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6話「冒険者登録と……」



 メリーさんの奇行を眺めながらぼんやりとしていること数分後、柳瀬さんがようやく自分の世界から戻ってきた。

 それに察したメリーさんは口に含んでいた物をゆっくりと飲み込んでから、柳瀬さんに微笑む。



「モグモグ、ごっくん。あ、お帰りなさい!」


「へ!?た、ただいま?」



 メリーさんは待つのに疲れたのか、クッキーを食べてお茶していた。

 というのも、俺と柳瀬さん(主に柳瀬さん)がトリップしてしまい、中々戻ってこなかったからである。

 俺は勿論、自分の世界入っているふりをしてメリーさんを観察していましたが何か?



 というか、メリーさん面白すぎる。

 何も反応しない俺達を尻目につまらなそうに奥に下がると、漫画らしきものとお茶の準備をして戻って来るんだぜ。

 寛ぎ始めるメリーさんを見て、表情を顔に出さないのが大変だったぞ。

 この受付嬢、自由過ぎるだろ!?



 と俺がメリーさんの行動を思い出していると、柳瀬さんがメリーさんにコソコソと耳打ちしていた。

 メリーさんの寛ぎっぷりに、仕事中なのでは?と言わんばかりの表情な柳瀬さん。



「受付が物を食べていていいんですか?」


「見つからないかったら、減給はないんですよ!」



 まるでどっかの銀髪宇宙人の様にメリーさんは言った。

 堂々と言い切ったな、メリーさん。

 そんな貴女に悲報です。

 何を隠そう、まったりと寛ろいでいるメリーさんの隣りには、忙しそうに冒険者の対応をしている受付嬢がメリーさんに怒り狂った目を向けているんだよなぁ。

 その時、ベキッ!!と何かが壊れた音がした。

 明日の冥福をお祈り申し上げます。






 本当に色々と合って横道にそれまくったが、(俺と柳瀬さん、メリーさんで半々のせい)俺と柳瀬さんは遂に冒険者登録に入った。

 改めてメリーさんが登録の仕方を説明してくれる。



「先ほども言いましたが、ここの魔石の部分にそっと触れるだけで十分です!では、どちらから行きますか!?」



 ここで判明する。

 指紋認証に似た機械は異世界産とあって、指紋を読み取る部分は魔石と呼ばれる石で出来ているそうだ。

 元の世界に似た現代技術と異世界らしい魔石の融合機械。

 性能は元の世界の指紋認証を超えてるかもしれない。


 メリーさんが俺と柳瀬さんのどちらから冒険者登録をしますか?と聞かれたので、俺は進んで手を上げる。



「じゃあ、俺か――――」


「私から行きます!!」



 俺が先に登録しようとする声を遮って、柳瀬さんが挙手して先を越されてしまった。

 が「別に先でも後でも変わらないか?」と俺は柳瀬さんに先を譲る。

 柳瀬さんは一歩前に出ると、メリーさんの指示に従って魔石部分に軽く触れた。

 すると魔石が光り出した。

 魔石は失明するほどではないけど、眩しいと感じる位の輝きを放っている。



「っわ!?ひ、光った!?」


「大丈夫です!触れた人の情報を読み取っているんです!……でも、こんなに眩しく光りましたっけ?」



 突然魔石が光った事に驚く柳瀬さんを安心させるように言うメリーさん。

 だけど、メリーさんも首を傾げてるみたいだ。



 何かマズイ事が起こるのか?

 もしくはテンプレ発動か?



 俺はメリーさんより落ち着いた態度で傍観していると、眩しかった光も次第に治まっていく。

 完全に治まるとメリーさんが「もう離されても大丈夫ですよ」と案内して、柳瀬さんは指を機械から離した。

 メリーさんは登録用魔道具から出てきた、手のひらサイズのカードの様な物を持って名前を読み上げる。



「えーっと、『ヤナギセホノカ』さんでお間違いないですか?」


「はい。合ってます」



 ぎこちない声で名前を読んだメリーさん。



 まぁ、外国人にとって日本人の名前を読みにくいものだからな。

 これもテンプレ。

 が、メリーさん?

 何故、そんなにも興味深々な目で柳瀬さんに詰め寄る?

 柳瀬さん若干引いてるぞ。



「変な名前ですね。初めて聞きました!」


「そ、そうですか?」



 人の名前を変って。

 それ、思っても言っちゃダメな奴だぞ。

 メリーさんは接客業にとことん向いていない人だな。

 っていうか、名前の表記についてこの世界だとどうなるんだ?

 珍しいってメリーさんは表現してたから……大丈夫だろうか?



