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55話「楽観視のし過ぎ」

「ツカサ君!!」



 柳瀬さんは駆け寄るって来ると、一番に嬉しそうに俺の名前を呼んだ。

 俺は柳瀬さんへお礼を返す。

 柳瀬さんのお陰で楽が出来たのだから当然だ。



「ありがとう柳瀬さん。お陰で回復役に専念できたよ」


「ううん、良かった。ツカサ君のお陰でこれ以上の犠牲者が出なくて済んだよ。それで、作戦はどうなったの?」



 俺は柳瀬さんに作戦を伝えた。

 正直このままでは全滅しか未来がない冒険者たちで、複数人で手下のゴブリンウォーリアやボブゴブリンを足止めしてもらい、ゴブリンウォーリアも楽に倒せる実力のある俺と柳瀬さんがフロアマスターを討伐するというもの。

 群れのボス撃破で統率が乱れた所を全滅させる作戦だった。

 今はゴブリンロードは手を出してこないが、奴も動けば瞬く間に冒険者たちは全滅するだろうから、倒せるはずの俺と柳瀬さんで一気に撃破して終わらせる。

 実に誰でも考えれる単純な作戦だ。


 俺が作戦を伝え終わると、柳瀬さんは不安そうな顔で俺に「勝てるよね」と不安を吐き出して来た。

 俺はそれにすぐには答えれない。



 勝てるはずだ。

 勝てない訳がない。

 だって、ゴブリンウォーリアも楽に倒せる俺と柳瀬さんだ。

 その上位種位の勝てないと、何のためのチート能力か分からなくなるじゃないか。

 怖い?いいや、怖くない。

 緊張している。

 あぁ、している。


 でもそれ以上に、異世界転生のテンプレに立ち会っている事に歓喜しているな。

 普通じゃない事を出来るのは気持ちがいい。

 面倒ごとに巻き込まれるのは嫌いだけど、元の世界では味わえなかった称賛を浴びたいと思う。



 いつもは暗い考えしか思い浮かばない俺だったが、一応命が掛かている状態もあり、思考が真逆だ。

 だからか、いつもは出来ない行動がスッと出来る。

 俺は柳瀬さんに答えた。



「勝てる。じゃないと俺はここに進んで来なかったよ」


「………でも、もし失敗したら」


「失敗はない。俺のイメージは絶対だ。ゴブリンウォーリアも俺と柳瀬さんの敵では無かった。ならその上位種くらい討伐出来ないと俺TUEEEライフはできないからな」


「俺TUEEE?ってか、またツカサ君が意味の分からないモードに入ちゃったよ!!」



 柳瀬さんが少し引いている気もするが、気にしない。

 何故からイベント参加でテンションが可笑しいからだ!!

 俺は柳瀬さんを引き連れて戦闘に入る。

 先ずは一番近くにいるゴブリンウォーリアに向かって『ウィンドカッター』を飛ばす。

 俺のイメージ通りに風の刃は飛んでいき、ゴブリンウォーリアの片腕を切り飛ばした。



「さ、行こうか」


「う、うん!!」



 出来るだけボブゴブリンとゴブリンウォーリアを足止めしてくれている冒険者たちだが、俺と柳瀬さんが居なかったら全滅したかもしれない状況だった。

 今度は足止めが目的と言え、どうしても漏らしが出てしまうのは当たり前のこと。

 ゴブリンウォーリア数体が俺と柳瀬さんに向かってくる。

 俺と柳瀬さんは目線を交わして意思疎通を取った。

 と言っても以心伝心まではいかない。

 けど、戦闘に関しては何となく考えが伝わっていると感じる。


 目線を一瞬だけ交わした後、柳瀬さんがゴブリンウォーリアに突っ込んでいった。

 俺は柳瀬さんに防御障壁をかける。

 柳瀬さんばかりに敵の討伐を任せては居られない。

 俺も突っ込んで行きはしないが、ターゲットカーソルをゴブリンウォーリアに合わせて攻撃魔法を発射させていく。


 熟練度システムなんてものは存在しないと思うが、使えば使うほど消費魔力が少なくなている気がするので、同じ魔法ばかりでなく色々な魔法を使う。

 火属性、水属性、風属性、土属性と主な攻撃魔法をメインにしている。

 闇属性や光属性なんてものも存在しているが、イメージがしずらいのとポピュラーではないので使わない。

 決して使えないのではない。


 俺と柳瀬さんでだいぶ敵を倒した。

 しかしマップを確認しても、モンスターを示す赤点は数え切れない程表示されている。

 このままではじり貧だ。

 いくら魔力がSランクに匹敵するほど莫大な総量を持っている俺でも、回復出来る時間がなければ直ぐに戦力外になってしまう。

 もしもの時のために用意している魔法薬も、既に二本使いきっていた。

 予備はまだあるが、このままではダメだ。



 やばい、やばい、やばい。

 敵が減らないし、いくらたってもボスの前まで進めないぞ。

 作戦ミスったか?

