり攻撃を横にヒョイと避ける。

 普通だったらこんな芸当出来ないだろうけど、すれ違いざまに剣を振って真っ二つにした。

 一体どういう原理で動けるよう様になったのだろうか?ツカサ君に聞いたら答えてくれるかな?


 私がスライム一匹倒している間に、ツカサ君は二匹も倒していた。

 まだ初めての戦闘なのに、二匹も相手取る事が出来るなんて……。






「ごめん」

「き、気にしないでツカサ君。私も油断してから、ね」


 戦闘が終わって周囲の安全確認が済むと、ツカサ君が謝ってくる。

 私だって、初めてモンスターとの戦闘を終わらせて油断してた。

 ツカサ君ばかりに役割を押し付けすぎるのはダメ。だからそんな必要ないのに……。


 それでも、ツカサ君は自分のミスを攻めている風に思えた。

 だから私は、ツカサ君に優しく諭す。


「ツカサ君、私は大丈夫だよ」

「…………」

「私が無理を言ってツカサ君に着いて行ったは私の責任。私になにが起こっても、ツカサ君が気に病むことは無いよ」


 噓だ。責任については私にあるけど、本当はツカサ君が私の心配をしてくれて嬉しかった。

 それでもっ!!


「だから、私のことで自分を嫌わないで」


 ツカサ君の手を取りながら、そう伝える。

 私が原因で、ツカサ君が自分を非難するのは間違っている。

 自分で自分を嫌いになることは、とてもいけない事だと思うから……。


 ツカサ君が私のせいで辛い思いをするのは、私の方が辛い。それに私は、


「私は、ツカサ君が一緒に行動することを拒否しなかっただけで、十分だから」


 そう。それだけで十分過ぎる程の対価だ。


 私がそう伝えても、ツカサ君は理由を知りたがった。

 そう、これは私が勝手に思っている気持ち。

 ツカサ君からすれば、どうしてその結論に至ったのか分からないはず。

 私は答えずらかった。こんな時に告白なんてしてもいいの!?と、とにかく何か言わないと……。


「何で?ってそれは、ツカサ君の事が好きだから」


 口が空周る。最後の方は声にすら出てない。

 私はそっぽを向きながら締めた。


「と、とにかく!ツカサ君がさっきの事でき気に病む事は無いからね!!」


 か、顔が絶対に真っ赤だよ~。聞こえてないよね?


「…………分かった。柳瀬さんがそういうなら、そういうことにしておくよ」

「うん!」


 多分、心の中では納得していないんだと分かる。

 それでも、一先ず脇に置いてくれた事に感謝だ。

 私は呟く様に声に出す。あばよくば私の気持ちに気づいてもらいたくて。


「私の心配をしてくれるなら、私はとても嬉しいけどなぁ」

「……何か言った?」

「ううん!?何も言ってないよ? あっ、それよりもこれ見て」


 聞かれていた。気づいてもらいたくて声に出したのに、いざ聞かれると勇気が出ない。

 私は誤魔化す為に、地面に落ちている水色の物体を指さした。



思ったより長くなってしまった。もう数話ホノカ視点でどうぞ。

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