 メリーさんの反応に俺は小説でよくある展開を思い浮かべて、少し心配になった。

 気になることは聞いてみよう。

 メリーさんなら得意げに話してくれるだろう。



「名前が少し変わっていると、他の冒険者や権力者と揉め事になりませんか?」



 この世界にとって変で変わった名前である俺と柳瀬さん。

 絶対、物珍しさに絡んでくるテンプレ存在がいるに違いない。

 「家名 名前」と名前を表す俺と柳瀬さん日本人だが、ここは中世ヨーロッパ風の異世界である。

 大体の一般庶民は家名を持っておらず、王族や貴族、一部の金持ちしか家名を持っていないとか、家名を持っていても元の世界で言う外国の様に「名前・(ミドルネーム)・家名」となるとか。

 俺と柳瀬さんの名前が異質なのはよくあるテンプレ障害だ。

 大体は東にある小さな島国特有の名前です。

 と言っておけば良いだろうがな。

 この世界で通じるかどうか分からないけど。



 そう警戒した俺はメリーさんに質問してみたが、メリーさんは「大丈夫です!」と自信ありげに答えた。

 何が大丈夫なのかと、彼女が自信ありげなところを見ると不安になってくるが、それは理由を聞いてからにしよう。



「登録手続きをした発行直後は本名で表れますが、後ほど任意で変更可能です!様々な事情で冒険者登録をされる方もいらっしゃるので!それにわざわざ注目を集める為に可笑しな名前に変更する方もいらっしゃいますし!」


「そうですか」



 良かった。

 名前は任意変更が可能なのか。

 まるで、ゲームのプレイヤー名だな。



 取り敢えず、名前の任意変更が可能な事を知った俺はホッとする。

 メリーさんは『失われた技術道具』を操作して、再び冒険者登録が出来る状態にすると今度は俺の番だ。

 俺は特に構えもせずに、魔石部分に触れる。

 すると、柳瀬さんの時と同様に光る。

 心なしか、柳瀬さんの時よりも更に眩しく光っている気がするのは俺の勘違いだろうか?



「ッ!!?」



 不意に視界が点滅する。

 なんだ?

 柳瀬さんも同じ様になったのか?

 心構えてなかった結果かな?



 俺は特に気にしないでいたが、もう一度立ち眩みの様に視界が霞んだ。



 どうした?

 急に立ち眩みだと?

 この機械が原因か?



 俺は耐え切れずに、機械から手を離してしまう。



「どうしました!!?」


「易波君!!」



 メリーさんがと柳瀬さんの切羽詰まった声が聞こえる。

 次の瞬間、何か身体から抜き取られていく感覚が俺を襲った。



 あァ、頭が痛い。

 手汗も、びっしょりだ。

 何が、起こって、る?



 次々と起こる異常に俺は耐え切れず、意識を手放してしまう。




『さぁ、頑張りなさい』




 最後に、誰かの声が聞こえた気がした。











* * * * * * * * * * * * * 










 

「……確か、今日だったはず」



 トリミア王国の地方都市アルケーミの中心部で営業している高級宿の一角に彼女は居た。

 彼女は『  の  』を思い出し、予定を確認する為に『それ』を取り出す。



 『それ』はこの時代の物が目にしても、どのようにして使うのかさっぱり解らない形をしていた。

 例えるなら、薄い板と表すのが一番『それ』の特徴を捉えているだろう。

 ある世界では言う『ダブレット端末』にそっくりな物だ。



 女性は『それ』を待機状態から起動状態へと操作した。

 操作の方法は板の隅にあるボタンを押せばいい。

 それだけなら簡単だが、ボタンを押しただけでは『それ』は起動状態にならない。

 どういう理屈か、その女性自身が押さなければ電源が入らない特注品である。



 電気や電子回路が欠片もないこの世界では、明らかに『異質』

 そんな物を操作する女性は人間離れしている容姿をしていた。

 流れ落ちる白い髪、染み一つない顔、想像のような顔立ちは神の傑作。

 その様な言葉が似合う彼女はけだるそうな表情で『それ』を操作してる。


 容姿が人間離れしているなら、服装も常人な格好ではない。

 フード付きの白いマント、その下にはこれまた白いケープ。

 マントが透ける様に見えるのは目の錯覚か?それともそういう装備なのだろうか?

 体系は瘦せ型、おしとやかな胸は服の上からは分からない。

 数少ない露出面から見える肌は、一度も日に当たったことがないのではないか?と言うくらい青白い。



 貴族のお嬢様どころか傾国の王女様でも通じるだろう彼女は、迷いのない指どりで『それ』を操作する。



「……ここから半日。もう直ぐ出ないと間に合わない、よね?」



 『それ』で予定を確認をした女性はそう呟くと、部屋に散らばっていた物を指先一つで片付けた。

 魔法具など一切使わず行った片付けを見てる者がいたのなら、その者は彼女を神の使いか何かと勘違いするだろう。コンマ後には本物の死神を見ることとなるとは知らず。


 勿論、彼女はそんな失態など侵さない。

 女性はこの部屋に居た痕跡を残さずに宿を立ち去った。

 宿泊施設の従業員はその部屋に泊まっていた者が泊まっていたことにすら気付かずにその部屋の清掃に入り、彼女が階段ですれ違った他の宿泊客はすれ違った先から彼女の記憶が抜け落ちる。

 文字通り、彼女の痕跡に誰も気づかない。



「……歩くの、めんどいな。……いざとなったら、テレポートを使お」



 彼女はアルケーミの正門を”素通り“すると、更に南へ向かいながら呟いた。



 彼女の目的は冒険者登録可能ギルドがある最南端の町、クレーミア。

 彼女はトボトボと道を歩いて行く。

 己の使命を果たす為に―――――――――。





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