 冒険者たちを撤退させて、キツイけど俺一人で範囲魔法で蹴散らした方が早かったんじゃないのか?

 あぁ~~!!!

 もうやけくそで高威力の魔法を連射する?

 誤射が怖いけど、これまで外したことのないターゲットカーソルと俺のイメージを信じて賭けにでてみるか?

 作戦を作戦を………。



 いつまで経っても減らない敵。

 このままでいいのか?

 俺が悩んでいると、女神が俺に微笑んだ。

 敵のボスであるゴブリンロードも、俺と柳瀬さんの殲滅力に業を煮やしたのか、前線に出てきてれる。

 チャンスだ!!



「おら!!フロアマスターが出てきたぞ!!」


「二人に道を開けろ!!」


「俺たちは足止めだぁ!!!」



 冒険者たちが作戦通りに俺と柳瀬さん、ゴブリンロードの直線上からボブゴブリンとゴブリンウォーリアの雑魚敵をどけてくれた。

 中には、ゴブリンロードの攻撃を喰らって吹き飛ばされる者もいたが、戦闘を行うことを避けるために回避や防御を取っていたことから、致命傷を受けた者はいなさそうだ。

 俺と柳瀬さんは視線を交わす。

 考えている事、思っている思いは同じだ。



「ツカサ君行くよ!!」


「あぁ、問題ない。最後だから全力で行こう。『ファイヤーボール』!!」



 先制攻撃と俺は手始めに火の玉を飛ばす。

 ただのファイヤーボールではない。

 見た目は全く変わらないが、魔力を倍以上込めて威力を倍増している。

 ゴブリンウォーリアなら消し炭になるレベルだ。


 これで倒せるなら、今までの苦労は一体何だったのか?とさっさと高威力での殲滅作戦にすればよかったと嘆く所だが、奴はそこまで甘くなかった。

 ゴブリンロードは手に右手に持っている体格に見合った巨大な槍でファイヤーボールを突き刺すと、こちらに返してきやがる。

 が、狙いは定かではなかったらしく………。



 違う!!

 あいつは俺と柳瀬さんを狙ったんじゃなくて……っ!!



 俺が気づいた時は遅かった。

 奴は適当に返してきたのでは無いのだ。

 俺か柳瀬さんに返したところで防がれるのを理解して、後ろで戦っている冒険者たちに向かって投げつけたらしい。

 ぱっと振り返った時には、冒険者の数名が俺の魔法で焼け消えていた。

 一部の冒険者は魔法使いの援護によって威力を抑えたり、被弾させなかったりと難を逃れているが、けが人が多い。


 人を殺してしまった。

 直接的な手は下していないものの、俺がその要因を作ってしまった。

 冷や汗が流れる。

 心臓がキュッとつかまれた感覚が俺を襲う。

 人の直接的な死を目撃したことにより、身体が拒絶反応を引き起こしている。

 だけど、



 最悪だ。

 俺の無駄に高威力な魔法を攻撃に使われたぞ。

 ボスと対峙しながら雑魚敵処理もするのが面倒だったから、冒険者に雑魚敵の足止めをしてもらっただけの作戦が逆に使われたのか。

 俺と柳瀬さんを直接仕留めるよりも、部下を足止めする冒険者を殺して解放してから質量で押すつもりかよ。

 ……今までとは全くレベルが違うと認識を改めてないとな。

 今度は速度も上げて、弾幕を張って勝負だ。



 頭は冷静だった。

 俺が直接的に殺していないのが原因か、はたまた少ししか話していない様な赤の他人だったからか。

 正確な理由は分からないが、他人と感情のズレがあったからではないか?と考える。






 俺は昔から他の人と捉える感情が違った。

 他の人と一緒になって遊ぶのが嫌いで、学校でも「外で遊ぶ日」なんて日は地獄だった。

 ただ、それだけなら嫌いなだけの子供だ。

 だけど、俺は少し違った。

 嫌いというのもあるが、その行動に意味を見言い出せないのだ。

 一桁代の頃は自分も純粋で、何も思わず楽しく遊んでいたはずだ。

 いつのころか、大勢で遊ぶのが嫌になり、段々と何故遊ぶのか?と考えるようになった。

 遊ぶからには楽しい方がいい。

 じゃあ、楽しいってなんだ?

 その頃から俺は普通の人が楽しいと感じる事が楽しいと感じれなくなった。

 小学校の頃はまだその程度だ。


 中学になってから余計にそのズレが大きくなっていく。

 例えばテスト。

 「小学校の頃は勉強をしないといけない!!」と、当たり前の価値観で何の疑問も生じずに勉強していたが、中学になると環境が変わったせいもあり「なぜ勉強しないといけないのか?」と思うようになる。

 他人がテストでいい点数が取れないと嘆いている。

 俺はテストでどんな点数を取ろうと感じない。

 その点数は嘆いている人よりも低かった。

 

 小学校の頃は楽しいことが共感出来なくなっていたが、中学校になると当たり前のことでも共感出来なくなっていた。

 体育祭、文化祭は憂鬱でしかなかった。

 ただ時間を浪費するだけ。

 家でも何をして過ごしているのか思い出せない。

 多分、小学校高学年から読み始めていた本読んでいたんだと思う。


 受験がやってきた。

 この頃になっても相変わらずだ。

 勉強には力が入らない。

 周りは焦っているのに自分は焦っていない。

 高校も先生や親が進める所に進むことにした。

 普段の生活はまったく何も思わないのに対して、読書をしている時だけが生きている心地がした。


 誰かが描いたものだから美しい。

 紙の上書いてある活字の世界は、俺に色んな感情を思い出させてくれた。

 現実では面白いと思わないことも、本を読んで体験すると面白い。

 現実で体験出来ないことも、本の世界なら体験させてくれる。

 時間が経つにつれて益々拍車が掛かり、俺は高校でラノベに出会った。

 それからは前も述べた通り二次元主上主義のオタクが完成だ。


 ハッキリと境界線のある絵だからいい。

 現実に起こらないからいい。

 こんな世界はダメだ。

 異世界なら俺でも希望を持てる。

 そうだ!!努力が必要なこの世界じゃなくてイメージで決まる魔法が使える異世界なら!!


 何時しかそんな希望願望を持つようになった。

 そして現在。

 異世界に転生して何かが変わると思っていたけど、やはり何も変わらなかった。

 人の死を余り感じられず、何処か遠い場所から見ている様な感覚に陥る。

 まるでゲームの様に別世界からこの体を遠隔操作している様な感覚。

 ゲームの別世界だから人が死んでも、死に方がどんなにグロテスクでも何も感じない。




 ふりをする。






 自分の魔法で他の冒険者が死んだことで作戦を練り直していたせいで、俺は柳瀬さんの変化に気がつかなかった。

 柳瀬さんは、俺と柳瀬さんを威嚇しているゴブリンロードに向かってダッシュする。

 この世界に召喚されてから見る初めての本気だ。

 俺の動体視力では捉えることが出来ない。



「よくも!!!!はぁああああぁぁぁぁぁ!!!」


「ぐるぅろぉ!!!」



 柳瀬さんは一人でゴブリンロードに突っこんでいく。

 柳瀬さんは俺の魔法を使って他の冒険者を殺したゴブリンロードに相当怒っているみたいだ。

 とっさの事で俺は援護に身体が動かない。


 柳瀬さんは一瞬でゴブリンロードの股下に移動すると、足の筋を切った。

 筋を切られて態勢を崩したゴブリンロードに向かって、柳瀬さんは後ろから首筋を狙う。



「こ~のぉっ!!」


「柳瀬さん危ないっ!!」


「ツカサ君?きゃっ!!」



 足の筋を切って態勢を崩した事なのか。

 それとも怒りで冷静さを失っていたからか。

 どちらにせよ注意を怠った柳瀬さんは、俺の注意を呼び掛ける声が届いても虚しくゴブリンロードに捕まってしまう。



 柳瀬さんは体育会系女子。

 一時的で数分前からの、と言っても仲間である人たちが死んで相当我を失っていたみたいだな。

 俺の掛け声で元に戻ってくれたものの、ゴブリンロードに捕まってしまったな。

 圧倒的な握力で握り潰されるなんて、某巨人マンガのような展開にはならないみたいだけど、苦しそうなのは確かだ。

 俺はのんびりとしてないでサッサと動けき出さなければいけないぞ。



 自分に活を入れて動く。

 俺のせいで減った冒険者の穴を埋めるべく、ゴブリンロードを常に視界内に入れながら魔法を連射する。

 ターゲットカーソルにボブゴブリンとゴブリンウォーリアを入れた片っ端から魔法を発動。

 とにかく弾幕を張る。

 士気が下がっていた冒険者たちも、俺が少し動いて雑魚敵を減らすと士気を上げてくれた。



 これで当分はゴブリンロードに集中出来る。

 そろそろ柳瀬さんも助けてあげないと、色々とマズそうだ。

 さてと、反撃と行きますか。


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